絶対に覚えておくべき! 大きな病気でも多額の治療費を負担せずに済む「医療費保障」

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2020年07月06日 11:30  AERA dot.

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写真小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー
小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー
 社会保険労務士の小泉正典さんが「今後いかにして、自分や家族を守っていけばいいのか」、主に社会保障の面から知っておくべき重要なお金の話をわかりやすくお伝えする連載の第5回。

【図表】知らないと損する!「高額療養費制度」はこちら

 前回はこの5月に決定した年金改正について解説しましたが、そのときに少しふれた医療の制度について、知っておかなければ大きな損をしかねない基本の保障を説明します。
 
*  *  *
 前回解説した年金と並んで、私たち全員の生活に関係する社会保障の両輪となるのが健康保険です。

 日本は「国民皆保険」なので、原則的には私たち全員が加入しています。「病院に行って保険証を出す」というのは、ごく当たり前な日常行為ですが、この時点で、窓口で支払ったお金は、幼児や高齢者の一部を除けば総額の「3割負担」になっているのは皆さんご存じでしょう。この「7割の保障」以外に、いくつもの保障制度があることを知っていますか?

 今回は、とくに医療費が大きな負担になる場合の保障についてお話ししたいと思います。

■社会保障は「自分で申請」しないと受けられない!
 
 これから医療の保障について解説します。最初に肝に銘じてほしいのは社会保障制度を活用する際のいちばん基本のポイントは、「申請しないと保障されない」ということです。

 たとえ数十万円、状況によっては総額で100万円以上が戻ってくる、もしくは最初から支払いの必要がない場合でも、健保組合などや自治体、もちろん病院もあなたのための手続きを自動的には行ってくれません。この連載で解説している制度を頭の片隅に入れておき、該当する場合は速やかに自分や家族が申請するようにしましょう。

■支払い困難なレベルの医療費を保障する「高額療養費制度」

 風邪やちょっとしたケガ、むし歯などを病院で治療したとき、1回の通院で自己負担額が1万円以上になることはそう多くないと思います。

 しかし大きな手術をしたり、高額な治療薬を投与しなければならなかったりする場合などは、その治療費が100万円を超えることもありえます。新聞やテレビで、家が買えるほどの金額になる抗がん剤の話題を見た人もいるかもしれませんね。
 
 治療や検査に200万円かかった場合、3割負担だと自己負担額は60万円にもなります。中高年で特に心配になる脳や心臓の疾患やがんでは、入院して手術となると100万円以上の治療費を覚悟しなければならないこともあります。
 
 このような高額な医療費負担を軽減するのが「高額療養費制度」です。これは病院など医療機関で支払った額が1カ月の間で一定額を超えた場合に、その超えた分を支給してくれる制度です。自己負担限度額は収入や年齢によって変わります(表参照)。
 
 この制度を使うと医療費が大幅に軽減される場合があります。先ほどの例に出した200万円かかった場合、年収が400万円とすると、
●80,100+(2,000,000−267,000)×1%=97,430円
と、自己負担額は9万7千円あまりとなり、50万円以上が軽減されるのです。

 この制度は、生活の安定にとても大きなものなので、実際適用される場面ではしっかり申請をしましょう。ただしこれが使えるのは、いわゆる「保険がきく治療」であり、自由診療などには適用できません。歯科のインプラントや美容整形、差額ベッド代などは対象外となります。

 長く患っていたり、複数の病気に続けてかかったりした場合などは、表にある「多数回該当」となります。過去12カ月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から表の「多数回該当の場合」の金額まで、さらに自己負担限度額が引き下げられるのです。

 高額療養費制度は世帯での合算も可能です。同世帯の家族(同じ公的医療保険制度に加入しているものに限る)の受診について、窓口でそれぞれ自己負担額を1カ月単位で合算して計算し、一定額を超えたときは、超えた分が高額療養費として支給されます。

 なお自己負担限度額は1カ月単位で計算するので、月をまたいで治療した場合は、支払った医療費を合算することはできません。

 申請は、会社の従業員の場合は自分の加入している健康保険組合などに、国民健康保険ならば自治体に「高額療養費の支給申請書」を提出、または郵送します。

■医療費が高額になる場合は「限度額適用認定証」の手続きを

 説明してきたように高額療養費制度は非常にありがたい制度ですが、一つ難点があります。先ほどのように200万円かかった場合、3割負担とするとまずは窓口でいったん60万円を支払う必要があるのです。

 もちろん申請をすることで限度額以上の分があとで戻ってくるのですが、各健康保険などの運営団体の審査の後となるのでおよそ3カ月後の支給となってしまいます。
 
 一時的にではあれ医療費が大きな負担となるので、入院・手術など高額な費用がかかることが事前にわかっている場合は、治療に入る前に「限度額適用認定証」の申請をおすすめします。

 限度額適用認定証は、高額療養費制度の計算のもととなる所得の区分を証明するもので、医療機関の窓口で提示することにより支払いが3割ではなく、高額療養費の限度額のみになります。医療費が200万円かかっても、60万円ではなく、最初から高額療養費の限度額9万7千円ほどを払えばいいのです。あとから払い戻しを申請する手間もかかりません。
 
 急な病気や事故で限度額適用認定証がない、手元にまとまったお金もない、というときは、「高額療養費貸付制度」を利用するといいでしょう。これは当面の医療費を保険団体から無利子で借り受けるものです。

 限度額適用認定証、高額療養費貸付制度とも、申請や問い合わせは高額療養費制度と同様、自分の加入している健保組合などや自治体窓口です。

■民間の保険を受け取ってしまうと高額療養費制度は受けられない?

 テレビで盛んに民間の医療保険のCMが流れていますが、これらの保険に加入している人も数多くいるでしょう。高額療養費制度を受ける場合、このような民間の医療保険の支払対象となることもあると思います。

 では、民間保険の保険金が支払われた場合、高額療養費制度はどうなるでしょうか。

「高額療養費制度が受けられない」「民間の保険金を治療費と相殺しなければならない」とたまに勘違いしている人がいますが、答えを言えば、民間保険は全く関係ありません。高額療養費制度を受け、また民間保険の保険金も受け取ることができます。

 自己負担限度額を計算する際に、支払った医療費の金額から、民間の保険金の額を差し引かなければならないということもありません。

※税金の医療費控除制度とは別のものです。税金の医療費控除については、回をあらためて解説します。

 医療に関係した社会保障は数も多く幅広いので、次回も引き続き解説したいと思います。

(構成・橋本明)

※本連載シリーズは、手続き内容をわかりやすくお伝えするため、ポイントを絞り編集しています。一部説明を簡略化している点についてはご了承ください。また、2020年7月1日時点での内容となっています。

このニュースに関するつぶやき

  • 絶対に覚えておくべき! (07/06 11:30)  自由診療の中には、国で保険適用が認められていない苦しい病気もあります。 医療費の心配もそうだけど、同じ関東でも埼玉は保険適用内で受けられる対処療法の上限が、神奈川や静岡より低いです。
    • イイネ!0
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