髭男爵・山田ルイ53世が語る、娘の成長と家族観 「母親を“キャリア”と呼ばないのなら、キャリアウーマンなんてこの世にいない」

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2020年11月23日 10:01  リアルサウンド

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 お笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世が『パパが貴族 僕ともーちゃんのヒミツの日々』(双葉社)を発売した。「一発屋芸人」と自らも称しているが、幼い娘がその言葉の持つ苦味を知るにはまだ早いと「髭男爵」であることを隠してきた山田。「パパに似てる人がテレビに出ている」「パパが出かけるとシルクハットが1つ減る」などヒヤヒヤする展開もありながら、なんとか秘密を守り続けてきた8年にも及ぶ攻防戦を綴ったエッセイ本だ。


 今回、山田にインタビューを実施。執筆時の思い出から子育てを通じて感じたこと、そして最後には、長女が全てを悟った場合に備えて伝えたいメッセージをビデオレターとして動画に残してもらった。(佐藤結衣)


パパが「一発屋芸人」と呼ばれている……人生の苦味を知るには、まだ早い

――今回、娘さんとのエピソードを中心としたエッセイ本を出版された経緯からお聞かせください。


山田ルイ53世(以下、山田):『ヒキコモリ漂流記』っていう本を書かせていただいたぐらいから、真似事ではあるんですが書き物のお仕事をいただくようになりまして。当時は『tofufu』さんっていうWeb媒体で夫婦のことを連載させていただいたんですよ。その連載自体は2年か3年ぐらい前に僕が原稿を送らなくなったっていうことが理由に止まってるんですけど(笑)。


――送らなくなった!?


山田:いやー、もう本当に優しい人たちやったんですよ。正直、他の連載ものみたいな話が立て込んでしまって。そしたら「お手すきのときで大丈夫ですよ」っていう言い方をしてくださって。それを100%真に受けてしまって「んー今、手あいてないもんな」って送らずにいたら、そのままずるずると……。


――そんなことが(笑)。


山田:その文章と、他の媒体でちょこちょこっと書かせていただいていたものと、書き下ろしを組み合わせて、今回「本にしましょう」と双葉社さんからお話をいただいたんです。でも、すごく昔に書いたものもあったので、生意気ですが、今の自分と書き方とか味がやっぱり違う。結局ほぼほぼ全部手を入れた感じになりました。僕が書き物の仕事を頂くときはいつもそうなるんですけど、例えば8000字の予定のところを、1万5000字ぐらいで書いて送ってしまうわけです。そうすると、編集の方が8000字ぐらいに刈り込んできたやつを返してくれるんですが、それをまた2万字にして戻したりして(笑)。その地獄のラリーが3回ぐらい続いて。僕としてはもうちょっとやりたかったんですけど、担当の方が「何度送り返しても同じだけ赤が入るので、ここまでとさせてください」と(笑)。僕が、この出版みたいなものに関わり始めてから初めて編集さんのほうからピシャリと断られたという形になりました。


――出版までのスケジュールを考えるとやむを得なかったのでしょうか(笑)もともとそうした練り上げていく作業はお好きなんですか?


山田:そうですね、性格的に細かくてしつこいんですよ。ネタを作っている時もそうなんですが一度「こう言ったほうが面白いな」とひらめくと、それを反映せずに終わりにするっていうのが我慢できない。まあ、「1発で正解出せよ」って話なんですけど。


――では、そのなかで筆がノッたというか、思い入れのあるエピソードはありますか。


山田:本の冒頭に掲載されている旅行先での双六の奇跡はやっぱり。よりによって自分が「芸人になる」のマスに止まるかね〜という。あの緊張感、気まずさは忘れられないです。あとは、娘がお風呂で算数遊びをしていて、「お風呂にいるのはみんなで何人ですか?」って言ったら「3人」っていう数字の答えじゃなく、「家族」と答えたエピソードですかね。「なんて美談センスがあるやつだ、すごいなお前!」と。


――日々の娘さんの様子については何かに記録しているのでしょうか? それとも記憶していたことを書かれているのですか?


山田:勿論、今でも長女の観察は続いていて、ある程度のボリュームではメモっています。だから次があればすぐに書き出せるぐらいのストックはありますが、本書に収録した以上の味わい深いエピソードはなかなか生まれないのかなとも思う。


――長女さんに気づかれる瞬間までの様子や、次女さんとの攻防戦もあるのではと、期待していたのですが。


山田:次女はまだ1歳半ぐらいですけど、長女の時ほど触れ合えていなくて罪悪感があります。やっぱり、長女の目を気にしてしまっているんですね。次女にかまい過ぎると長女がヤキモチを焼くんです。だからたまにコソッと「一番好きなんは君だけだからね」って長女に囁くことも。もはや、浮気した夫のような。


――現在の娘さんたちの反応はいかがですか?


山田:まだバレてはないと思います。「髭男爵」とか「ルネッサンス」とか「シルクハット」とか……ジグソーパズルのかけらというべき情報は断片的に持っていますけど、一番最奥部にある、「一発屋」とか、そういう苦味は全く気づいていない。僕は「フレキシブルに働くサラリーマン」って娘には説明してますけど、どっちかっていうと、家でカタカタとパソコンで何か書いてる人という認識だと思います。奥さんはこの状況を楽しんでるみたいで、僕がコメンテーターの仕事してるのとかわざと娘にチラッと観せたりしているようなんです。


 僕のなかにも、どこかで言いたい気持ちはあるはあるんですよ、やっぱり。ちょっと、いい仕事がきたときなんかは。本にも書きましたけど、『プリキュア』の敵役の声優を務めたときなんかは、「これ知ったらどんな顔すんのかな?」っていうワクワク感から、言いたい葛藤はすごくあったんですけど、グッと我慢。「なんて俺は自制心が強いんだ」「ここで踏ん張れるか俺」って我ながら感心しましたよ(笑)。普通言うと思う。本にも書いた通り、娘とプリキュアごっこしてるときに、「これは本当はごっこじゃなくて、実戦なんだよ。キミが今戦っているのはホンマの敵役の人なんだよ」と心の中で。そんな実戦を提供できたことは誇らしく感じました。「日本中のパパの中でも限られた人しか提供できないアトラクションなんだよ?」って(笑)。


――娘さんは気付いていないでしょうけど(笑)。


山田:そうですね。いや、もしかしたら心のどこかで感じているかもしれない! 「あれ?何か本物やっつけた手応えあるな!?」みたいな(笑)。


――今まで「これはもう言っちゃう」という区切りはなかったのですか?


山田:正直、何回かはありました。でも、やっぱりそこは娘が学校でいじられることを懸念して「まだや……」と。隠していく上で、肝を冷やしたのが本にも書きましたが「しりとり」。本当に、どういう形で情報が漏れるかわからないなっていう。


家庭が出すゴミと同じ。ゴミ袋って、情報の宝庫なんですよ。そこを漁られたら、絶対何か出てくるから。それと同じで、しりとりも情報がダダ漏れになりますからね。これは職業を隠している世のパパたちにも、ぜひ気をつけていただきたいところです。


モデルルームのような素敵な家庭ではなく、平凡でつまらないパパとママをやってます

――個人的には娘さんが「賢くなりたい!」と叫んだエピソードも好きでした。大人じゃなかなか言わない言葉が出てくるのが素敵だな、と。


山田:なんかそういう気持ちがあるみたいで。その割に知育玩具とか与えてみても、すぐに飽きてしまう。でもそれは、親が勝手に与えてるだけなんで。知育玩具って「与えておけば勝手に頭が良くなる」っていう錯覚がありませんか?全自動というか。やっぱり親ってラクしたいんだなーと。自分の子供とはいえ、一人の人間にガッツリ関わるって、めちゃめちゃしんどい。素敵なパパとママでいないとダメだっていう空気感が世の中には少なからずあるでしょ。我々(メディア側)も加担してしまっていますけど、僕がよく言うのは、芸能人の人がブログに素敵な子育てを書いたり、「お弁当こんなの毎日してます」っていうのは、あれは住宅展示場のモデルルームだ、と。そして、モデルルームがなぜ素敵で綺麗かといえば、そこに人が住んでいないからだっていう。だからそういうものに惑わされ過ぎずに、平凡なね、つまらないパパとママをやっているんだという話を、この本でも書きたかったわけです。


――そうした幻想というか、理想の形みたいなものをもともと持っていらっしゃったんですか?


山田:まあ、多少は。でも、僕は生きていくなかで、幻想を打ち砕かれることが基本的に多かったものですから。例えば、お笑い芸人を始めたときは、「天下取るぞ」みたいなモチベーションこそなかったですけど、一応関西人ですから、スーツをビシッと着てセンターマイク1本で「”べしゃり”で勝負や!」っていう気持ちはありました。けど、気がついたらシルクハットかぶってて。そんな奇妙な化物漫才師にはなりたくなかったわけです。そういう意味でやっぱり幻想とか理想っていうのは打ち砕かれてるし、そこで「諦める」っていう作業を1個挟んでいる。もっと遡れば引き篭もった時とかも、大学行った時も、上京した時も……そういうことの連続だったんで。でも、おかげで生きてこられた部分もある。「無理なんだ」と知って諦めていくことは、決して悪いことだとは思わないですね。


――娘さんが思い通りに動いてくれず奥様がイライラしている様子も、赤裸々に書かれていましたね。


山田:ちょっと古い家族の形というか、外で働くのは男で、女性は専業主婦でっていうパターンの家庭だと、男が目にする子供の成長ってコマ送りというか、CMを飛ばして見ているようなところがある。だから奥さんに比べればラクなのかなと。でも母親の場合、それこそリアルタイムで目を離さずにずっと見守らないとだめ。植物の成長を、肉眼で観察し続けるのと早送りでサーっと見る違いというか。だから、奥さんがキーッとなるのもわかるし、なって当然だと。繰り返しますが、そこはやっぱりモデルルームじゃなくて、人が住んでいるリアルの世界だから。


――「妻のやることにはなるべく口出ししない」というフレーズも印象的でした。


山田:僕は夫婦生活や家庭っていうのは、いい意味で諦めることを増やしていく作業だと思っているので。折れても良いと思える相手だからこそ結婚したんじゃないのか、というか。誰かを完全にコントロールすることなんて無理ですよやっぱり。そういう「無理なんだ」をわかっていくってことが、大事だなと思っています。コロナ禍においては、「お互いを改めて見つめ直して、絆を深めていこう」というような発信が各所で見受けられました。タレントがこんなこと言うべきではないのでしょうが、「よくないな……」と思いましたね。


 夫である、妻である、父である、母であるというだけで、「強い絆で結ばれていないとだめ!それが家族!」というのもどうなのかと。もちろん、そういう人もいていいですし、できる人はどんどんやっていただけたら、と思います。でも、「そうなろうとする」というのはしんどいかなとも思う。家族とか親という言葉、概念が生き方、人間性のハードルを上げてしまっているような気がする。もっとため息を吐きやすい空気感が社会に必要かなと思います。「はー……子育てしんどいな、面倒臭いな……」って気兼ねなく言えるような。僕は基本ため息が好き。ため息が吐けるだけの肺活量さえあれば人間生きていけると思ってますから。


――「娘さんの言動に必ずリアクションをとる」というこだわりに、さすが芸人さんの子育てだと思いました。


山田:やっぱり仕事柄、お客さんの反応がない、つまりすべるということの寂しさは身をもって知っているので(笑)。子どもにそういう思いはさせたくないなという。ただ、こっちが表情豊かにリアクションしてると、子どももえらいもんで笑顔になる。陰気な顔をしてると、子どももそういう顔になるし。とにかく、「この世界は君がやることに逐一反応するんだよ」っていうことだけは、子供の肌身に染み込ませておきたい。


――「地獄」という言葉が、知らず知らずのうちにうつっていたと書かれていましたね。最近では何かありましたか?


山田:長女は今小2なんですけど、「むしろ」とか「若干」とか堅い言葉を使うので戸惑います。僕は子どもの前で噛み砕いてしゃべることをあんまりしない。それが影響しているかも。もともと文語的な言い回しを好むところがありまして。それが娘にうつっているとしたら申し訳ないなというか。クラスメイトとの会話で「むしろ」とか口走ってないかなと心配です(笑)。


――かなりシブいですね(笑)。山田さんは「イクメン」っていう言葉にもちょっとくすぐったさがあるようなお話もありましたけど。


山田:僕だけじゃなく、もう世間的にもその段階に入っていると思いますけど。


「イクメンタレント」がもてはやされた時期がありましたけど、当時から違和感はありました。と言っても、僕自身そんなに胸張って言えるほど子育てもしてないですしね。次女の出産のとき、奥さんが2週間ほど入院した際は、朝から晩までずっと長女の世話をしていましたけど、どちらかと言えば、やむを得ずですし。ご飯を作ったり、持って帰ってきた給食着にアイロンを当てたりとか、全部やりましたけどめちゃくちゃしんどかった。


――特にしんどいなと感じたところはありましたか?


山田:もー、全般的にしんどいですが、洗濯が特に。勿論独身時代、散々やってるんですけど、家族の分となると全然違う。あれは重労働だと思いました。長女が生まれたとき、「おしめは俺が替えようかな」って軽い気持ちでやってみたんですけど、あれもしんどい。。今までの人生で、おしめを替えるっていう作業、動きをしたことがないからだと思う。使う筋肉が違うんでしょうね。一枚替えるだけで汗だくになって(笑)。慣れてきたらコンビニのおにぎりみたいにシュッとできるようになりましたけど、やっぱり最初のうちは足を持ち上げて「ハァ……」、おしめをおしりの下に敷いて「ハァ……ハァ……」って(笑)。お前、炭鉱で働いてんのかというくらい、本当汗だくになってた。家事って全てにテクニックが必要。あれを“キャリア”と呼ばないのなら、キャリアウーマンなんてこの世にいないと思います。


――汗を拭き拭き(笑)。


山田:そうなんですよ、また僕の汗が我が家では問題になりまして。夏とかおしめ替えるとか関係なしに、常に汗をかいてる。それで長女を抱っこしたら、まさかの親の汗で娘に汗疹ができるという。これは非常に古い例えで申し訳ないですが、昔『キン肉マン』という漫画で、バッファローマンというキャラクターの“悪魔霊術キズうつし”というのがあったんですけど、まさにあれ。地獄の技です。娘が僕にかぶれるというね、「お前の親は漆か!」というぐらいのかぶれ方で。「どういうことこれ!?」って奥さんに言われて、もう夏場は汗には気をつけるようにはしてます。


物書きにも漫才のネタづくりにも通じている、言葉のテンポ感へのこだわり

――娘さんに、家でカタカタと書き物をされているイメージを持たれていそうだとおっしゃっていましたけれども、山田さんはいろんなお仕事がある中で、物書きのお仕事についてはどんな感覚ですか?


山田:いやー、楽しくはないですね。だって、文章を書くのってすごく面倒くさいじゃないですか。ただ読んでいただいたときに「面白かった」とか言っていただけると、芸人として1ポイント入ったみたいな気持ちにはなる。まあ、間違いなく、雛壇ではじけるよりは得意なような気がします(笑)。


――先ほど、昔とは文の書き方が違うから加筆されたという話もありましたが、ご自身ではどのように変わったと感じられたのでしょうか?


山田:僕はあくまで自分は“物書きの真似事”だと思ってるので、偉そうなことは言えませんけど、そのときによって自分の中で流行りがある。ここ5年ぐらい文章書いてきて、たとえば、「体言止め」ブームとか(笑)。まあでも結局、やっぱりわかりやすさ、伝わりやすさが大事かな、と。漫才のネタとか書くときもそうですけど、髭男爵のネタって……まあ、「髭男爵のネタって」言われても全然興味ないと思いますけど(笑)。


――いえいえ、ぜひお聞きしたいです(笑)。


山田:ふふふ。髭男爵のネタって、要するに最初の大きなフリがあって、どんどんやりとりが短くなっていく作りなんですよ。ちゃんと台本見ると、至極真っ当な漫才(笑)。口幅ったいですが、結構、計算されてる。というのも、相方がやっぱり5文字以上ちゃんとしゃべれないとか制約が多くて(笑)。本当、指示されたボケを言ってるだけなんで、それでも成立する、ウケる、売れるネタにしないと、この人とできないなと思ったんで、そういう風にした。芝居力がないから、ニュアンスで面白くは出来ない。そこをテンポ感とか他の要素で補わないといけない。走り幅跳びの3歩で踏み切る、みたいなことをすごく重要視してやってました。逆に言うと、それで鍛えられた、他の芸人が考えなくても良いことに頭を使うきっかけとなった、ということはあるかも。感謝です(笑)。「5・7・5ときたら、7・7やん、7・4とか6・2ではダメやんか」みたいな日本語のリズム感は人一倍大事にしてきましたね。


――今後も本を出していきたいというお気持ちは?


山田:流石に今回でもう6冊目なんで、まあ死ぬまでにもうちょっと書くでしょうね(笑)。このコロナ禍で、僕は文章書く仕事してたから、ちょっと落ち着いていられたところがある。とりあえず「やることがある」っていうのは本当に助かったので。


娘が何者にならなくてもいい、ただ「パティシエはもう足りてる」とは伝えました

――このコロナ禍で、芸人さんのあり方も変わっていきそうですね。


山田:いわゆる地方営業のオファーというのは、ほぼなくなりました。ただ最近は「リモートの講演会」とか新しい仕事も増えてきているので。「お笑い第7世代」っていうワードが業界を席巻してますけど、あれを見たときに「俺って第何世代なんやろ」って考えたんですよね。僕はちょっと前に「一発屋相対性理論」という考えに至ったんです。一発屋というのは、時間の流れが違う。あるとき、ボカーンと、それこそロケットが打ちあがるような異常な売れ方をして、光の速度で宇宙を旅して地球に戻ってくる。すると、同期の時間軸からはじき出されていた。同世代と歩んでいく道からは外れてしまった……そんな感じ。だから一発屋は無世代。寂しい芸人なんです。あるいは、ポストイットです。「あの年、あの芸人が流行ってるときに、大学に受かったな」とかっていう、そういう記憶のシオリ的役割を担っているのかもしれません(笑)。


――今後、こうしていこうということは見据えていらっしゃるのでしょうか?


山田:僕は、そういうのが本当になくて。っていうのも、芸人を志したときも「これやめたらいよいよやることがないな」っていう、すごい薄いモチベーションでやってた。だから本当に何かしっかり目標を持って「俺はこれになりたいんだ」「これを成し遂げたいんだ」っていうのが全くない人生を生きてきたんです。今も全くない。それで良いと思っています。「長女が成人するぐらいまで、何とか飯を食わせる」ことくらいですかね。娘にも別に何にも期待してないです。こういうと、「なんちゅう親だ!」とお叱りを受けるかもしれませんが、別に何者にもなっていただかなくて結構。ただ「パティシエになりたい」って言ってきたときは、「もうパティシエは世の中に足りてるよ〜」っていう話はしましたけどね。何年か前にパティシエのブームがあって、猫も杓子もパティシエになるって言ってる時代があったような気がしたもんですから、「しばらくの間、パティシエは日本に要らないんだよ」っていう(笑)。いや、あの業界も競争が激しいですので、なれるもんならなっていただきたいですが。


――そんな(笑)。では、娘さんが「芸人になりたい」とおっしゃったらどうしますか?


山田:正直、賛成はしないですけどね。こんなにめんどくさい、ほぼほぼ食えない仕事も他にないんで。一発屋と言いながら、10年以上芸で飯食えてるのなんて、自分で言うのも何ですが奇跡ですよ。漫画家とかならないかなーと妄想したりはします。もちろん無茶苦茶厳しい世界ですけど、当たったらデカいし。そこはやっぱり一発屋的思考ですね(笑)。


――たしかに(笑)。では最後の質問は、ムービーでお答えいただきたいんですが、将来娘さんが、パパが髭男爵だと気づいてしまったときのメッセージをビデオレターで伝えていただきたいです。


髭男爵・山田ルイ53世、娘へのビデオレター

――ありがとうございます! ネットの海に流れたボトルメールのように、いつか娘さんのところに届くことを願っています。  山田:許してくれるといいんですが(笑)。最近はもう、髭男爵を検索しようとすると、official髭男dismさんが先に出てくる。最初は「なんでやねん!」っていう気持ちがありましたけど、自分が正体を隠しており、将来娘がスマホ持つこと考えると、今自分は“ヒゲダン”に守られているのかもしれないと感謝の念があります(笑)。でも娘のおかげで、どこかで正体を隠すスーパーヒーロー気分を味わえてるところもあり、楽しみもある。「メガネとったら髭男爵じゃん」のくだりを本にも書きましたけど、やっぱり『スーパーマン』のクラーク・ケントのメガネだけの変装っていうのは、本当に無力なんだなっていうことDCコミックスさんは考えて欲しい。ここに実践して、失敗した人間がいるので(笑)。


■書籍情報
『パパが貴族 僕ともーちゃんのヒミツの日々』
著者:山田ルイ53世
出版社:双葉社
価格:本体1,400円+税
出版社サイト


既刊『一発屋芸人列伝』(新潮文庫)
著者:山田ルイ53世
出版社:新潮社
発売日:11月30日
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