「ドクターK」松井裕樹が圧巻の投球も田村龍弘・北條史也の最強コンビに屈す

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2020年06月02日 11:31  webスポルティーバ

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こんな対決あったのか!
高校野球レア勝負@甲子園
第2回 2012年夏
松井裕樹(桐光学園)×田村龍弘、北條史也(光星学院)

 2012年夏の甲子園、準々決勝。試合開始予定の午前9時が近づくと、桐光学園の2年生エース・松井裕樹(現・楽天)は、おもむろに三塁側のベンチ前に現れてキャッチボールを始めた。肩慣らしの意味合いがあったのだろう。だが、ふわりと浮かぶ、明らかに力感のないボールが気になった。前日の試合(3回戦)から中1日も経っていない連投とあり、試合前の囲み取材では「左肩がちょっと重い」と疲労は明らかだった。

 松井は、対戦校の打者が口々に”消える”と称したスライダーを武器に1回戦の今治西戦で10者連続を含む22奪三振、2回戦の常総学院戦でも19奪三振をマーク。3回戦の浦添商戦でも12奪三振を記録するなど、3試合で53個の三振を奪うなど、大会ナンバーワン左腕に君臨していた。

 準々決勝の相手は、3季連続の甲子園決勝を狙う光星学院(現・八戸学院光星)。1回表のマウンドに立った松井はゆっくりと間を取り、静かに投球練習に入った。

「気力で投げた」

 そう語ったように、打者と対峙する松井は疲れをものともせず、本能むき出しの快投を見せる。1番・天久翔斗にレフトフェンス直撃の二塁打を許すも、2番・村瀬大樹は内角をえぐるストレートで見逃しの三振。そして、3番・田村龍弘(現・ロッテ)を迎える。

 徹底したインコース攻めでフルカウントまでもつれた田村との勝負は、最後もまた内へ食い込むスライダーで空振り三振に仕留めた。

 つづく4番・北條史也(現・阪神)に対しては、ストライク先行で投手優位のカウントに持ち込むと、最後は内角高めの142キロのストレートで三振。スピードボールにめっぽう強い北條が珍しく体勢を崩しての空振り三振に、あらためて松井のポテンシャルの高さを再認識させられた。

 初回のピンチを切り抜けた松井は、つづく2回表から5イニングは無安打ピッチング。それどころか毎回奪三振を記録するなど、田村、北條という高校球界屈指の強打者をもってしても、松井攻略は至難の技だった。

 潮目が変わった──そう感じ始めたのは7回表だった。先頭打者の北條は2つのファウルで追い込まれたが、いずれもスライダーを打ってのものだった。これは、それまでかすりもしなかった松井の最大の武器に対応し始めた証だった。

 この時、北條はこの夏、初めてバットを短く持って打席に入った。松井の大きく鋭く曲がるスライダーに対応するためだ。そして北條はやや高めに浮いた124キロのスライダーをコンパクトに振り抜き、レフト前へクリーンヒット。つづく5番打者も安打でつなぎ、無死一、二塁と初回以来となる得点圏にランナーを進めた。結局、この回は無得点に終わってしまうが、「もしかしたら……」と球場の雰囲気は明らかに変わった。

 そして8回表、8番・木村拓弥のセンター前ヒットを皮切りに一死一、三塁と攻め立てた光星学院は、好機で田村が打席に立った。1ストライクからの2球目、「変化球か迷った」という田村だが、インコースを突く140キロのストレートに反応。詰まりながらもレフト前へ運んだ打球は、均衡を破る先制打となった。

 さらに北條もつづく。2ストライクと追い込まれながらもスライダーを読みきり、左中間へ二塁打。ふたりの走者が生還し、試合の行方を決定づける3点目が入った。

 試合は光星学院の金沢湧紀が桐光学園を完封し、3−0で勝利。試合後、田村はこんな言葉を残した。

「今まで見てきた左投手のなかで、松井くんが一番すごかった。もともと左投手は得意なんですけど、松井くんの球は打てる気がしなかった。正直、1打席目に自信をなくしました。でも3打席目(結果はライトフライ)に目が慣れて、最後の4打席目は打つ自信がありました」

 結局、松井はこの試合でも15三振を奪い、4試合連続2ケタ奪三振をマーク。夏の甲子園歴代3位となる1大会68三振を奪った松井だったが、最後は光星学院が誇る最強コンビの前に屈した。

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