志村けんさん、幻となった映画『キネマの神様』で「主演男優賞確実」と言われたワケ……映画評論家語る

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2020年04月10日 13:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

 日本の芸能界史上、最大級の衝撃を与えたと言える志村けんさんの急逝。50年近く芸能界の第一線を走り続け、今もゴールデンタイムに人気番組を持つ大御所芸人の新型コロナウイルス肺炎による突然の死に、ネット上では幅広い世代から悲しみの声があふれた。

 今年、志村はNHK連続テレビ小説『エール』を皮切りに、これまでほとんど行ってこなかった俳優業にも挑戦することになっていた。なかでも、12月に公開予定の映画『キネマの神様』は初めての主演作となるだけに、関係者によると「新たな挑戦に向けて万全を期していた」という。

 『キネマの神様』は原田マハ氏の同名小説を原作に、映画『男はつらいよ』シリーズなどで知られる巨匠・山田洋次監督がメガホンをとる松竹映画100周年記念作品。志村が演じる予定だったのは、ギャンブル好きで家族にも見放されたダメおやじのゴウ。撮影所で働いていた若き日のゴウを菅田将暉が演じ、過去と現在が交錯するという物語だ。志村の妻役に宮本信子、若き日のマドンナに永野芽郁が発表されていた。

「志村さんは衣装合わせも済ませて、4月から始まる撮影を心待ちにしていました」(映画関係者)

 これまでドラマにもほとんど出演したことがない志村が松竹の記念作に主演するとあって、その演技力について、一部に不安視する声もあったというが、映画評論家のモルモット吉田氏は、「志村さんの演技は絶品」と語る。

「志村さんは20年前、高倉健さんから直接頼まれて、映画『鉄道員(ぽっぽや)』に、酔っぱらい役で1シーン出演。その演技は、ほかの俳優たちとも違和感なくなじんでいました。長年コントで鍛えた演技力が『キネマの神様』でも発揮されたと思います」(同)

 一方で、これまで拒んできた俳優業に、70歳になって挑もうとした心境の変化について、テレビ関係者は次のように説明する。

「自他ともに認める“マンネリ”をひたすら続けてきた志村さんですが、舞台の『志村魂』では、いつものバカ殿様に加えて、松竹新喜劇で藤山寛美さんが演じた舞台をリメークしていました。NHKのコント番組『となりのシムラ』でも、ドラマの中に笑いを取り入れるといった内容で、これまでの“歩み”とは違う喜劇への志向がここ数年強くなっていたのです。年齢的に体が動きにくくなる中で、70〜80代の活動を見据えていたのでしょう」(テレビ関係者)

 満を持しての主演映画が完成していれば「主演男優賞の可能性もあった」と語るのは、前出の吉田氏。

「山田監督は、ハナ肇さん、渥美清さんなど、バラエティ番組でおなじみだった芸人たちを生かすのがうまい監督ですから、これまでにない志村さんの味わい深い一面を引き出していたと思います。同年代の俳優に比べても突出した存在感を持っているので、来年の映画賞で、主演男優賞を総ナメにしていても不思議ではありませんでした」

 現在、『キネマの神様』の撮影は新型コロナウイルス感染拡大を防止するために一時中断しており、志村の代役は「調整中」(映画関係者)だという。

「おそらく、志村さんと縁があって年齢も近く、山田作品に出演経験がある俳優を代役に選ぶのではないかと思います。その基準で予想すると沢田研二さん、柄本明さんが有力ではないでしょうか。それから、加藤茶さん。若い頃の加藤さんは、菅田将暉さんに似ているので、同じ役の過去と現在を二人で演じればピッタリです」(吉田氏)

 志村の死去を受けて、「彼の早死が口惜しく、残念で残念で仕方ありません」とコメントした山田監督のもと、志村の遺志を受け継いだ新キャストで映画が完成することを祈りたい。

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