高知東生が原田龍二に語った、薬物依存の恐怖「死んで償うしかないと…」

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2020年11月01日 16:00  週刊女性PRIME

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(左から)高知東生、原田龍二

 自分のケガを何かに役立てたい……その思いで、さまざまな仕事に挑む漢、原田龍二。そんな原田が“大好きな先輩”と慕う俳優・高知東生との対談が実現した。高知は著書『生き直す 私は一人ではない』(青志社)に、壮絶な半生と薬物依存の恐怖を赤裸々に綴り、話題になった。

 ふたりは、再び会えた喜びを噛みしめながら人の道について語り合う─。

◆   ◆   ◆

原田 高知さんとお会いするのは『水戸黄門』で共演させていただいて以来ですね。また、お話しできて本当にうれしいです!

高知 俺もうれしい! ただ、俺もやらかしたけど、原田くんもやらかしたなあ(笑)。

原田 喜ばないでくださいよ!(笑)この連載は間違いを犯した僕が、人生の先輩に“反省”や“人生”についてお聞きするのがテーマなんです。

高知 先輩といわれても、俺の場合は不倫・薬物・ラブホテルのスリーカード。どうしようもないからなあ。

原田 いやいや、やっぱり、いろいろな経験をしている人のお話は説得力がありますし、高知さんにしかできない話がたくさんあると思うんですよ。

高知 俺は道をはずれた人間だから、こんな機会を与えてもらえるとは思ってなかったよ。“俺ら”と言ったら原田くんに失礼かもしれないけど、本当に心強い。失敗を共感してくれる仲間と話ができると思って、今日は心の防弾チョッキを脱げました。

原田 うれしいです!

高知 今日、原田くんがいなかったら、身構えて来るところやった。ありがとう! 対談はこれで終わりでいいよね?

原田 先輩、まだ始まったばっかりですよ!(笑) 僕も大昔、薬物依存の知り合いがいて、薬物依存症の人がどんな状態になるのか見たことがあります。克服するのが難しいイメージですが、高知さんはどうやって抜け出したんですか?

高知 自分ひとりの力では、どうすることもできなかったよ。留置所から出てきて最初の1年間は、財務整理や謝罪に追われて忙しく過ごしていたけど、2年目からはひたすら孤独。執行猶予期間中は外にも出ずに自粛することが「反省」や「償い」をする方法だと思い込んでいたんだよな。

 当時は仲間が支えてくれて、本当にありがたかったけど「これから一生、誰かに頼らなければ生きていけないのか」と考えたら、恐怖しかない。やることもなくて、ただただ孤独。そのうち人に会うのもイヤになって、電話にも出なくなって完全に孤立してしまった。「もう、死んで償うしかないかな……」というところまで自分を追い込んでしまったんやね。

原田 ……(真剣にうなずく)。

依存症が病気だと思っていなかった

高知 依存症の人が「もうダメだ」と助けを求める状態になるのを、「底つき」と呼ぶんだけど、俺は留置所から出て2年で底つきになった。

 そんなギリギリの状態のときに「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子さんから、突然メッセージが入ってきたんですよ。依存症に悩む人同士が自らの体験を語り合う“自助グループ”に参加するようになった。

 それからは、世界が一変! 自助グループは、薬物に限らず、いろいろな依存症に悩む仲間や先輩がいて、俺と同じ苦しみやつらさを経験している人たちが回復していく場所だ、と知ることができた。

 それまでの俺は依存症に関する正しい知識がまったくなかったんやな。そもそも、依存症が“病気”だということも知らなかったし、自助グループで同じ苦しみを抱える人に相談しなければ、明日進む道すらも踏みはずす可能性があったんですよね……。って、原田くん、全然しゃべってへんやん!!

原田 聞き入ってました……! でも、高知さんはギリギリのところで正しい知識を持つ人に出会えて、とても運がいいですよね。高知さんの人柄が“出会い”を引き寄せていると思います。依存症の場合、そういう人に出会えず、脱輪してしまうケースのほうが多いじゃないですか。

高知 たしかにそのとおり。俺から見たら原田くんもツイてると思うけど、最後に残るのは“人徳”。原田くんの人柄や、内面の本質が運を引き寄せるんやろな。

 俺たちは若いころにやんちゃもしたけど、悪いことをしたらすぐに認めて謝ってきた。やんちゃなりの道徳を守ってきた人生はムダではなかったよ。若いころを振り返ると「俺はなんてひどいやつだったんだ……」とは思いますけど(笑)。

 いろいろな反省も後悔もしてるけど、自分の生きてきた人生に対して“悔い”はない。

原田 そうですね。悔いと後悔は違うものですよね。

高知 うん。あのころは尊敬する先輩のように豪快に飲んで遊び、愛する人を大切にして“豪快に生きたい”と思っていたし、それがひとつの生きる道だった。でも、その青春を引きずったまま年を重ねて50歳で捕まってしまったことは本当に反省してる。いちばん心が痛むのは、芸能人が薬物で逮捕されて「芸能界には薬物が蔓延してる」と言われてしまうこと。本当はそんなことないのに、俺がイメージの悪化に加担してしまったのは間違いないですからね。

原田 たしかに、芸能人の薬物使用は、報道が過熱して目立ちますからね……。

高知 でも、今では俺はいい意味で、この過ちをこれからも引きずっていくし、自分にできることをひとつひとつやっていこう、と思えるようになりましたね。

 仲間と一緒に自助グループを巡ったり、SNSで正しい知識を発信したりして“あなたはひとりじゃないよ”と伝えたい。それが俺の償い方であり役割やと思うし、終わりはないよね。

昔から夜が怖くてたまらなかった

原田 本のサブタイトルも『私は一人ではない』ですよね。ひとりではないと気づけたのは、やっぱり自助グループへの参加がきっかけだったんですか?

高知 うん。自助グループに参加したり、依存症から回復するためのプログラム「12ステッププログラム」を実施したりして、自分の弱さやトラウマに気づくことができた。

 実は俺、“夜”が必要以上に怖いんですよ。

原田 夜ですか?

高知 そう。俺が子どものころは、おふくろも親父も夜になると出ていって、2〜3日帰ってこないこともザラ。テーブルの上に食費は置いてあったけど、ひとりで真っ暗な家で過ごさなければならなくて、すごく怖かった。今は電気をつけたまま家を出るようにしてるけど、考えてみると暗い部屋に帰るのがイヤで飲みに行き、薬物や危険が近づいてくる……という危うい生活だったような気がする。

 昔は“暗い部屋が怖い”なんて、男らしくないし、恥ずかしくて言えなかったからね。でも今は「夜が怖い」とか「さみしい」って大声で言えるようになったし、そんな自分が大好き!

原田 わかります。ダメな部分も含めて、本当の意味で自分を好きになれたんですよね。変な話だけど、僕はスキャンダルが見つかってよかったし、高知さんは捕まってよかったのかもしれないですね。

高知 本当に捕まってよかった! 失敗を共感してもらえる原田くんにそう言ってもらえるのが、すごくうれしい。自分の犯した過ちに対して申し訳ないとは思うけど、これからの人生で罪を償っていけばいい、と思えるようになったよ。

 もしも俺みたいに、ひとりで抱え込んでいる人は、各地域にある「精神保健福祉センター」に相談したり、自助グループに参加してほしい。正しい知識を発信していくのが、俺の役割やと思う。

原田 重要なのは、失敗したその後どう行動するか、ですよね。もっと高知さんが薬物依存から立ち直った姿を世間に見せてほしい。この対談を読んで「高知さんに話を聞いてほしい」という人が相談しに来ると思いますよ!

高知 そのときは一緒にやろうよ!

原田 僕は話を聞くことしかできませんが、ぜひご一緒したいです!

高知 なんだか俺ばっかりしゃべってしまったけど、ひとつ、原田に聞きたいことがあったわ。

原田 なんですか? 

高知 なんで、もう少し前戯をちゃんとやらんの?(笑)

原田 申し訳ない。どうかしておりました……(笑)。

【本日の、反省】高知さんと久しぶりにお会いできて、すごく楽しかったです。印象的だったのは「心の防弾チョッキを脱げた」という言葉。僕らは根性論や男らしさを美徳としていた世代なので、人に弱さを見せたり、なかなか心の鎧を脱げなかったりする人が多いのですが、高知さんは「防弾チョッキを脱いだ」と口に出せる人に変われたのかも。自分のやるべきことを自ら見つけた高知さんは、とても希望にみちあふれていてステキでした!

《取材・文/大貫未来(清談社)》

原田龍二(はらだ・りゅうじ)……1970年、東京都生まれ。第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞後、トレンディードラマから時代劇などさまざまな作品に出演。芸能界きっての温泉通、座敷わらしなどのUMA探索好きとしても知られている。現在、YouTubeチャンネル「原田龍二の湯〜チューブ!」を配信中!

高知東生(たかち・のぼる)…… 1964年、高知県生まれ。1993年に芸能界デビューし、俳優として『新・仁義なき戦い/謀殺』など、映画やドラマ、バラエティーで活躍。1999年に女優の高島礼子と結婚。2016年6月、覚せい剤と大麻の所持容疑で逮捕され、同年8月に離婚。現在、薬物依存の専門病院や自助グループに関わりながら依存症問題の啓蒙活動に取り組む。9月には『生き直す 私は一人ではない』(青志社)を出版。

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  • 厳しくするのは本人自身で周りは生ぬるい目で見てれりゃいいんだよ。今さら叩いても仕方あるめぇ。
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