『ザ・ノンフィクション』日本で最も早く新型コロナに翻弄された街「コロナと中華街 〜私はこの街で生きていく〜」

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2020年09月23日 20:32  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。9月20日は「コロナと中華街 〜私はこの街で生きていく〜」というテーマで放送された。

あらすじ

 横浜中華街で40年営業を続ける広東料理店「龍鳳酒家」。渡り蟹のあんかけ炒飯と、具だくさんの広東風チマキが名物で、行列ができるほどの人気店だったが、新型コロナウイルス問題以降は客足が途絶える。売り上げはコロナ前の3割ほどまで激減し、店を創業した華僑二世の梁瀬隆治は「(店を)開けても地獄だし閉めても地獄」と苦しい現状を話す。

 中華街は日本で最も早く新型コロナウイルスに翻弄された街だ。新型コロナウイルスは中国、武漢が発生源と言われており、さらに大勢の感染者が乗ったダイヤモンド・プリンセス号の停泊地は中華街から近い大黒ふ頭だ。番組内で放送された緊急事態宣言直後の中華街は、「当面の間休業します」と張り紙が貼られた店が続き、人もまったく歩いておらず、シャッター商店街のようになっていた。緊急事態宣言解除後も客足は思わしくない。

 横浜中華街発展会には「中国人はゴミだ!細菌だ!悪魔だ!迷惑だ!早く日本から出ていけ!」と赤い字で、書かれた手紙が届いたり、街の門に「去れ」と書かれたりなど、心無い中傷もあったという。

 春節を祝う祭りや毎年ゴールデンウイークに行われている横浜開港記念みなと祭のパレードも中止になる中で、6月、中華街では街を挙げて疫病退散の神事の儀式を行う。カラフルな獅子舞が踊りドラが鳴る光景に、報道陣や観光客が集まり、久しぶりに中華街はにぎやかな一日となった。これを皮切りに、という関係者の願いもあったものの、7月に神奈川県は再度の感染拡大で警戒アラートを発令し、中華街への客足はまた途絶えてしまう。

 隆治の一人娘の郁瑛は「龍鳳酒家」の3階にある自宅で育ち、もともとは介護の仕事をしていたが両親に請われ店に入っている。「70すぎの父、60すぎの母、朝から晩まで頑張って、もちろん叔父もそうなんですけど、一番若い私がもうしんどいよ、辞めようよっていうのはちょっと……」とコロナ禍で複雑な心境を抱いているという。郁瑛は、中華弁当のデリバリーを始め、自ら自転車に乗り宅配をしたり、SNSを活用して仕入れの様子を発信するなど、店の生き残りのため必死の模索を続ける。

 「(店を)開けても地獄だし閉めても地獄」という隆治の発言は、中華街に限らず今全国で飲食業や宿泊業、接客業をしている人の本音だろうと思う。

 総務省統計局では5年に一度、「経済センサス」という経済活動の状態の調査を行っているが、平成24年における同資料を見ると、「宿泊業、飲食サービス業」従事者は日本全国で542万832人とあり、合計に占める割合は9.7%とある。働いている人の10人に1人は飲食、宿泊業従事者であり、500万人以上が「開けるも地獄、閉めるも地獄」といった状況下にいるのだ。

 そして宿泊業、飲食サービス業が苦境にある、ということは、そういった事業者に商品を提供している「卸売り、小売り」業界も苦戦するということだ。番組内でも郁瑛が早朝に横浜の市場で海鮮を仕入れていたが、日ごろはセリの声がにぎやかに飛び交うという市場も閑散としていた。

 なお経済センサスによると「卸売業、小売業」の従事者は1,174万6,468人で全体の21%を占め、ほかのどの業種よりも従事者が多い。宿泊業、飲食サービス業と足すと、全労働人口の3割にもなる。3割の人がかつてない危機にいて、そしてコロナの「終わり」は現時点で誰もわからない。

 郁瑛は番組の最後に、このコロナ禍の状況をマラソンにたとえていた。耐え忍びリタイアせずに走り続けていかないといけない、というのはまさにマラソンだが、マラソンならまだ42キロ先にゴールという終わりが明確にあるから頑張れるところがある。コロナはマラソンよりもさらに過酷ではないだろうか。

鬱憤は立場の弱い人に向かう

 私は新型コロナウイルスそのものの脅威はもちろんのこと、感染拡大で委縮や忖度を余儀なくされる世界において、鬱憤やストレスが蓄積されることのほうが怖い。そういったストレスのはけ口は、立場の弱い人に向かいがちだ。外国人排斥、差別はそのもっとも安直な例だろう。中華街に届いた心無い誹謗中傷の手紙はその一例だ。

 さまざまな不満、不安によるストレスや鬱憤は外国人排斥、差別の風潮に向かい、そして世界がギスギスしていく構図は、世界恐慌から第二次世界大戦の流れに少し似ているように思う。国民の不安、不満をそらすため、外国に対し強硬な姿勢を取り、国民の不満をガス抜きしているのだろうなと思える政治家もいる。

 私たち一人ひとりも心に余裕があれば人に優しくできるが、貧しくなってもそれを続けることはなかなか難しい。半年前に「皆でこのピンチを乗り切ろう」と言っていた人たちは、今はどうだろう。ゴールの見えない中、ギスギスしていく世の中を不安に思う。

 次週の『ザ・ノンフィクション』は「あの日 妹を殺されて 前編 〜罪を憎む男が選んだ道〜」。大阪で会社を営む草刈健太郎は元受刑者を雇用し、社会復帰の支援を行っている。妹を殺され喪った過去のある草刈がなぜ受刑者支援を行うのか。その日々を見つめる。

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