「戦争を阻止しなければ」 キーラ・ナイトレイが語る内部告発者となった女性の勇気

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2020年06月02日 11:30  AERA dot.

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写真Keira Knightley/1985年、イギリス・ロンドン出身。95年に映画デビュー。代表作にジョー・ライト監督「プライドと偏見」(2005年)「つぐない」(07年)「アンナ・カレーニナ」(12年)、モルテン・ティルドゥム監督「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(14年)、ウォッシュ・ウェストモアランド監督「コレット」(18年)など。世界的大ヒットを記録したディズニーの「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ(03年、06年、07年、17年)でジョニー・デップ、オーランド・ブルームと共演した(photo/Nick Wall(c) Official Secrets Holdings, LLC
Keira Knightley/1985年、イギリス・ロンドン出身。95年に映画デビュー。代表作にジョー・ライト監督「プライドと偏見」(2005年)「つぐない」(07年)「アンナ・カレーニナ」(12年)、モルテン・ティルドゥム監督「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(14年)、ウォッシュ・ウェストモアランド監督「コレット」(18年)など。世界的大ヒットを記録したディズニーの「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ(03年、06年、07年、17年)でジョニー・デップ、オーランド・ブルームと共演した(photo/Nick Wall(c) Official Secrets Holdings, LLC
 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【映画「オフィシャル・シークレット」の場面写真はこちら】

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“ホイッスルブロワー”(内部告発者)と聞いて多くの人が連想するのは、おそらくこの言葉が広く知られるきっかけとなった「スノーデン事件」だろう。2013年、米国家安全保障局(NSA)の元職員エドワード・スノーデンが、米国政府による個人情報監視プログラムの存在を暴露したこの事件は、米国のみならず世界中に強烈なインパクトを与えた。

 一方、スノーデン事件の10年前に、英国の極秘機密を暴露した女性がいたことはあまり知られていない。最新作「オフィシャル・シークレット」で件のホイッスルブロワーであるキャサリン・ガンを演じたキーラ・ナイトレイは語る。

「この役を引き受けた最大の理由は、強い興味が湧いたから。同時に、この話を知らなかったことに対する驚きもあった。イラク戦争が起こったとき私は18歳で、政治に強い関心があったし、イラク戦争のニュースも追っていた。にもかかわらず、この話もキャサリン・ガンという人物についても一切知らなかった。だからいまこの話に光を当てたいと感じたの」

 03年、英国の諜報(ちょうほう)機関政府通信本部(GCHQ)で翻訳の仕事をしていたキャサリンは、英米がイラクへの侵攻を強行するために裏工作を企てていることを知る。強い憤りを覚えたキャサリンは、イラク戦争を阻止するために機密情報をマスコミにリーク。しかし告発も虚しく侵攻は開始され、キャサリンは公務秘密法(オフィシャル・シークレット・アクト)違反で起訴されてしまう。

「ここには内部告発者という存在の二面性が見える。真実を伝える者、そして法を犯す者。本当に興味の尽きないテーマ。法を守ることは民主主義の基本だし、法を犯せば罰せられるというのも当然のこと。それでも国民を守るために真実を知らせるべきなのか。この映画は興味深い点に触れるの」

 ナイトレイはキャサリン本人と実際に会ったときの印象をこう語る。

「彼女と話していて感じたのは、彼女自身の中では白黒はっきりしているということだった。イラク戦争は違法だと思っている、何十万人もの命を奪う戦争を阻止しなければならない、と。彼女は自分の人生を破壊しかねないことを承知のうえで危険を冒した。決心は変わらなかった。彼女は自分の考えが間違っていないと信じていた。それこそが勇気というものだと思う」

 それでは、もし自分がキャサリンと同じ立場になったとしたら?

「誰もが彼女のように振る舞うと思いたいでしょう。でも私は自分の生活を守るため、サバイバルするために沈黙を選ぶかもしれない。ほとんどの人はそうすると思う。それが人間の悲しい点で、真実を語った人たちはその後でとても苦労することになるから。子どもには真実を語ることの大切さを教えるのに、現実の社会ではそれが通用しない。現実は複雑だと思う」

◎「オフィシャル・シークレット」
戦争を止めようとした一人の女性の実話。近日公開

■もう1本おすすめDVD「スノーデン」

 高校を中退したエドワード・スノーデンは9.11の後、志願兵として米軍に入隊、イラク戦争に志願した。キャサリン・ガンとスノーデン、2人ともイラク戦争によって人生が劇的に変わった。この接点は実に興味深い。

 ベトナム戦争での実体験をスクリーンに焼き付けた「プラトーン」(1986年)をはじめ、多くの作品を通じて米国政府への批判を展開してきた社会派監督オリバー・ストーン。スノーデン事件を追った2冊のノンフィクションを原作に、彼が監督・脚本を担当したのが本作だ。スノーデンを演じるのはジョセフ・ゴードン=レヴィット。外見が似ている、という理由でストーン監督が指名したという。

 2013年、香港。スノーデンと英ガーディアン紙の記者が、ドキュメンタリー映画作家ローラ・ポイトラスから取材を受けているシーンで幕が開く。そこからスノーデンの04年以後のキャリアと私生活を振り返りつつ、世界を震撼させた暴露がどのようにして行われたのか、その一部始終を描いていく。米国家安全保障局の介入を恐れたストーン監督は、主要なシーンの撮影を米国ではなくヨーロッパやアジアで行った。

◎「スノーデン」
発売元:ショウゲート 販売元:ポニーキャニオン
価格3800円+税/DVD発売中

(ライター・高野裕子)

※AERA 2020年6月1日号

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