福岡名物「屋台」が存続危機…コロナで休業も、法的に「テイクアウト」不可

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2020年04月28日 10:22  弁護士ドットコム

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福岡県福岡市の名物「屋台」が、新型コロナウイルスの感染リスクを避けて、営業を自粛している。


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一般的な飲食店は「テイクアウト」に舵を切ったが、屋台にはできない事情があるという。福岡市の屋台組合もテイクアウト解禁を嘆願したものの、市側から許可が出されることはなかった。その理由を福岡市に聞いた。



●天神エリアの屋台がCF開始

福岡市天神エリアの屋台の大将らが、インターネット上で活動資金を集めるクラウドファンディング(CF)「SAVE THE YATAI」を実施している。緊急事態宣言によって営業自粛を決めた屋台のコロナ終息後までの運転資金に充てられる。



4月17日からスタートして、支援総額はすでに目標金額500万円を超えて521万5700円(4月28日現在)にまで達した。5月29日まで支援を受け付けている。



「福岡市移動飲食業組合」に加盟する福岡市天神の屋台約40軒は4月7日から5月6日までの一斉休業を決めた。すでに新型コロナを理由として廃業した屋台も1軒出てしまったという。



CF発起人の一人であり、組合の役員も務める屋台「喜柳」の迎敬之さんはこう語る。



「戦後70年の歴史ある天神の屋台の灯をなくしたくない。そんな思いでCFを始めました」





飲食店には午前5時〜午後8時までの時間短縮営業が要請された。しかし、定められた時間帯で営業することは「無理」だったという。



「屋台の営業は搬入搬出含めて夕方5時〜朝4時と決まっています。早くても営業開始は午後6時から。オープンして1時間もたたないうちにお酒が出せなくなって、店じまい。営業は無理です」



●テイクアウトに活路を見出せないのか

CFのページの中には、こんな記載がある。



「営業時間外は歩道上から屋台を完全撤収しなければならない為、時間を前倒しにしランチ営業することや、屋台は市の条例によりテイクアウトが禁止の為、営業すること自体が困難です」



新型コロナの影響によって多くの飲食店がテイクアウト販売を始めた。屋台もテイクアウトに切り替えできないのはなぜか。



●福岡市の考え

道路上の屋台について管轄する福岡市の路政課に聞いた。



「福岡市屋台基本条例施行規則」では、「屋台の規格外で利用者に対して飲食を提供すること」を禁止している(施行規則7条第4号ア)。



「屋台の規格」とは、間口3メートル以内、奥行2.5メートル以内だ(7条第1号)。「その広さの店の中で、対面で営業するものを屋台として想定しています」(路政課)



つまり、屋台でテイクアウトを始めると、「規格外での飲食の提供」になってしまうのだ。



ただ、厳密には客が提供された食品を勝手に持ち帰ることは「規制できない」という。



午後5時〜午前4時という営業時間をズラすことができない理由も聞いてみた。



「道路占用は交通障害にならないという条件のもとで許可されていることから夜間なのです。昼間は往来の邪魔になるということで許可されません」



●市の食品安全推進課の回答

「固定店舗ではない、福岡市の屋台は食品衛生法上の規定に基づく飲食店ではないため、通常であれば営業許可を出せず、福岡県食品衛生法施行条例で規定しています」



食品安全推進課の認識としては「屋台とは、その場でお客さんが飲食する場所」。先の路政課の認識とも合致する。



屋台がテイクアウトするためには「一般の固定飲食店としての施設をととのえていただきたい」(食品安全推進課)。つまり、屋台が屋台をやめる必要があるということだ。



なお、福岡市では2016年から公募屋台を開始した。



「それまで一代限りの営業としてきた屋台に、テイクアウトの発想はなかった。屋台はビールを頼んで、メニューを注文して最後にラーメンを食べるというのが一般的です。



公募して初めて、テイクアウトはできるのかという問い合わせがあって、こういう新しい考えがあるのかと思った次第です」



●屋台の補償

組合は屋台の補償について市側と話し合いを進めている。屋台の主に3つの固定費について、補償に向かってまとまりかけているという。



まず、屋台の「家賃」と言えるのが道路占用許可だ。給水装置や汚水マスなどの設置によって値段が増減し、1カ月につき2万1600円〜2万4800円となる。屋台の駐車場代や、料理の仕込みのための「仕込み部屋」の家賃もかかる。



「それぞれ1カ月分、8割、8割」(迎さん)の補償という着地点で話し合いがまとまりそうだという。



この話し合いの中で、組合側からテイクアウト許可についてかけあったが、市から許可が下りなかったという。



休業は5月6日を予定しているが、今後の情勢次第で延長される可能性もある。CFに協力するリターンとして、屋台のドリンクと人気メニューと交換できる「屋台きっぷ」(有効期限なし)など11コースが用意されている。



【SAVE THE YATAI】



「お客さんからは『今でも営業しているの?』と連絡がきます。店を開けたいけど、屋台から感染者を出したくないんです。今は何もできませんが、ぜひご協力をお願いします」(迎さん)


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