【ブログ】全日本ロード:原点回帰のスプリント仕様になったヤマハの開発状況/“ヘンタイ”カメラマン現地情報

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2020年10月01日 12:51  AUTOSPORT web

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日曜日レース2、さよりんブリッジ手前で野佐根航汰を抜く中須賀克行
レース界のマニアック“ヘンタイ”カメラマンこと鈴木紳平がお届けする全日本ロードレース選手権ブログ。今回は、9月19〜20日に行われた第3戦オートポリス編その1です。

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日本のモータースポーツファンのみなさま、いかがお過ごしでしょうか。

今回は全日本ロードレース選手権 JSB1000クラスより、“ヤマハ・ファクトリー・レーシングチーム”、吉川和多留監督に2020シーズンのマシン、ライダー、チーム体制の事など訊いていきたいと思います。舞台は濃霧の第3戦オートポリス。

それでは“全日本ロード ヤマハ ブログ”いってみましょう。吉川監督よろしくお願いします!

──まずは2020シーズンのマシンに関して教えてください。
吉川監督:マシンの基礎となるフレームは基本2019シーズンと一緒ですが大きく異なる点は、今年は鈴鹿8耐に“ヤマハ・ファクトリー”として出場しない、という事が早々に決定したので、マシン全体が“スプリント仕様”になっています。今までは耐久仕様を軸に開発してきたので原点回帰といったところでしょうか。ですので、昨シーズンからの正常進化+スプリント仕様をミックスした状態で走っています。









──耐久仕様とスプリント仕様の違いは何でしょうか。
吉川監督:大きく言うと燃料タンクやスイングアームが異なります。スプリント仕様のスイングアームは全幅がわずかですがタイトになっています。







──そのわずかな差、ライダーはどう評価していますか?
吉川監督:限界値付近の挙動、インフォメーションがしっかりしているというコメントを貰っています。ちょっとのことですが中須賀(克行)、野左根(航汰)が限界で攻めると安心感があるのではないでしょうか。ライバル勢が「今年のヤマハはコーナーが速い」というのも、こういった要因があると思います。

──スイングアームの開発に関してはいかがでしょう。
吉川監督:事前テストなどでテストピースを試している段階です。コロナの影響で十分なテストができていないということもあり、実戦投入には至っていません。

──エンジンに関してはいかがでしょう。
吉川監督:ライダーからのコメント、ロガー等をみながら試行錯誤しながら進めています。今後も吸排気のチューンを中心に取り組んでいく予定です。また市販車の絡みから今年からスロットルがバイ・ワイヤーになっています。







■今年は“中須賀に勝つ”という姿勢で戦っている野左根

──クラッチの存在はバイク開発の中でもライダーが気にする点だと聞きます。いかがでしょう。
吉川監督:昨年までは若干不具合がありましたが今シーズンは良い組み合わせ(フリクションプレート、ボールカムの角度等)が見つかり安定しています。

──カウルの形状も変わりました。
吉川監督:新型市販車の発表を受けて同じく変更しています。これによって空力性能がアップしています。





──チーム体制に関して教えてください。
吉川監督:今年も中須賀を中心に開発を進めています。ただ野左根が伸びてきた事もありふたりのデータは共有していますが、タイヤ、ガソリン管理含め“チーム中須賀”、“チーム野左根”とチーム内で人員を分けそれぞれのチームで100%集中出来るようにしました。

──その野左根選手ですが中須賀選手やライバル勢に競り勝ち開幕2連勝を達成。今年は目つきが違う気がします。
吉川監督:意識の変化ではないでしょうか。昨年までは“本気で負かそうと思ってる?”という部分が見られましたが今年の野左根には“中須賀に勝つ”という姿勢が見られます。テストなどでは今までだと中須賀のセットで乗りつつ車高を少し変更するぐらいだったが昨年の後半から自分のストロングポイントを伸ばす走らせ方が出来るセットへと変わってきています。

中須賀の走りは言わば“セオリー”で、フロントタイヤを上手くこじって曲がって行く。一方、野左根はスパンと深いバンク角から旋回していくのが特徴。ただそれだけだと単独では速いがバトルになると競り負ける部分や不安定な部分があり勝てない。今後はさらに中須賀の良いところも盗んで速く、強くなってもらいたいと思っています。ただ野左根には中須賀が「あれはちょっと真似できない」と言わせる部分もあり、伸びしろは充分あると感じています。

チームとしても野左根にそういう声を掛けているし、逆にそうでなくては困るというのが本音です。またこういった事が記事になると本人もより意識するのではないでしょうか。





──昨年の岡山での勝利が関係するのでしょうか。
吉川監督:あれが転機だったとは思いません。あのレースはチャンピオン争いの中で守りたい中須賀、失うものは無い野左根という戦いでした。野左根に関しては今年“ただ勝つ”というだけではなく各セッションのタイムや内容にもこだわっています。コロナの影響でテストが少なく走行時間が限られているなか、両ライダーともMotoGPのテストもやっているので他と比べるとすぐレーシングスピードにもっていけるのは有利に働いていると思います。

──開幕戦、菅生で転倒した中須賀選手の状態はいかがですか?
吉川監督:負傷した箇所を手術してしまうと今シーズン乗れなくなってしまうのでテーピングで様子を見ています。岡山事前テストの後、MotoGPマシンでリハビリを兼ねて走っているので大丈夫だと思います。本人も野左根に対して「簡単に勝てると思うなよ」という気持ちでいるし、そもそも「手負いの俺に負けているようではダメだな」という考えでいると思います。



──ライバルの新型ホンダCBR1000RR-Rはどう見ていますか?
吉川監督:エンジンパワーはありストレートスピードは速いけど、まだ少し扱いにくそうに見えますね。ただ今後開発が進んでいけば速くなると思います。



──次期ニューマシンについてはいかがでしょう。
吉川監督:現時点でフルモデルチェンジの予定はありません。1980〜90年代のように限定でレーサーレプリカが売れるような時代でもなく市販車との絡みもあるので、すぐにとはいかないと思います。ただレースを考えた時、新型のファクトリーマシン同士で競い合うのもいいと思いますが、たとえばライバルのニューマシンを敵に回してストレートで抜かれる、だけど最終的には勝つ、少し劣勢なのを総合力で打ち負かすぐらいの方が内容としては深いものになるし、今後につながるものが残せる、そんな気がしています。2020年シーズンもヤマハらしく総合力で勝負します。みなさまのご声援よろしくお願いします。



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みなさま、いかがでしたでしょうか。お話を伺った第3戦オートポリスの週末、日曜日のレース2で中須賀、野左根、両ライダーによる接触が発生しました。詳細は本人たちしか知る由もなく外野がどうこう言うことではないと思います。ただ、あのファイナルラップの最終コーナーで中須賀選手のインを差しにいった野左根選手の気持ち、このインタビューの後なら少しだけですが理解できるような気がします。

まだ全日本ロードレースを見始めて間もない私ですが、あの一瞬が今後に向けて、特に野左根選手にとってひとつの転換点になるような、そんな気がしてならないと勝手に思っていますが、みなさまはどうお思いでしょうか。全日本ロードレース、次戦は10月17-18日 第4戦ツインリンクもてぎ、観戦可能ですのでみなさまお誘いあわせの上、是非お越しください。次回のブログは全日本ロードレース JSB1000クラスの新車、ホンダCBR1000RR-Rの開発状況についてお伝えしたいと思います。

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