「これが信長?」から一転、賞賛の声続出 染谷将太が『麒麟がくる』で見せた“演技力の高さ”

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2020年04月05日 06:11  リアルサウンド

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染谷将太『麒麟がくる』(写真提供=NHK)

 現在放送中のNHKの大河ドラマ『麒麟がくる』で織田信長役を演じている俳優・染谷将太。キャストが発表されたとき、染谷が織田信長役を演じることに「これまでの信長のイメージと違う」と感じた人は多かったのではないだろうか。一方で、過去のイメージを大きく覆す新たな信長像を提示してくれるのでは……と期待する声も多数聞かれた。蓋をあけてみれば、染谷の演技に感嘆する人が続出し、改めて“演技力の高さ”がクローズアップされた。


【写真】織田信長のポスタービジュアル


 いわゆる織田信長のパブリックイメージというのはどういったものなのだろうか。まずは2000年以降、大河ドラマで織田信長を演じた俳優を列記したい。『おんな城主直虎』(2017年)=市川海老蔵、『真田丸』(2016年)=吉田鋼太郎、『軍師官兵衛』(2014年)=江口洋介、『江 〜姫たちの戦国〜』(2011年)=豊川悦司、『天地人』(2009年)=吉川晃司、『風林火山』(2007年)=佐久間二郎、『功名が辻』(2006年)=舘ひろし、『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』(2002年)=反町隆史。


 それぞれ、描かれた年齢やスポットの当たり方で、信長像も変わってくるが、演じた人物を見ていると、体格が良く男性的という印象が強い。織田信長というのは、やはり“強く男臭い”というのが大方のイメージだ。だからこそ、染谷信長にはピンと来なかった人も多かったのだろう。


 染谷は現在27歳。『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』で反町が当時29歳で信長を演じていたが、それと比較しても“力強さ”や“男臭さ”はあまり感じられず、最初の登場シーンとなった第7回「帰蝶の願い」では、あどけなさが残る青年が、朝焼けを背景に海から帰ってくるシーンで「これが信長?」という印象だった。


 この時点で多くの視聴者は「今回の信長像はこれまでと違う」という印象を強く植え付けられただろう。それを良しとするかどうかは、人それぞれだが、作り手の意図が大いに感じられ、今後の染谷の芝居への期待に胸が膨らんだ。


 続く第9回「信長の失敗」では、序盤に帰蝶(川口春奈)と対面するシーンが描かれ「村の者と同じ心を持つこと」の大切さを説き、人懐っこさと純朴さを見せたが、その後の父・信秀(高橋克典)、母・土田御前(檀れい)の前で、父に喜んでもらいたいという一心で、今川義元(片岡愛之助)側についた竹千代(のちの徳川家康)の父・松平広忠(浅利陽介)の首を差し出すも、信秀からは「愚か者」と叱責。下唇を震わせながら、無念さと怒りの感情を露わにし、いままで柔らかい印象が強かった信長の内面にある激しい感情との二面性を表現した。


 さらに第10回「ひとりぼっちの若君」では、長谷川博己演じる主人公・明智十兵衛(光秀)と対面。鉄砲を通して十兵衛の能力を瞬時に見極めようとする鋭い観察眼、信長と母との関係性を語るなかで見せる、自分を認めない人間への寂しさや、そこに起因する激しい怒りなど、十兵衛との短い対峙シーンだけでさまざまな感情を表現した。ある意味で、これまでの俳優のようなビジュアル的な男臭さを使わず、信長の持つ「魔王」「革命児」という個性を示した。染谷の“演技力の高さ”を改めて認識させられる場面だった。


 第10回の放送が終了すると、SNS上でも染谷が表現した信長に対して賞賛のコメントが溢れた。特に過去の信長を演じた俳優と比べ、染谷のビジュアルが“おだやか”から入っていたため、母親からの愛情の欠落による狂気さや冷徹さといった、落差に魅了されている人が多かった。


 もともと染谷と言えば“これ誰ができるの?”という難役を演じる機会が多いが、物語が終わるころには、しっかりと手の内に入れ「適役だったな」と思わせるほどの芝居を見せる。


 過去には、映画『3月のライオン』で、ふくよかな体型の棋士・二海堂晴信を演じているが、毎回2時間以上の特殊造形を施し、ぽっちゃり体型になった。正直、二海堂の体型に似た俳優を使うというのが一番のセオリーのように感じるが、メガホンを取った大友啓史監督はインタビュー時に「普通一人だけ特殊造形でキャラクターを作ったら浮いてしまうかなと思ったのですが、うまくはまった」(参考:https://trendnews.yahoo.co.jp/archives/492674/)と染谷だからこそ演じられたことを強調していたと染谷だからこそ演じられたことを強調していた。


 さらに、NHKの連続テレビ小説『なつぞら』では、広瀬すず演じる主人公・なつの後輩はアニメーター「神っち」こと神地航也に扮した。番組公式には言及されていないが、神地のモデルとなったのは宮崎駿だと言われている。ある意味で難易度の高いキャラクターだが、飄々とした佇まいながらも、圧倒的な実力で東洋動画の風雲児として、宮崎を想像させるような面影を見せた。


 その他、実写版『聖☆おにいさん』シリーズのブッダも、やや“無理め”なキャラクターながら、しっかり手の内に入れて、視聴者から賞賛を浴びた。


 先日キャストが発表された4月10日スタートのテレビ東京系ドラマ24『浦安鉄筋家族』(テレビ東京)では、岸井ゆきの扮する桜の彼氏で服が脱げやすい天然変態の花丸木を演じる。どんな仕上がりになっているのかはオンエアを観ないと分からないが、原作コミックの花丸木は、相当強烈なキャラクターで、そのまま実写化すると、放送コードに引っ掛かってしまわないか……というドキドキ感もある。こちらも染谷なら、きっと満足させられる花丸木になるのでは……といまから期待が高まる。


 金曜日の夜に花丸木を演じ、日曜日の夜には信長……。4月からの週末が非常に楽しみだ。


(磯部正和)


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  • この信長惹かれますね。ドラマ楽しみです。
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