今週から主人公の枝分役の竹野内豊と、脚本兼「cafe choice」のマスター役のバカリズムによる“タイムスリップ対談”が本編前に放送されることになった『素敵な選TAXI』(カンテレ・フジテレビ系)。2016年に放送されたスペシャル版以来の再会を果たしたという2人が、裏話などを語っていくとのことで、今回の話題は「枝分」の下の名前について。「用意していなかった」と明かすバカリズムに対し、“枝”が苗字で“分”が名前なのかと笑う竹野内。1分ほどしかない映像だが、いずれ完全版で見たいと思うほど楽しい雰囲気がただよっていた。
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さて、5月19日に放送された第6話のサブタイトルは「おひとよしの選択肢」。漫画雑誌の編集者を務める美空(栗山千明)は、人気漫画「おひとよしトレジャー」の作家・虫海(三宅弘城)が原稿を仕上げるのを待っていたが、少し仕事場から離れた隙に虫海に逃亡されてしまう。編集長から電話で叱責され落ち込んだ美空は、選TAXIに乗り込み、枝分に悩みを打ち明ける。そして「おひとよしトレジャー」の大ファンだという枝分に促され、虫海が逃げる直前へとタイムスリップ。しかし戻った過去で、今度は友人の佑香(臼田あさ美)が自殺未遂を起こしてしまうのである。
選TAXIで過去に戻るという枝分の説明を、(お人好しだから)一切疑うことなくすんなりと受け入れる乗客の登場に、実に4度にわたるタイムスリップ。さらにはどんどんとタイムスリップする乗客が増えていくという展開を、物語のテーマに合わせてコミック調の画面を織り混ぜることでコミカルさに拍車を掛けていく今回のエピソード。しかも前回の第5話の婚活パーティのシーンで登場した、あざとい看護師の知美(浅見れいな)が再登場して物語をかき回すという、基本的に単発エピソードの積み重ねである本ドラマの流れを覆しての広がりの見せ方は、じつにユニークに映る。
そうしたなかで、美空が佑香を説得して虫海のもとに戻ると、すでに逃亡されていたという選択肢Cの後、佑香が自殺を思いとどまっている状態を“キープ”したままでタイムスリップをするという方法論が描かれる。今回の“原稿”といい、第4話の“宝くじ”といい、物質に関しては選TAXIに乗っていてもタイムスリップした時間に存在していた場所に戻るという設定は何度か説明されていたわけだが、人物に関しては選TAXIの中に乗ってさえいれば変わらないというわけだ。近年のSF・ファンタジー作品はどうも“設定”に呑み込まれがちだが、本作ではその複雑な設定を巧く扱うことでタイムトラベルに柔軟さを与え、コミカルさを増すことに成功したといえよう。
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それにしても、今回のゲストキャストである栗山千明。『死国』での本格的な女優デビューや『六番目の小夜子』や『バトル・ロワイアル』をリアルタイムで観てきた世代にとっては、いまでも安定して活躍している姿を見ると安心せずにはいられない。2000年代にはミステリアスな雰囲気を活かした役どころが多かったが、今回のようなコミカルな役柄も不思議なほどハマるのは彼女の最大の強みではないだろうか。同じくゲストとして登場した栗山と同い年の臼田あさ美との対照的なキャラクターとのバランス感も実に見事であった。 (文=久保田和馬)
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