『ハイキュー!!』最強の挑戦者・宮侑 “セッターが嫉妬するセッター”の目指す先

0

2020年08月30日 08:01  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

 バレーボールに青春をかける高校生達を描く『ハイキュー!!』。今回ピックアップするのは烏野と春高2回戦で激戦を繰り広げた稲荷崎高校のセッター・宮侑だ。


関連:【画像】『ハイキュー!! ショーセツバン!!』でも宮侑と宮治が活躍


 春高での烏野対稲荷崎戦。フルセットの末、烏野が勝利を収めたが、あまりにも苦しい試合だった。稲荷崎は、夏のインターハイ準優勝チームで春高の優勝候補。全国3本指に最も近いスパイカーのひとり、尾白アランら主砲を含めたスパイカーたちを絶妙に使い分けるのが“高校生No1セッター”と言われている宮侑だ。そんな彼の魅力に迫る。


■全てのセッターが嫉妬する男


 「ミヤアツムスペック盛り過ぎ問題…」と言ったのは試合直前の菅原。ユース候補で、高校生No1セッター、スパイクサーブとジャンプフローターサーブの二刀流、更に同じチームには双子でウィングスパイカーの宮治がいる。テレビでも特集され、“最強の挑戦者”としてアイドル的人気を集めている。


 そして、“食えない”選手でもある。宮侑の初登場はユース合宿のときのこと。影山のプレーを見た宮侑はこう発言する。


「プレーは大分おりこうさんやな」


 後日、どういう意味か影山が聞き返すと「真面目で素直でエエ子やねっていう意味」と答えるが、そうは聞こえない。実際、影山もこの言葉に引っ掛かりを覚える。合宿から戻ってきたあと、烏養コーチにも「おりこうさんってどういう意味だと思いますか」「褒められていないと思うんですが」と問いかけている。「なかなかの曲者がいやがるな」というのが烏養コーチの感想なのだが、まさに曲者だ。しかし、この「おりこうさん」発言が影山を開花させることになったことを宮侑は知らない。


 一方で、無邪気な一面もある。影山と日向の変人速攻を「カッコイイもんは真似したいやんか」と双子の治と真似してみせる。サーブでは「強い奴からサービスエースとったらキモチええやんか」と言ってリベロの西谷を狙い続ける。


 チームメイトの角からは「ときどきびっくりするくらい考えナシだよね」と言われるが、無邪気な欲求に見えて、実行するセンスとやってみようと思いきれるのは、誰でもができることではない。


 セッターとしての実力もピカイチで、観戦していた研磨が思わず「セッターの鑑だね」と呟くほどだ。安定したセットアップでスパイカーにボールを届ける。素早くボールに反応すること、ボールの下に滑り込むスピード、低いセットアップを行うときに体を安定させるための筋力、何より優れたセットアップの技術。稲荷崎戦では多くのセッターが宮侑について言葉を漏らしている。研磨だけではなく、梟谷学園の赤葦は「嫉妬する」と言い、選手時代にセッターだった烏養コーチは敵ながら思わずそのプレーに拍手を送っている。これがユースのセッター、高校ナンバーワンセッターなのだと感嘆させた。


■双子はスペックではない、が、侑の強さは治がいることである


 宮侑と宮治がバレーボールを始めたのは小学生のころ。チームメイトの尾白アランとも小学生のころに出会っている。うまいより、強い。闘争心が強くて負けず嫌い。常に治のほうが一歩先行く形だったが、次第に侑が追い付き、並ぶ。それでも、常に双子は競い合っていた。


 双子を比較的近くで見ていた尾白。侑が一番恵まれていた点は治だと言う。どちらかがどんなに先を走っても、もう片方が必ず追いつく。生まれたときから切磋琢磨してきた。しかし、その道が少しずつ分かれ始める。侑はユースに選ばれ、治は選ばれなかった。そのとき、治はこう言う。


「侑の方が俺よりちょびっとだけバレーボール愛しとるからな」


 やがて、2人は違う道を歩み始める。侑はバレーボールの道へ、治は食に関わる仕事へ。治がバレー以外の道を進むと決まったとき、双子は衝突している(いつもの双子のケンカは稲荷崎高校の名物となっている)。


 想像でしかないが、このとき、侑はやっぱり寂しかったのではないか。ずっと一緒に戦い続けてきた双子が別の道を歩むことになる。でも、双子であることはずっと、一生、変わらない。


 食はパワーになる。これまで、作中で選手たちがごはんを食べているシーンはたくさん出てきた。バレーの道を選ばなくても、バレーと一緒にいることはできる。共にプレーをしなくても、治は侑を強くするだろう。


■最強の挑戦者であり続ける宮侑


 時を経て、宮侑は日向のチームメイトとなる。春高敗退時、宮侑は日向に向かってこう言っていた。


「俺はいつかアンタにトスを上げるで」


 このときの宮侑には何が見えていたのか。春高の対戦で、即席ながら変人速攻をやってみせた宮侑とのコンビ。春高の時点で伏線が張られていたのは事実だ。


 ブラジルで修業してきた日向。その日向や、木兎、佐久早を飛ばす宮侑も高校のころのままではない。高校時代、稲荷崎は「最強の挑戦者」として恐れられつつも、多くの人を魅了してきた。


 世界一になった勝者であっても、ずっと同じことをやり続ければ、すぐに世界一から引きずりおろされる。これまでやってきたことを続けたところで強くはなれない。今日、ひとつでも何か挑戦を。そう語るのは稲荷崎の監督だ。


 31巻、第272話「最強の挑戦者」というタイトルに応えるように44巻、第390話、「最強の挑戦者・2」が収録されている。


 サーブ二刀流だった宮侑はスパイクサーブとジャンプフローターサーブの中間である超ハイブリッドサーブも扱えるサーブ三刀流になっていたのだ。常に挑戦を続ける。そして、それはこれまで積み重ねがあるから。稲荷崎高校のスローガンは「思い出なんかいらん」。


「バレーボールの『思い出』なんか1個もない。ぜんぶここにあんねん。全部俺の筋肉や」


 挑戦を続ける限り、宮侑は強くなり続ける。これまでのバレーボールを筋肉にして。


(文=ふくだりょうこ)


    ランキングエンタメ

    前日のランキングへ

    ニュース設定