スーパー耐久マシンフォーカス:できるだけ市販車のままに。BMW M4 GT4

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2020年10月30日 19:51  AUTOSPORT web

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写真SS/YZ Studie BMW
SS/YZ Studie BMW
 全8クラスが競うピレリ・スーパー耐久シリーズのなか、GT4マシンによって競われるST-Zクラスは、2018年のクラス創設以来、年々車種バラエティが増えている。

 10月10日から11日にかけて開催された2020年シーズンの第2戦『SUGOスーパー耐久3時間レース』では、ST-Zクラスに6車種、9台がエントリーした。今回は、ST-Zクラスに参戦するうちの1台、今年からスーパー耐久に参戦を開始したBMW M4 GT4の特徴、特性をご紹介しよう。

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 2018年、2019年とブランパンGTワールドチャレンジ・アジアのGT4クラスにBMW M4 GT4で参戦したBMW Team Studie。2018年にはチームチャンピオンを獲得し、2019年には砂子塾長がドライバーズチャンピオンを獲得する活躍をみせた同チームが2020年ひさびさに日本に活動の場を戻し、スーパー耐久で2台のM4 GT4をサポートすることになった。

 第1戦『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』から参戦する20号車 SS/YZ Studie BMWは鈴木宏和をAドライバーに、2019シーズンのブランパンGTワールドチャレンジ・アジアを戦った木下隆之と砂子塾長という強力なドライバーラインナップとなっている。

 2019年のブランパンGTワールドチャレンジ・アジア第5戦韓国ラウンド終了時点では木下と砂子がコンビを組んでGT4クラスのドライバーズチャンピオンを獲得していたBMW Team Studieだったが、最終戦上海ラウンドでは砂子と木下がそれぞれ1台のM4 GT4でエントリー。その結果、砂子が木下を16ポイント上回り、ただ一人ドライバーズチャンピオンを獲得した。

 一度は二人で獲得したチャンピオンの称号をランキング2位となった木下は返上することになったわけだが、これは一体どういう意図があったのだろうか。鈴木康昭チーム代表、木下隆之、砂子塾長の3名に話を伺った。

木下「第5戦韓国でチャンピオンを獲得した夜の飲み会で決まったんですよ。鈴木さんが急に『ちょっとさ、面白いこと考えたんだけど。この二人勝負させない?』と。チームにはM4 GT4が2台あるから最終戦は二人で競争させようよって言い出して(笑)」

鈴木代表「そしたらアニキ(木下)がチャンピオンじゃなくなるというね(笑)」

砂子「最終戦の上海で俺が前でチェッカー受けたから、アニキは一度チャンピオンになったのに自主返納しちゃったの(笑)」

木下「韓国ラウンドの後にFacebookとかでチャンピオンとりました!!って書いて、みんなに『パーティやりましょうよ』って言われてたのにチャンピオンじゃなくなったんだもん(笑)」

鈴木代表「もちろん、ちゃんと打ち合わせの上ですよ!!」

木下「ほんと人の人生なんだと思ってるんだよって感じですよね(笑)」

 通常2名のドライバーが1台のマシンをシェアして戦うブランパンGTワールドチャレンジ・アジアだが、7秒の停車義務時間加算のハンデを負えば、1名で参戦することも可能なのだ。

 さらに一度は決まったチャンピオン争いが最終戦にも持ち越されるということで、ブランパンGTワールドチャレンジ・アジアを運営するSRO(ステファン・ラテル・オーガニゼーション)も喜んでいたというから驚かされる。

■砂子「M4 GT4はオーソドックスなドライビングに響く古典的なちゃんとしたFR」

 そんな心の余裕(?)を見せつつもドライバーズチャンピオン獲得という結果を残し、2シーズン参戦したブランパンGTワールドチャレンジ・アジアでの活動に区切りをつけて、スーパー耐久にやってきたBMW Team Studie。

 活動の場を新たにしつつも、今シーズンもBMW M4 GT4でレースに参戦し、導入から3シーズン目を迎えている。アジアでチャンピオンを獲得したBMW M4 GT4という車両はどのような特徴を持つのか、鈴木代表に話を伺った。

「メルセデスAMG GT4やアウディR8 GT4と比べていただくとわかりやすいのですが、車両価格がざっくり2000万円ほどで、他のGT4マシンよりも1000万円以上安いんです」

「何故かというと、できるだけ市販車のM4のパーツを使っているためです。それはこのクルマの売りだと思っています。ライバルにはレーシングミッションを搭載するクルマもあるなか、市販車のミッションを使って対等に渡り合えているのは、BMWの市販車が持つ元々のパフォーマンスの高さを物語っていると思います」

 市販車と同じ7速のデュアルクラッチミッションを搭載し、エンジンも市販車に搭載されている2,979cc直列6気筒ターボで最高出力も市販車同様431馬力となっているM4 GT4。

 BMW Team Studieが2018年に導入してから3シーズン目を迎えているものの、エンジンマイレージが2万kmということもあり、富士24時間を経てもまだ1度もエンジンもミッションもオーバーホールしていないというから驚きだ。

「BMWはGT4というカテゴリーに対する角度がほかのメーカーと違うんですよね。できるだけ市販車のままGT4マシンを作ろうという姿勢で作られています」と鈴木代表は語る。

 なお、7速のデュアルクラッチミッションそのものは市販車と同じものだが、プログラムは変更されており、市販車よりも高い回転域でもギヤチェンジ可能にしている。

 続いて、ドライバーの視点からM4 GT4の特徴について砂子塾長に伺ってみよう。

「ハンドリングは古典的なちゃんとしたFR。なので、オーソドックスなドライビングにちゃんと響くツーリングカーという感じです。ミッションも市販車のものなのでGT3に比べたら遅いとは思いますけど、24時間走っても何一つフィーリングが悪くなったりしない。気温40度、路面温度が60度近くある東南アジアの灼熱のコンディションでも何にも起きなかったのは凄いですね。FRですけど、重量配分が50:50 なのでフロントに重さを感じるということもないです」

「ただ、ABSのオンオフがないのでそこは不満ポイントですね。ステアが入ってるときに効きすぎたりしているので」

 さらに、アシスト面では3段階で調整可能なTCS(トラクションコントロール)が備わっており、ウエット時にミディアム設定で使用するとかなりいい出来だったと砂子はM4 GT4を評価した。

■耐久初参戦となった富士24時間で見えた課題

 過去2シーズン、ブランパンGTワールドチャレンジ・アジアの50分間のスプリントレースを戦ってきたBMW Team Studieにとって、初の耐久レースとなった2020シーズン第1戦『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』。

 予選ではポールポジションを獲得し、レース中も他車を寄せつけないハイペースで周回を続けていた20号車 SS/YZ Studie BMWだったが、クラス2位でチェッカーを受けた。

砂子「敗因はセーフティカーのタイミングと給油時間の遅れですね」

鈴木代表「給油する際にエア抜きがあるクルマもあるんですが、M4 GT4にはエア抜きがないので」

砂子「同じ給油量でも15秒ほど遅いですね。なのでピットに入って給油してフルタンクにするたびに15秒づつ遅れていくんです」

鈴木代表「決勝でコンスタントに0.5秒くらい速いペースで30周走って、15秒稼いでもピットで帳消しになるなるんですよ」

 50分のスプリントで開催されるブランパンGTワールドチャレンジ・アジアではレース中の給油は行われない。これまで無かった給油時間という点がM4 GT4にとって大きなハンデとなり、第1戦の24時間レースでは大きく影響してしまった形だ。

 セダンベースのクーペ、それでいて市販車から大きくモディファイされることもなく、限りなく市販車の状態を維持しながら誕生したBMW M4 GT4は、よりレーシングカーに近い特徴を持ったライバル勢に比べ、コーナリング面で不利となっている。

 そのため、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)によりストレートスピードが確保されており、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットなど、5速以上で走れる長いストレートが多いコースではストレートスピードの利点を活かした活躍をみせるだろう。

 スポーツランドSUGOや岡山国際サーキット、オートポリスなどのテクニカルなコースではストレートスピードを活かせるセクションが少なく、厳しい戦いとなることが予想されるが、10月31日〜11月1日に開催される第3戦『スーパー耐久レースin岡山』ではどのような走りをみせてくれるのか、気になる存在だ。
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