壇蜜、「若い子好きの夫」に不安を抱く妻に助言も……「悩み相談の名手らしからぬ」と感じたワケ

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2020年05月08日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「もうおばさんなの」壇蜜
ウェブサイト「OTEKOMACHI(大手小町)」4月29日

 新聞や雑誌には、よく人生相談のコーナーがあり、心理学や法律の専門家、そして有名人などが回答をしている。相談に対して、思ったことを言えばいいラクな仕事と言う人もいるかもしれないが、けっこう難しいのではないだろうか。

 ウェブサイト「ニッポン放送NEWS ONLINE」で連載中の作家・瀬戸内寂聴のコラム「今日を生きるための言葉」によると、「みんな話し相手が欲しいのです。悩み事は外に吐き出すだけでも楽になります。だから、話し相手や聞き役になってあげるだけでも、価値ある布施になるのです」と書いている。この文章からは、悩みには直接的な答えよりも、相手の話をよく聞く姿勢を見せることのほうが大事ということが感じられる。

 しかし、友人など親しい間柄の場合はこれでいいと思うが、タレントが仕事として人生相談を請け負った場合、

1.よく知らない人に対して、
2.傷ついた相手の気持ちを損ねることなく、
3.タレントとしての自分のカラーを出しながら、
4.仕事を発注した人々を満足させ、
5.お悩みとは無関係の読者も満足させる回答をする

という、5つのハードルをクリアしなければいけないだろう。そのためには、読んで書く能力に加え、タレントとしての知名度やキャラも確立されている必要なのではないか。

 こう考えると、壇蜜にお悩み相談のオファーが舞い込むのも納得がいく。29歳という年齢で遅いグラビアデビューを果たした壇蜜だが、『サンデー・ジャポン』(TBS系)では、そのコメントぶりが「誰も責めないとして評価されている印象。最近は文筆家としての活動も始めた。知名度もあるし、ホステス経験もあるので、壇蜜に男女の機微を語らせたいと思っている人は多いのではないか。しかし、「上手の手から水が漏れる」という諺のとおり、そんな壇蜜でも失敗する時があるのだと思うことがあった。

 読売新聞が運営する女性向けウェブサイト「OTEKOMACHI(大手小町)」。壇蜜はここで、お悩みアドバイザーを務めている。「若い女性が好きで飲みに誘う夫 どうしたら信じられる?」というお悩みが寄せられた。

 相談者の女性は、30歳前後の一児の母。26歳の時に14歳年上の男性と社内結婚をしたが、当時から夫は社内で「若い子好き」とうわさされていた。けれど、若い子なら誰彼かまわずということはなく、後輩に慕われてもいるそうだ。現在、結婚から3年、夫は家庭を大事にしてくれているが、こっそり社内の若い女性と連絡を取っているという。浮気の証拠はないものの、相談者は不安になってしまうのだそうだ。

 壇蜜の回答は、いくら若い子が好きでも「ついていけない」と夫も思う日が来るので、少し様子を見てみることを提案。

 「『もうおばさんなの。ふふ。でも一番大事な人にはかわいいって言ってほしいわね』と、自分は若くない、でも土俵が違うことをアピールして、ゆっくり旦那さんに微笑んでみましょう」「おばさんという隠れ蓑を使って、一線をひいた余裕の姿勢はきっと今のヤキモキを変えてくれるでしょう」と助言し、「『あなたも(若い子が)好きねぇ。そんなにいいのか私も試してみようかしら』とヒヤリとさせる一言も忘れずに」としめくくっている。

 「Yahoo!ニュース」に記事が転載されると、辛口なコメントが並ぶと言われる“ヤフコメ”で、この回答はネットユーザーから「さすが壇蜜」「知的」「こういう女性と結婚できた夫は幸せ」と歓迎されていた(余談だが、私が書いた記事に対するヤフコメ民のみなさんのコメントは、「ババア」とか「ションベンライター」といった類いのものばかりだ)。これらの称賛する書き込みを見るに、おそらく男性のものと思われるが、夫の携帯を見るとか、「どういうことか」と問い詰めるというような実力行使に出ない、ソフトな牽制が、男性のツボを刺激したのだろう。

 人生相談は読者が「うまい!」と思うことが大事であって、実際の解決方法を提案する必要はない。ヤフコメを見る限り、壇蜜の回答が支持されているわけだから「いい仕事をした」と見ていいのだろう。

 しかし、壇蜜の持ち味である「誰も責めない」という原則が、今回の相談では珍しく破られているのにお気づきだろうか。幼子を抱えた30歳前後の女性が、「40代の夫が若い子にちょっかいを出していること」に不安を持っている。「妻子持ちが何やってるんだ」と夫を責めず、30歳そこそこの女性に、若い子と対極の存在を意味する「おばさん」を自称させようとしている。つまり壇蜜は、相談者の女性を直接的に責めてはいないものの、「自分自身を貶めさせる」ことを推奨するのは、間接的に責めているように感じるのだ。妻が「おばさん」を自称する真意に気づかずに「本人が言ってるんだから、おばさんとして扱っていいんだ」と、夫が素直に信じてしまう可能性もなくはないだろう。やはり自分で自分を貶めるようなことは言わないほうがいいのではないか。

 壇蜜のメインの支持層が男性だから、その層を傷つけない、だから相談者の夫も悪く言わないと言うのは、タレントとして賢明な判断だとも思う。しかし、それは女性側を傷つけていいという意味ではないだろう。「誰も責めない」ことが評価されているように見える壇蜜にしては珍しいミスだと私は思ったが、それでは、どう回答すればいいのかと言うと、これがまた難しい。

 例えば、「若い女性が40歳過ぎた妻子持ちなんて相手にしませんよ!」と言えば、相談者の愛する夫を貶めることになる。一方、昭和の人生相談でよくなされていた、「あなたは妻なのだから、どっしりと構えていなさい」という回答もふさわしくないだろう。これは「妻以外の女性とのセックスは所詮、遊びなのだから」という意味が含まれた回答だが、これだけ芸能人の不倫や離婚が取りざたされる中、相談者も妻という立場に胡坐をかいてもいられないからだ。はたまた「社内の若い子を飲みに頻繁に誘っていると、セクハラって言われるかもよ!」というのも、壇蜜のキャラと合わないからNGなのではないか。

 悩み相談の名手・壇蜜ですら、このお悩みに「誰も傷つけない答え」を導きだせないのは、そもそもこの相談自体にねじれがあるからではないだろうか。

 「浮気しているとしか思えない」証拠を見つけてしまったのなら話は別だが、相談者の夫が若い女性と連絡を取っていることを、「浮気してる」と見るか、「仕事の相談に乗っているんだ、それだけ後輩に慕われているんだ」と思うかは、相談者の感じ方の問題のように思う。不安を感じやすいタイプの人だったり、自分も違う女性から夫を奪い取ったなど「身に覚え」がある人は、ささいな出来事も、悪いほうに考えてしまうだろう。こういう人に「浮気なんてしないと思うよ」と言ったとしても、世の中に100%はないので「なぜ、そんなこと断言できるの?」と不興を買うことも考えられる。なので、この問題の芯は、夫が若い子が好きなことではなく、なぜ相談者がそんなに不安になるのか、なぜ夫を信じられないのかを考えることではないだろうか。

 求められてもいない私の意見はさておき、ジェンダーをめぐる炎上が珍しくない時代、30代そこそこの女性に「おばさん」は適切な表現ではなかったと思う。壇蜜がいきなり男女平等を訴えるキャラになる必要はないが、不用意に女性を貶めないことは、今後の壇蜜にとって一つの課題となるのかもしれない。

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