川邊靖芳はドレスメーカー学院卒業。ホームレスを経験した後、「意味を軽くする事」をコンセプトに掲げたファッションブランド「ルヌルヌ」を立ち上げ、視覚表現を通じて宗教やヒエラルキー、ジェンダーなどの"境界線"を問う作品を発表している。ルヌルヌのアイテムは、異素材の断片を組み合わせることで生まれる偶然性のあるパターンと立体的な造型が特徴で、「できるだけ手を加えず、フラットな状態であること」を意識しているという。近年では身体や性器を彷彿とさせる形状のバッグや服を展開。併せてアイテムにまつわる写真や映像、インスタレーションなどの制作も行っている。
個展「ANIMAGRA」は、エネマグラとラテン語で、「生命」や「魂」を意味するアニマを掛けた造語。2020年10月にオープンしたばかりの会場では、セクシャルマイノリティであったと言われているハンス・クリスティアン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)の著作「人魚姫」にインスピレーションを受けたポートレートをはじめ、キリスト教系カルト教団の信者である両親を持つ川邊の原体験に基づく作品を展示。ジェンダーセクシャルマイノリティへの否定的な観念と共存をテーマとした新作ファッションプロダクトや写真、映像、インスタレーションなどが披露されている。