【アメリカ・シカゴから特別寄稿】米国モータースポーツの実情。いち早くレースを再開したNASCARに再び暗雲か

0

2020年07月06日 12:31  AUTOSPORT web

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AUTOSPORT web

2020年NASCARトラックシリーズ第6戦ポコノ
本誌でもおなじみの、アメリカンモータースポーツのオーソリティ天野雅彦さんが、インディカーシリーズ取材再開のため、3月のセントピーターズバーグ戦以来の渡米。入国や自主検疫の実際、アメリカ国内の雰囲気、そしてレースを含むメジャースポーツの動きなど、現地から生の情報をレポートする。

※ ※ ※ 

 閑散とした成田空港からガラ空きの飛行機に乗って、新型コロナの影響と人種差別問題で揺れるアメリカへ――。到着したのはシカゴ。入国審査が厳しくなっているのを心配していたが、従来と変わらず。

 4ヵ月という長い滞在にもすんなりOKが出た。今回のアメリカ滞在は、インディカー最終戦が終了するまで。最終戦までの間にいったん日本に戻るとすると、そのときの状況にもよるが、日本帰国時と米再入国時のそれぞれで自主検疫期間が設けられることになる、と考えなくてはならないからだ。

 現地の空港では、14日間の自主検疫に関する説明があると考えていた。15泊するホテルの予約のチェックなども行われるのだろうな、と。しかし、税関を出たところで紙を1枚渡されただけ。

 そこに書いてあるのは、「家にいてください」「毎日の健康チェックを欠かさずに」「感染したと思ったら、医者に行く前に連絡を」などの標語とQRコードで、あとは疾病予防管理局のサイトを見て、各自が責任を持って行動してください、ということだけだった。

 ある意味、大人の対応。しかし、こんなだと、どれだけの人がちゃんとルールに従った行動をするんだろうか? 疑問に思った。

 我々日本人の多くはお上に管理してもらうのが好きで、遵法意識も高い。私もその標準的日本人なので、自主検疫中の身でも出かけてよい食料品の買い物、ジョギングなどの屋外での軽い運動を除けば、できる限り部屋に籠っていようという考えでいる。

 白人警官による黒人市民殺害に抗議するデモや暴動は少し前に収束しているものの、今回のウイルスの発生地と見られているアジアに対して反感を抱いている人たちは少なからずいるだろうから、外出の際には場所や行動には気をつけなくてはならない。

 どの州もビジネスを段階的にオープンにしていく方針で、シカゴのあるイリノイ州は私の到着後数日で5段階のうち4段階目(レストランなどの店内飲食の再開)に入った。

 しかし、全米レベルの話だと2日連続で最多の新規感染者数が記録され、フロリダ州では2日続けて9000人が新規で感染。「そろそろ収まるだろう」という見込みは完全に外れた。

 それでも、レストランのなかで食事ができるようになったシカゴ界隈では、集まって朝食を楽しむ人々の様子がテレビに映し出されていた。夕方にレストランの前を通りかかると、そこそこ賑わっている。

 小さな田舎町のグリルがかなりの盛況だったのは、人々が“ステイホーム”を窮屈と感じていて、正常化を待ち望んでいたからだろう。自由や喜びを感じているように見えた。

 だが、自分は渡米前から考えていたとおり、自主検疫期間中はテイクアウトと自炊で貫くつもりだ。

■テキサス、フロリダ、アリゾナの3州で経済活動再開への足踏みがレースの開催に影響を及ぼすか

 アメリカのビジネス再開にかける意気込みは凄まじい。日本では考えられないレベルだ。アメリカ国内のレースを含むメジャースポーツ開催の状況や雰囲気も変わりつつある。

 先手を打ってNASCARがシーズン再開に踏み切ったのは5月中旬。モーターレーシングはメインのコンペティター=ドライバー同士が接触するスポーツではないということもあったのか、ほかのスポーツよりかなり早いタイミングだった。

 もちろん、感染防止対策を徹底。ピットクルーなどのソーシャルディタンス保持、予選やプラクティスをなしとすることでサーキット滞在時間を短くするなどの措置をとった。イベントは無観客だ。

 NASCARに続いてインディカーもシーズン初レースを6月初旬にテキサスで実施。10大会が中止となったゴルフ男子のPGAもレギュラーシーズンを6月前半にテキサス州で再開させた。

 ファンをコースサイドに入れるのは7月16〜19日のオハイオ州でのイベントが最初になりそうだ。ゴルフ女子のLPGAは7月末にシーズンを再開させる。

 3月26日開幕予定だった野球のMLBは、7月23日か24日に開幕予定。30球団は移動をあまりしないで行える試合をメインに、60試合ずつ戦うスケジュールを組んだが、6月末の感染急拡大で先行きが再び不透明になっている。

 フロリダなどの感染者激増州へ他州からの遠征が法律面からも難しくなるケースがあるためだ。3月半ばにシーズンをバッサリと終了させていたバスケットボールのNBAとアイスホッケーのNHLは、どちらも7月中にプレーオフを開始する計画。秋から冬がシーズンのアメリカンフットボールのNFLは、8月中旬にプレシーズンゲームを始める。

 NASCARは全米プロスポーツの先頭を切ることで、存在感と力強さをアピールすることに成功したと言えるだろう。5月に5レース、6月には6レースを開催。ファンを入れてのレースも6月中に実現させた。

 ところが、この6月末の全国的な感染爆発は、NASCARにも大きな影響を再び及ぼすことになるかもしれない。シーズン後半に計4戦を予定しているテキサス、フロリダ、アリゾナの3州がひどい状況に陥り、経済活動の再開プランも後退させざるを得なくなっているからだ。

 NASCARも予定どおりにレースが行われるのか、心配される事態になっている。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定