窪田正孝の指揮姿を何度でも観たい! 過去朝ドラ要素も注目の『エール』タイトルバック

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2020年03月31日 06:11  リアルサウンド

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リアルサウンド

『エール』写真提供=NHK

 NHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)のタイトルバックは、いつだって生活の始まりに爽やかな風を吹かせてくれる。


参考:『エール』が革新的な朝ドラとなる3つの要素 『いだてん』のアナザーストーリーの一面も


 3月30日にスタートした朝ドラ『エール』(NHK総合)第1回のラストを飾ったタイトルバックを観て、そんなことを思った。朝ドラ初の全編アニメーションとなった『なつぞら』、クレイアニメーションの手法で制作された『スカーレット』に次ぐ、『エール』のタイトルバックからは、主人公の裕一(窪田正孝)とヒロインの音(二階堂ふみ)がこれから夫婦として、時に困難にぶつかりながらも音楽を奏で、愛を育んでいくのだと想像を膨らませる。


 少し頼りなく緊張しいな裕一を、妻の音が力強く引っ張っていく、そんな“おしどり夫婦って感じとは違う”2人の夫婦の形が第1回で垣間見えた直後だからこそ、今回のタイトルバックは私たちにスッと溶け込んでいったのだろう。


 主題歌のGReeeeN「星影のエール」に、より彩りを与えるような温かさと爽やかさを感じさせるタイトルバックからは、『半分、青い。』『まんぷく』といった近年の朝ドラのタイトルバックをも連想させる。煌びやかな色彩を基調とした明るい雰囲気、五線譜や音符マークが散りばめられたその映像には『半分、青い。』と通ずるものを、緑豊かな山の中で目をつぶり佇む裕一と音、さらに音が裕一の手を取り海辺を元気よく走る姿からは『まんぷく』を思い起こさせた。


 今回のタイトルバックは高野善政が制作を、演出は野口雄大が担当。『エール』公式サイトには、タイトルバックに関する特集記事が公開されており、ほかにも『スカーレット』『なつぞら』からのサンプリング要素も含まれているという。


 さらにもう一点、爽やかな雰囲気とともに感じたのが、これからの『エール』の物語を期待させるカットが随所にインサートされていることだ。オンエアを前に筆者は裕一のモデル・古関裕而が生まれ育った福島県福島市を訪れ、彼のルーツを探っていたため、全てのカットとは言わないが印象的な風景が何を指しているのかが理解できた。


 特に印象的だったのは、裕一がタクトを持って指揮をする姿。音楽堂でオールバック姿の凛々しい裕一から、作曲する際に使っていた書斎、音と初めて出会う教会、自然豊かな福島の緑、そして音の育った愛知県豊橋の海へと繋がっていく。さらに、指揮棒を持つ古関と並び有名なのが、ハモンド・オルガンを弾く姿。


 オルガンとの出会いによってさらに音楽にのめり込んでいく裕一が後に描かれていくこととなるが、90秒という限られた時間の中で、オルガンを弾く裕一に音が寄り添う様子をたっぷり見せることによって、そのアイテムの重要性を印象付けるのに成功している。幼少期を中心とした裕一と音のモンタージュ、「がんばれ!」「ありがとう」の文字も言うまでもなく、これからの2人の物語をイメージさせていくカットだ。


 オルガンと一緒に描かれるメトロノームも印象的であるが、特筆しておきたいのがタイトルバックのラストを飾る教会の鐘。『エール』第1回では、まもなく始まる東京オリンピック開会式を前に緊張してたじろぐ裕一を必死に励ます音の姿があった。そこに現れるのが、長崎出身だという警備員(萩原聖人)。空襲によって親や兄弟、親戚を亡くした彼は、「生きる希望ば与えてくれたとは、先生の『長崎の鐘』です」と伝え、その言葉が裕一を開会式という晴れ舞台へと後押しする。


 長崎を舞台に、医師で執筆家である永井隆とされる人物と裕一の出会いが描かれるのはずっと先のことだと思うが、タイトルバックにて大きく左右に揺れて鳴り響く鐘の音は、永井への思い、そして共に歩んでいく裕一と音の未来を祝福しているかのように思える。


 上述したタイトルバックのポイントは、ほんの一部であり、驚くほどに細かなこだわりが特集記事では解説されている。改めて感じるのが、これから半年間をかけて、このタイトルバックがより深みを持って愛されていくであろうということ。『エール』のストーリーに寄り添うタイトルバックは、何度観ても飽きさせない一つの作品として、いつまでも私たちを楽しませてくれるに違いない。(渡辺彰浩)


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