『鍵のかかった部屋』は“謎解き”“脱出ゲーム”ブームを先取り? 大野智の不思議な魅力ともマッチ

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2020年05月12日 06:01  リアルサウンド

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『鍵のかかった部屋 特別編』(c)フジテレビ

 現在放送が休止されている『SUITS/スーツ2』に代わって8年ぶりに放送されることになった、大野智主演のフジテレビ系「月9」ドラマ『鍵のかかった部屋』。2012年の4月期に放送された本作は、「月9」枠としては珍しい本格ミステリー作品として大きな話題を集めた。ふと考えてみれば、嵐のメンバーが月9で主演を張った作品は意外すぎるほどに少ない。本作の前のクールに放送された『ラッキーセブン』などで松本潤は3回、同じくミステリー作品だった『貴族探偵』など相葉雅紀は2回ほど月9主演を務めているが、大野は本作1回のみで、櫻井翔と二宮和也は一度もないのである。


 それはさておき、90年代後半の角川ホラー文庫ブームを牽引した作家のひとりである貴志祐介の代表的なミステリー作品『防犯探偵・榎本』シリーズを満遍なく映像化した本作(おそらく原作に登場するエピソードのほとんどが連続ドラマとスペシャルドラマで映像化されている)。大手警備会社の社員でセキュリティオタクの主人公・榎本径(大野智)が、弁護士の青砥純子(戸田恵梨香)と芹沢豪(佐藤浩市)とともに不可解な密室事件を次から次へと解決していくという物語であり、“謎解き”や“脱出ゲーム”といった昨今のブームをかなり先取りした作品であったといえよう。


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 今回の再放送は第1話が「特別編」としての名目で放送されただけに、元々の放送時から大幅にカットされていたシーンが随所に見受けられた。その中には、このドラマの導入として必要不可欠な2つのシーンが含まれており、さすがに気にならずにはいられない。ひとつ目は序盤、榎本と青砥が出会う金庫のシーンだ。青砥の不注意で芹沢が銀行の金庫の中に閉じ込められてしまい、警備会社の社員である榎本がすっと現れて突破不可能な鍵をすんなりと開けてしまうというものである。榎本の職業を明確に示すと同時に、表情ひとつ変えずに金庫の構造について饒舌に語る長台詞。浮世離れした榎本のキャラクターを的確に表した一連がまるっと省かれたことで、3人の出会いがかなり突拍子もない印象になってしまっていた。


 そしてもうひとつは、事件現場を見た翌日に榎本に呼び出された青砥と芹沢が警備会社を訪れるシーン。ここは榎本がいる場所がビルの地下の奥にあるひっそりとした備品室だと知る場面であり、このドラマにおける重要な場所の説明が一切なくなってしまったのである。またしても青砥に対して饒舌に“鍵”と“錠”の違いを説明する榎本の様子も実にユニークなのだが、この極めて特殊な空間の設定が榎本の“変わり者具合”をダメ押しするのである。それこそ『ショムニ』(フジテレビ系)であったり、近年では『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』(日本テレビ系)でもそうだが、組織の中で浮いた存在は常に地下の奥深くから活躍する。そういったいかにもドラマらしい下克上的なユニークさをきちんと踏襲しているのだ。


 それでも謎解きの終盤で、葬儀会社社長の不可解な死の密室トリックについて事細かに解説した榎本が、犯人である葬儀会社の専務・池端(風間杜夫)から自分が犯人だという証拠がないと詰め寄られるシーンだけでも充分榎本の特殊さは垣間見える。飄々とした様子で、密室の謎を解くこと以外に興味がないと語り、青砥や芹沢を拍子抜けさせる。こうしたミステリーでありながらも従来のミステリーの鉄板的要素を堂々と打ち消すあたり、どこかアイドルらしからぬ不思議な魅力を携えた大野智というキャラクターに非常にマッチしているではないか。 (文=久保田和馬)


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  • うん、榎本さん解説に大切なシーンだけど、地下金庫はカットされる覚悟はあった。だって初回拡大放送だったのを本来の枠の一時間にするんだもん。ぴえん。
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