MotoGP:マルク・マルケス インタビュー後編「ホンダのバイクは優れているけど、100%バイクに順応する必要がある」

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2020年10月04日 14:11  AUTOSPORT web

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2020年MotoGP第9戦カタルーニャGPに訪れた マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)
2020年シーズンはマルク・マルケスにとって例年とは違うものになっている。レプソル・ホンダのライダーであるマルケスは、シーズンの最初のラウンドで負った怪我のために、レースを自宅で観戦せざるを得ないのだ。レースを家で観戦するのは辛いことだが、マルクはトレーニングを継続しており、時期が来ればサーキットと彼のホンダRC213Vのもとへ戻れるように努力している。

 マルケスは9月25日〜27日に開催された母国レースであるMotoGP第9戦カタルーニャGPを前にして、2020年シーズンについて、そして身体およびメンタル面でのコンディション、レプソル・ホンダ・チームのパフォーマンスについて思いを語った。
※インタビュー前編はこちらから。

──ところであなたはレースを家で観戦しているわけですが、とても奇妙な感じでしょうね?
マルケス:家でレースを観るなんて一番辛いことだよ。自分がそこにいたいのに、フリー走行やレースを家で見ているんだから。そして結果が拮抗していることが分かる。今シーズンは様々な優勝者が生まれているので、余計に復帰へのモチベーションが高まるんだ。でも結局はタイミングの問題だ。第7戦サンマリノGPが終わって、僕は首位からたった84ポイント差なんだけど、僕自身の獲得ポイントがゼロだというのはおかしな感じだ!奇妙なシーズンで、他のライダーと比べて抜きん出ているライダーがいないように思える。

──今シーズンについてはどう思いますか?のこり7戦が控えていて、まだ見通しは完全にはついていません!
マルケス:奇妙な感じだね。なぜなら誰も勝ちたがっていないように見えるんだ!誰もトップに立ちたがっていない。理解しづらいかもしれないが、でもライダーだったら、少しは理解できるかもしれない。

 ライダーでいるということは、勝てば素晴らしいし、すごいことだ。でもライダーとして勝つ必要がある場合、何かが変化して多くの疑問が生まれる。攻撃すべきか、防御すべきか、分からなくなるんだ。もし自分が2位や3位や4位のライダーで、誰かが自分の前にいるなら、失うものは何もない。ただアタックしてさらに自信を持って走るだけだ。なぜなら失うものがないからだ。でも自分がトップにいて、それで優勝しなければならない場合、心や身体の中に疑念が生じ始めて、さらに難しい状態になる。

──ふたりのライダーが戦うだけでなく、多くのファクトリーやサテライトチームのバイクがあり、今年は複雑になっています。
マルケス:そうだね。それはMotoGPにとっては良いことだし、レース内容にしても今はサテライトチームがオフィシャルバイクを持てるから、多くのレースで勝てる。サテライトチームがシーズンやレースに向けて高い目標を持つことができるから良いことだよ。彼らはそのレベルで戦っている。スポンサーにとってもこうしたことは非常に良いことじゃないかな。

──オーストリアの『DAZN』でのインタビューで、あなたはドビ(アンドレア・ドビツィオーゾ)と(ファビオ)クアルタラロが気に入っていると言っていましたが、今でも同じですか?
マルケス:そうしたことを話すのは難しいけれど、オーストリアでクアルタラロとドビツィオーゾの調子が良いといったのは本当のことだ。正直に言って、彼らにはもっと期待していた。特にクアルタラロにはさらに期待をかけていた。なぜなら彼は最初の2レースを信じられないようなレベルで優勝したからだ。

 でも今はどうなっているのかは分からない。彼は大いに苦戦している。彼の一番の強みのひとつである予選でもね。でもドビツィオーゾは安定している。彼はパフォーマンスを出しているが、でもタイトルを取りたければもっとスピードが必要だ。それに(マーベリック・)ビニャーレスもいるし、(ジョアン・)ミルもいる。25ポイントの差のなかに8人や9人のライダーがいるから、シーズンの終わりを観るのは興味深いことになるだろう。

──今週はバルセロナでのホームレース(第9戦カタルーニャGP)ですが、あなたは家から観戦しますか?
マルケス:MotoGPのレースは僕の家から1時間のところで開催されるんだ。変な感じだけれど、なんというか、奇妙な状況だね。僕のキャリアでこんな経験をするのは初めてのことだ。どのようなスポーツのアスリートのキャリアでもそうだろうね。15年間限界まで走行して過ごしていたのに、ある1年は、こんな状況になるんだ。できるだけ早く復帰しようとしている。今でもモチベーションは高いからね。

■レプソル・ホンダ・チーム低迷の原因は扱いの難しいバイク?
──2013年から、あなたは6度タイトルを獲得しました。現在ホンダにとっては厳しい状況になっています。多くの人々がこの不運を利用して彼らを攻撃し、バイクが良くなく、戦略を間違えていると言っています。あなたはどう思いますか?
マルケス:今の僕には時間が沢山あるから、多くのものを読んだよ。でも結局のところ、この10年間、ホンダは完璧な戦略を実行してきた。なぜか?なぜならこのチームは最も多くのタイトルとチームタイトル、そしてコンストラクターズタイトルを獲得してきたんだ。ホンダはこれらの年月で素晴らしい仕事をしていると思う。

 どのマニュファクチャラーも時にはこのように1年苦戦することはある。来年に向けて状況を改善することを楽しみにしているよ。なぜなら僕はホンダの一員だと思っているし、ホンダをトップに据える責任の一端を担っていると感じているからね。僕たちは復帰する。僕にとってホンダの戦略が意味するところは結局のところ、1年は苦戦したかもしれないが、他のどのマニュファクチャラーよりも多くのことを達成した10年間があるということなんだ。

──ホンダのMotoGPバイクは人々が言うように扱いが簡単になる必要があるのでしょうか?
マルケス:すべてのMotoGPバイクには異なる性質があって、ライダーはバイクに順応しなければならない。ホンダは500ccクラスとMotoGPクラスで、この哲学を長いこと掲げている。たとえば、(マイケル)ドゥーハンや(アレックス)クリビーレと話すと、同じ哲学だと分かる。ホンダのバイクは優れている。でも100パーセント、バイクに順応する必要がある。バイクを必死にプッシュしなければならないけれど、バイクの感触をつかめば、本当に速くなれる。

『そうではなく、バイクがマルケスのスタイル専用に作られているのだ』とかいったことを読むことがあるけれど、そうじゃない。コースには3台のオフィシャルバイクがある。昨年は僕と(ホルヘ)ロレンソ、(カル)クラッチローが乗っていて、全員が同じコメントをしていた。あるライダーが速かったり遅かったりするのは別の問題なんだよ。

 でも僕は一番に速くてさらに操作のしやすいバイクを求めた。自分にとって楽になるからね。でもそういうわけにはいかなかった。これは競争力のあるバイクで、たとえば前回のレースでは中上(貴晶)が6位で、ルーキーライダーのアレックス(・マルケス)が7位だった。優れたバイクであり、ポテンシャルがあるけれど、このバイクを理解したければ何度もクラッシュすることだ。そうすれば理解できるよ。

──最終戦についてですが、会場の新サーキットのポルティマオについては、どう思いますか?
マルケス:ポルティマオはシーズンを締めくくるには面白いところだろう。あそこに行って、MotoGPのレースに出たいね。なぜなら僕は2012年にそこでMoto2バイクのテストをしているんだ。随分前のことだけれど、サーキットのことは覚えているし、とても良い場所だ。土地の自然な地形に沿っているのでアップダウンが多い。本当に良いところで、あそこでレースをするのはとても楽しかった。あそこで復帰してシーズンを良い形で終えることを願っている」

──最後に、ファンへのメッセージはありますか?
マルケス:特にレプソル・ホンダチームのみんなと、すべてのファンにお礼を言いたい。素晴らしいメッセージを沢山受け取ったよ。沢山の質問を読んだ。『いつカムバックするの?』といったようなね。いつカムバックできるか僕には分からないんだ。出来るだけ早く復帰したいと願っている。意外に早くなる気もするけれど、そうなったらうれしい。様子を見なければね。でも僕とホンダをサポートし続けてくれてありがとう。心配しないで、僕たちはトップに戻るから。

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