今年の甲子園は大声厳禁「手拍子」に託された応援メッセージ 現地記者が「5つの違い」ルポ

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2020年08月12日 11:35  AERA dot.

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写真タオルをかかげる創成館(長崎)の応援=撮影/松永卓也(写真部)
タオルをかかげる創成館(長崎)の応援=撮影/松永卓也(写真部)
 甲子園で開催されている2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、朝日新聞社、毎日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)は8月11日、2日目を迎えた。グラウンドの上では例年と変わらない熱戦が繰り広げられていても、甲子園を取り巻く環境は、やはりいつもとは全く違う。そこで、現場で取材してわかった、今年の甲子園の「例年と異なる5つのポイント」を紹介したい。

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(1)選手の声がよく聞こえる

 11日の第3試合では、明豊(大分)のエース・若杉晟汰が好投し、県岐阜商を相手に勝利をつかんだ。若杉は終盤、リリースの瞬間に「おっしゃあ!」とも「よいしょー!」とも聞こえるおたけびを上げて、打者めがけて球を投げ続けた。

 記者が座っていたのはバックネット裏の中段付近だが、上段に移っても若杉のおたけびはハッキリと聞こえた。こんなことは、球場が満員の通常時には考えにくい。野球部員や保護者など以外は原則、無観客で行われている今回の試合ならではの光景だった。

 他にも、ベンチから控え部員が掛ける声もはっきり聞こえる。

「盗塁するよ盗塁するよ!」
「後ろもいい打者そろってるよ!」

 など、味方を鼓舞したり、相手チームにプレッシャーをかけるような“あおり文句”もさまざまだ。監督の次のような“檄”も聞こえてくる。

「よっしゃあ、よく見た!」
「もっと球を絞らんとダメだろうが!」

 これは原則無観客の中だからこその特徴だ。

(2)大声を出せない中での、手拍子などでの応援の工夫

 普段は各チームの地元から多数の応援が押し寄せるアルプススタンドもいつもと違う。入場できるのが野球部員や保護者など一部に限られているため人数が圧倒的に少なく、ブラスバンドや応援部によるパフォーマンスもない。それに加えて、感染拡大防止の観点から、声を出しての応援は控えるようになっているのだ。皆、マスクを着用して、グラウンドに祈るような視線を送る光景が当たり前になっている。

 そんな厳しい条件下でも、スタンドからの応援には最大限の“工夫”がなされている。これまでの試合で目立ったのは二塁ランナーが出るなどチャンス時の手拍子。パン、パン、パンとリズムを合わせた手拍子はとてもシンプルではあるが、ひとたび始まると球場の雰囲気は一気に変わり、そのムードに後押しされるように適時打が生まれることもあった。

 手拍子に変化をつける学校もあった。通常時であれば、チャンステーマとして有名な「ワッショイ」を演奏する天理は走者が二塁に進むと一、一、三(パン、パン、パンパンパン)のリズムで攻撃を後押しした。コロナ禍だからこその応援のひと工夫だった。

(3)人の気配が少ない球場内外の光景

 試合から離れると、球場内も当然通常とは違う。コンコースに並ぶ飲食店はすべて営業しておらず、例年であれば報道陣がよく利用する球場内の喫茶店「サロン蔦」にも入れない。いたるところに消毒液が配置されているほか、オーロラビジョンには回が終わるごとに、感染拡大防止のための対策を紹介するアナウンスが流れる。

 球場の外にも大きな変化があった。例年ならにぎわっている阪神電鉄甲子園駅周辺も乗降客は少なく、球場チケット窓口の長蛇の列もない。毎年、球場前には翌日の試合観戦に向けた“待機組”がレジャーシートなどを敷いて並んでいる光景が見られるが、今年はそんな熱心なファンたちの姿も見られない。こればかりは仕方ないものの、やはり、「例年とは違う夏」を実感させられる。

(4)取材も「ディスタンス」を意識

 試合後の取材方法もまた、様変わりした。まず、いつもは各社の報道陣が居並ぶバックネット裏の記者席は、今年はバックネット裏の他の観客席も使用して、各記者が「ディスタンス」をとって分散して座る形式に変わっている。

 試合後の取材は、例年は“お立ち台”にあがった監督と選手を多数の報道陣が取り囲んで話を聞き、そのほかの選手には控室で取材することになっているが、今年は「密」になるのを避けるため、コンコースに各選手が背番号の順で一定の距離を空けて並ぶ。

 選手と報道陣の間には柵が設けられ、選手も含めマスク着用での取材だ。柵を挟んで選手と距離があるうえに、口元も見えないことで、次の試合が控えているとサイレンの音などで選手の声が聞き取れないこともままある。また、いつもならば試合前の練習中にも設定されている取材時間もないため、限られた機会の中で話を聞き出さなければいけない。報道陣にも、例年以上の努力と工夫が求められている。

(5)試合後の選手たちの「やり切った」笑顔

 これまで書いてきたように、球場内外からはいくつものにぎわいが失われているが、選手たちの躍動だけは例年と変わらないことが救いだ。特に、試合後のインタビューで見せる選手たちの表情は、例年以上に笑顔が目立ち、負けたチームにも大きな悲壮感はない。「持てる力を出し切った」という満足感に満ちているように感じる。

 今回の交流試合、多くの選手がゲームの勝ち負け以上に「これまで自分たちのやってきたことの集大成を見せる」という目標設定をしているからこその笑顔なのだろう。イレギュラーな年ではあるが、やはり、甲子園は「特別」なのだと実感させられた。

(本誌・秦正理)

※週刊朝日オンライン限定記事

このニュースに関するつぶやき

  • 甲子園豆知識、全国大会の舞台が甲子園になった当初、応援は禁止だった(・ω・)ノ前の会場だった鳴尾がパンクして観客が雪崩れ込んできたためと思われる。
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  • 静かだから打球音とか、捕球の音とかよく聞こえていいよ。来年以降も、別にブラスバンドがいてもいいけど、投手がモーションに入ったら静かにするんでもイイんじゃない?
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