米津玄師のライブは複合的なパフォーマンス発表の場に 『STRAY SHEEP』付属映像で堪能する貴重なステージ

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2020年08月12日 12:02  リアルサウンド

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米津玄師『STRAY SHEEP』

 米津玄師の新作『STRAY SHEEP』が発売され、各種サブスクリプションサービスでの配信も解禁。瞬く間にチャートを席巻するなど”米津旋風”が吹き荒れている。アルバムの評価も高く、CD不況のこの時代に出荷枚数はすでにミリオンを突破したというのだから驚きだ。


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 本作で注目なのは、その楽曲もさることながら、昨年開催されたツアー『米津玄師 2019 TOUR / 脊椎がオパールになる頃』の模様が収録されたDVD/Blu-rayが付属している点である。ライブ映像が収録されるのは、ティザー映像を除けば2018年のシングル『Lemon』以来で、いまだライブ映像作品を単体でリリースしていない彼の貴重なステージパフォーマンスを、ライブ一本ほぼ丸々じっくりと堪能することができるのだ。


 ここ数年で彼を取り巻く環境は激変している。それについては彼も「バケツ一杯の水を持ちながら山火事を呆然と眺めているよう」と形容していたが、その急激な変化を最もよく感じられるのがライブだ。もちろん動員や会場の規模もそうだが、それに伴って拡張した演出面であったり、楽曲の見せ方の面でも大きな飛躍が確認できる。


 たとえば、『Lemon』に収録された2018年1月の武道館公演では、ドーム状に骨格が組み立てられたステージの床面にまでスクリーンが施されていて、その中で時おり彼特有の身体表現を見せつつも、あくまで演奏を中心に、いわゆるバンドパフォーマンスを見せていくスタイルだった。


 一方で、今回収録された幕張メッセ公演は楽曲によって演奏中心のときもあれば、がっつり演出を見せていく曲もある。特に後者の作り込み方は圧巻で、映像作品として残っていることが有難い。


 ステージは客席に向かって逆V字状にせり出していて、武道館公演では基本的に舞台で歌うだけだった「LOSER」や「砂の惑星」も、前に尖った花道を進んでみたり、横に広いステージを練り歩くなど、会場の広さを活かした動きを見せていく。ギターを担いだ「飛燕」以降は3つの巨大なバックスクリーンが効果的に機能。映し出されるアニメーションもかなりこだわっている。


 そして最も注目すべきは、天井から吊るされた20メートル以上あるV字の大型構造物である。筆者もこの公演には足を運んでいたが、開演前からその異様な存在感に圧倒されていたのを覚えている(まさか動くとは思わなかった)。それがライブ中盤の「fogbound」で本格的に駆動し始める。ゆっくりと下へ降りてきて煌々と光り出し、まさに“脊椎”のような造形へと変形。


 さらに、この公演のハイライトとも言えるのが鐘の音から始まった「amen」である。せり出したステージはリフト構造を持っていて、上空の構造物と一体となって両者が巨大なモンスターの“顎”のように動くのだ。その中でダンサーたちが悶え苦しむようなパフォーマンスを見せる。迫力満点の演出だ。


 踊っているのは舞踊家の辻本知彦率いるTEAM TSUJIMOTO。「Moonlight」では月を背景に美しいデュエットダンスを披露していたが、この「amen」では10名に及ぶそのダンサーたちが魑魅魍魎の“うじゃうじゃ感”を演出。楽曲のダークな世界観を存分に引き出していた。そのほか、「Paper Flower」や「Lemon」でのただ光らせるだけではない神秘的なライティングも見事だし、ドラムパフォーマンス集団「鼓和-core-」によるスネアのパフォーマンスも力強い。隊列を組みながらのスネアの演奏は、会場に漂う荘厳な雰囲気をより一層強調していた。


 こうしたチームの協力は米津にとっては2018年頃から始まったもので、彼の“変化”の象徴とも言える部分だ。クリエイティブ性が一段と上がり、参加人数も増え、単なる音楽ライブを超えた複合的なパフォーマンスの発表の場といった様相を呈している。そもそもライブというものに対して消極的だった彼だが、こうした映像を見る限りでは、今ではライブもしっかりと腰を据えて取り組んでいるようである。


 彼自身、曲作りだけにとどまらない才能を発揮しているマルチなアーティストゆえ、今後も彼のライブが多方面の分野と連携し、“総合芸術”として展開していくことも予想される。先日の『フォートナイト』とのコラボイベントも先進的だったように、これからも状況や環境に応じた、米津玄師ならではのライブ活動に期待したい。(荻原梓)


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