異端の「天才棋士」をめぐる将棋×ミステリー。2018年本屋大賞2位の話題作が文庫化!

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2020年09月29日 23:01  ダ・ヴィンチニュース

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写真『盤上の向日葵』(柚月裕子/中央公論新社)
『盤上の向日葵』(柚月裕子/中央公論新社)

 将棋界に新しい風が吹き始めている。棋聖と王位を奪取し、史上最年少で二冠、かつ八段昇段を果たした藤井聡太二冠。三段リーグ戦を勝ち抜き、現役最年少プロ棋士となる伊藤匠新四段。若手活躍のニュースを聞けば、元々の将棋ファンも、今まで将棋に関心がなかった人も、将棋への関心が増すのは当然のことだろう。そんな将棋ブーム真っ只中の今、書籍界で大きな話題を呼んでいる「将棋本」がある。

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『盤上の向日葵』(柚月裕子/中央公論新社)は、異端の「天才棋士」をめぐるヒューマンミステリー。2018年に「本屋大賞」の第2位を受賞した小説だが、発売後、しばらく時間が経過した今も、多くの読書家たちを惹きつけてやまない作品だ。壮絶な人間ドラマは圧倒的。勝負の世界の厳しさと愛憎が混じり合うそのさまに、ついつい物語の世界へと引き込まれてしまう。将棋の世界とヒューマンミステリーとが巧みに掛け合わされた極上のエンターテインメント作品なのだ。

 物語は、埼玉県天木山山中で白骨死体が発見されたことに始まる。遺体は、身元さえも分からない。唯一の手がかりは、遺体とともに埋められていた将棋の駒。この将棋の駒は、名匠・初代「菊水月」が手掛けたもので、名品中の名品として知られるものだった。なぜ遺体は貴重な駒と一緒に埋められていたのか。7組しか現存しない菊水月の駒のありかを手がかりに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野が捜査を開始する。

 一方、将棋界は、最高峰のタイトル戦「竜昇戦」に沸いていた。注目は、奨励会を経ず、実業界から転身して特例でプロになった東大卒のエリート棋士・上条桂介、33歳。彼の生い立ちは決して恵まれたものではなかった。幼少期に母と死別。貧しさから毎朝新聞配達をこなすも、博打漬けの父親からは虐待を受けていた。桂介の才能に可能性を感じた元教師・唐沢から奨励会入りをすすめられるも、父親の許しは得られず、桂介は、プロ棋士への道を断念。そんな桂介の人生を変えたのは、賭け将棋を専門とする棋士・真剣師の東明重慶との出会いだった。

 物語は、捜査の進捗状況と、桂介の幼少期からの成長が同時進行で描かれ、菊水月作の駒の存在を通じてひとつの大きな流れとなる。やがて、駒の行方を追う2人の刑事の捜査線上に現れる、異端の天才棋士・上条桂介の名。桂介の身に一体何があったのか。彼をどんな運命が待ち受けているというのか。

 タイトルの『盤上の向日葵』とは、桂介が将棋の盤上にみる向日葵の幻影に基づいているのだろう。向日葵は、桂介の母が愛した花でもある。そして、狂気の画家・ゴッホが代表作で描いた花としても知られる。やがて、桂介は、自らに流れる狂気の血に気付かされていくことになるのだが…。

 壮絶な人間ドラマと、桂介が抱える宿命。見所満載の「将棋本」を読書メーターユーザーたちはどう読んだのだろうか。

ピロ子
前半「砂の器」を思った。でもそれよりも衝撃的だった。出自とは、人の一生を左右するものと思わずにはいられない。

ysk
父と将棋遊びをした幼少期を思い出した。あの頃は駒にそれぞれ役割があって動けるところも決まっており面白いなぁと思っただけでそんなに夢中にならなかったけれど、こうして時がたち再び“小説”という形で将棋に触れる時が来るだなんて思いもしなかった。有名な画家ゴッホと主人公が“向日葵”を通して“狂気”で結び付くという事になっていて衝撃を受けた。全体的に哀しい話ではあったが、続きが気になって時間を忘れて没頭してしまった…。

きーぼー
桂介はもっと活躍していって欲しかった。それにあんな子が闇落ちしていく様は見てられない。やっぱり桂介には狂った血が流れていたのかな? …ああっ!もう切なすぎる!これから向日葵を見るたびに思い出してしまいそう。

shouyi.
読み始めてすぐ将棋の専門知識もなく読んだことを後悔したが、途中から涙なしに読めなくなってしまった。登場人物たちの心がまっすぐに届いたからだ。ラストまで一気に読まないではいられない感動作。

けぴ
ラストの種明かしは壮大なドラマのよう。デビュー作の『臨床真理』と比較すると人間の描き方、物語プロットなどワンランク上を感じる小説でした。

 辛い人生をひとり生きる桂介。彼と周囲の人たちが織りなす人間ドラマはもちろんのこと、飯島栄治七段の監修を受けたという対局の模様も、臨場感たっぷりだ。桂介の背負う宿命とは? 事件の真相は? と思うと、ページをめくる手を止めることができない。待ち受けるラストには思わず絶句。将棋好きも将棋初心者も圧倒されること間違いなしのこのエンターテインメントをぜひともあなたも体感してみてほしい。

文=アサトーミナミ

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  • 読み応え十分な作品。これを機に柚月さんの著作に手を出すのもいいだろう。
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