小林武史、来夏以降の音楽フェス開催に意欲 「恩返しできることがあったらなんでもやりたい」

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2020年06月17日 12:11  リアルサウンド

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リアルサウンド編集部

 6月16日にラジオ特別番組『いま、音楽にできること』(ニッポン放送)が、放送された。


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 これは4月に放送された特番の第2弾で、一般社団法人日本音楽事業者協会会長・堀義貴氏、一般社団法人日本音楽制作社連盟理事長・野村達矢氏、一般社会法人コンサートプロモーターズ協会会長・中西健夫氏、ゲストとして音楽プロデューサー・小林武史、SHOWROOM株式会社代表取締役社長の前田裕二氏が登場した。


 ぴあ総研のデータでは、新型コロナウイルスの影響でのイベントの中止、延期は今年の2月から来年1月までの1年間で43万2000件、損失は年間市場規模の77%に当たる6900億円、音楽シーンでは3300億円と言われている。


 番組にはライブイベントを裏方で支える知り合いのスタッフが解雇されたというメールが届いた。これに堀氏は「言葉をかけるとしたら手堅い業界は今、どこにもない。ミュージシャンとか役者なんかもUber Eatsのバイトをやってるって人もいっぱいいる。せっかくイベントの業界に行ったんだから、いつかは収まると思うんですね。だから、その間いろんなことを試してみてもう一回戻っておいでよ、というのが僕は正しい選択なんじゃないかなと思います」と声をかけた。


 今月19日以降、営業再開が可能となるライブハウスについて、政府は「出演者と客の間に2メートルのソーシャルディスタンスを確保する」などとするガイドラインを公表している。「成り立たないんですよ。200人のキャパで30人しか入れられない。そういうガイドラインはない方がいいと思うんですよね。やれないガイドラインを作られてもそれに縛られて苦しむのが僕らなんで」と語る中西氏。続けて、「成り立たないなら、そのネクストを考えないと。今のガイドラインをそのまま採用すると現実的にできない」とガイドラインに対する考え方を明かした。


 先日、日本のライブエンタテインメント産業を支援する基金「Music Cross Aid」を創設。新型コロナウイルス感染拡大防止のために、活動継続が困難を極めているライブエンタテインメント事業者やスタッフを支援するための基金だ。野村氏は基金の立ち上げに関し、「ライブエンターテインメントで仕事をしている人たちっていうのは、ライブに行った時に、アーティスト目当てでチケットを買ってくれるお客さんがいるのと一緒なんです。ステージに立ってる人たちだけでなく、ライブに携わっているスタッフみんなが表現者で、集まって一つのステージを作っている。国からの十分な補償を得られているわけではない。我々業界が経済的な支援をできる受け皿を作っていくべきだろうと、基金を立ち上げました」と説明。さらに、「音楽エンターテインメントに普段接して自分の生活を潤していただいている人たちが、次の未来のエンターテインメントを支えるためにこういった基金に協力していただければと思います」と基金を呼びかけた。


 ゲストとして登場した小林は、ウィズコロナと呼ばれる現状に、「今、また経済の蛇口を開けだして、だいぶいっときよりはよくなったと思うけど、一方で蛇口を開けながら同時に閉めるテクニックをみんなそれぞれがやらなきゃいけないでしょ。開けて、閉めるエネルギーにストレスが細かくかかっているんじゃないかと思うんですよ」と外出自粛が解除されたが、まだ感染のリスクと隣り合わせである現実を話す。中西氏も「大切にすべきことが増えてきたので、どういう塩梅でやっていくべきか、逆に難しいし、判断しかねる」と再開が難しいライブエンターテインメントの状況を述べた。


 「高密度な音、爆音がいつかは戻って欲しい」という小林は、ap bankの活動を通じて、千葉県木更津市に広大な農場があると紹介。「そこで音楽が簡単にスイッチを入れてやれることを考えていて。ライブハウスは3密と仲がいいところがある。自然のなかで簡単にそういうスイッチがあるとしたら、音も爆音ではないけれど、いろんな音の響き合いが見えてくるんじゃないかな。この15年でクラブミュージックに代表されるような高密度な音が成長してきたけど、もう少しゆるい音の連なり、生の楽器の響きも聞こえやすい。アコースティックな音楽のあり方ができないかなと思ってました」と外で聞く音楽の楽しみ方を提唱。これに堀氏も、『FUJI ROCK FESTIVAL』から始まり、徐々に規模が拡大していった音楽フェスに、「もうちょっと小規模なもののプレゼンテーションの仕方もあるかもしれない」とコメント。中西氏は「密じゃない場面というのに気付き始めたなかで、新しい音楽の表現の仕方が発見されていくんだと思うんですけど、上手に乗り替わっていかないとさっきの経済的な部分で解雇されたということが起こっていく。とは言っても、急激には変化はできない。培ってきたノウハウ、経験値、表現の仕方は大事にしていかなければならない」とスタンスを明らかにした。


 またフェスを開催してほしいという視聴者からのメールを受けて、小林は「必ず、やりますよね。『ap bank fes』もやりたいと思ってるし、来年の夏以降はやっていけるという風に思ってる人はたくさんいるから。そこに向けてじっとしているんじゃなくて、どういうことを道筋を仕掛けていけるかっていうのは、音楽業界を引っ張っていく人たちがやれることじゃないかな。僕もこの業界に育てられてきたと思っているし、ミュージシャンだし、音楽が大好きだから、この業界が潰れないように恩返しできることがあったらなんでもやりたい」と熱弁。賛同した野村氏の「夏に向けて企画できたらいいですよね」という声に、小林は「(『ap bank fes』の)枠を超えた、カテゴリを外した音楽として。大きな会場でも密にならない工夫を。そこに対しての(参加者への)誘い方の考え方を。先駆けができたらいいと思う」と来夏に向けたビジョンを表明した。(向原康太)


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