『ザ・ノンフィクション』ヤンキーではない「中卒」の実情「最終学歴は中卒だけど… 〜ボクの働く場所〜」

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2020年08月31日 20:22  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。8月30日は「最終学歴は中卒だけど… 〜ボクの働く場所〜」というテーマで放送された。

あらすじ

 原宿のベンチャー企業「ハッシャダイ」は17〜24歳の若者に向けた半年間のインターンプログラム「ヤンキーインターン」事業を4年前から始め、350人以上の若者を社会に送り出している。今回の放送では、そこに集った4人の中卒男性にフォーカスを当てる。

 古河は母子家庭で育ち、生活保護を受けているため、働いて得たアルバイト代を差し引かれる生活を送ってきた。親孝行がしたいと話すも、ギラギラと上昇志向の強いほかの参加者とのギャップに苦しみ、リタイアしたいと申し出る。一度は説得されるが、結局インターンから離脱してしまう。安藤はビジネス書や自己啓発書を愛読しており、要約ノートまで作る勉強家だ。病弱な母と多忙な父親という家庭に育ち、妹の世話も安藤がしていたためレベルの低い高校へ進学することになり、結局中退してしまったという。インターンの電話営業では優秀な成績を残すも、「次」を目指し2カ月でヤンキーインターンから離脱する。

 次期に参加した浅見は明るく、輪の中心にいるムードメーカーだ。国立大の付属小学校に通うほど優秀だったが、両親の離婚で生活が荒れ高校を中退する。しかしもともとの頭の良さを生かし電話営業の成績も優秀だ。しかし、その浅見の倍以上の営業成績をたたき出すのが伊藤。遠慮のなさで、ぐいぐい営業先に食い込んでいく伊藤だが、貧しい母子家庭で育ち、母親が精神病を患い小学3年生から不登校だったという。

 浅見は伊藤をライバル視しており、一方伊藤は大胆な営業スタイルとは裏腹に、皆の輪に入りたいものの食事も一人で取るなど人付き合いに苦手意識がある。ハッシャダイの講師で、ヤンキーインターンの一期生でもある前田は気を利かせ二人を焼肉に誘う。

「ヤンキーインターン」の字面とは異なる経歴

 「ヤンキーインターン」「中卒」という言葉を聞くと、成人式で暴れてるような若者をつい連想してしまいがちだが、実際、番組内で紹介された4人は皆、パリッとスーツを着こなした、真面目な青年だった。古河、伊藤は母子家庭で、経済的にもかなり厳しい状況だったようだ。ついイメージしがちなものとは違う「中卒」の姿を伝えた放送だったと思う。

 『ザ・ノンフィクション』では、京都で住み込みをしなから舞妓さんを目指す少女たちの生活を長期で見つめるシリーズもあり、そこでは「最初頭角を現した子が案外長続きしない」ケースがたまに出てくる。今回のヤンキーインターンも、18歳にしてビジネス書を読みあさり、電話営業でも顧客に応じた営業トークを用意し優秀な営業成績を収めていた安藤が2カ月でヤンキーインターンから離脱していた。

 安藤はビジネス書を読みっぱなしにせず、ノートに要約まで作る真面目さで、スティーブ・ジョブズの書籍を読んだ際は「粘り強さ」をポイントとしてメモを残していた。しかし安藤の状況を見ると、高校を中退して、今回もヤンキーインターンも離脱してと、まさにその「粘り強さ」が足りないのではと心配だ。

 番組を見る限り、家族の世話などで勉強がおろそかになり、そのため入学した高校は自身の学力よりも下のレベルで、自分の居場所ではない、という思いがあったという。確かに、「どうもここは自分の居場所ではない」という居心地の悪さは、モチベーションが大きく下がる要因だと思う。とはいえ、「高校を辞める」というのは相当大きな決断であり、そこまでに至る理由だろうかとも思う。その後、アルバイト先のカラオケ店で高校生を接客したときには「俺も本来はこっち側だったんだな」と複雑な心境も話していた。

 ヤンキーインターンを離脱した理由は「もっと違うことが知りたくなった、ここで得たものを次につなげていくために違う情報が欲しくなった」からだといい、高校を中退した理由より、さらによくわからなかった。言いたくなかった真の理由があるのかもしれないが、番組内で伝えていたことが本当の離脱の理由なら、ジョブズの言う通り、もう少し粘り強いほうがいいのでは、と思う。せっかちなのか、どうも見切りをつけるのが早すぎるように見えた。

 ただ安藤はまだ、そもそも18歳なのだ。バイトを1日で辞めてしまう18歳だってたくさんいる。粘り強さを今後ゆっくり身につけていくかもしれないし、また、粘り強さは無理だと諦め、自分の他の特性で勝負していく道もあるだろう。

営業成績で驚異的な結果を残す18歳、伊藤

 電話営業で脅威の成績を見せていた伊藤は、ユニークな魅力あふれる18歳だった。伊藤は電話営業の際、たたき上げのやり手営業部長のような、相手にぐいぐい畳みかけていく攻めのトークで結果を出していた。こうした営業スタイルを嫌がる人もいるが、廃れないのは効果があるからともいえる。自信にあふれた感じを頼もしく思う人だっているだろう。18歳でこれができるのは凄まじい。

 一方で私生活は、小学3年から不登校になったという境遇もあるのか、同期の皆と食事に行きたいものの、ひとり定食屋で食事をとるなど、営業スタイルから想像がつかないほど控えめだ。番組の最後で、前田、浅見と焼肉屋に行った際は、しゃべる浅見の横で伊藤はニコニコ頷いていた。

 ハンドルを握ると性格が変わる人がいるが、伊藤は電話を持つと変わるのだろうか。今の“憑依型”スタイルがもし、かなりの無理の上に成り立っているならとても危険だと思うが、このやり方が楽しいと思えるのなら、華々しい成果も伴い、とても幸福な状態だ。

 4人は、これからたくさん社会で失敗をすると思うが、それは「中卒」が原因というよりむしろ「若い」からだろう。学歴と関係なく人は社会で失敗しまくって、大恥や冷や汗をかいて反省して成長していくのだと思う。失敗しながら、それぞれの「いい感じの人生」を模索し、つかんでいってほしいと思う。

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