K−POP・韓流ドラマ人気の次は? 韓国文学ブーム「日本人も腑に落ちる」

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2020年11月27日 18:00  AERA dot.

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写真チェッコリ東京都千代田区神田神保町1−7−303−5244−542512〜20時(土曜は11〜19時)日、月休
チェッコリ東京都千代田区神田神保町1−7−303−5244−542512〜20時(土曜は11〜19時)日、月休
 ドラマ「愛の不時着」や「梨泰院クラス」、映画「パラサイト 半地下の家族」、K−POPの「BTS」や「TWICE」など、韓国カルチャーが席巻中だ。実は今、K−BOOK(韓国文学)がいちばん熱い!!

*  *  *
 現在公開中の映画「82年生まれ、キム・ジヨン」。原作は韓国で130万部を超えたベストセラーで、日本でも累計発行部数21万部を突破。本作をきっかけに韓国文学に注目が集まり、近年、各出版社が韓国文学作品の刊行に力を入れている。そこで韓国専門ブックカフェ「チェッコリ」に、おすすめの本を紹介してもらった。

■ 韓国で勢いある若手作家

『フィフティ・ピープル』
著:チョン・セラン/訳:斎藤真理子/2420円(亜紀書房)
ある大学病院を中心に、50人の人生が絡み合う連作短編小説。韓国で最も権威ある文学賞の一つ、韓国日報文学賞を受賞した。

 人は生きていると、実は周囲にいろんな影響を与えあっている様子を描いています。日本語版には原書にない登場人物のイラストがあります。これによって名前だけでは性別もわかりづらい韓国人の登場人物がイメージしやすくなっています。


『アーモンド』
著:ソン・ウォンピョン/訳:矢島暁子/1760円(祥伝社)
扁桃体がうまく機能しない失感情症の少年ユンジェ。激しい感情を持つ少年との出会いが人生を変える。2020年本屋大賞翻訳小説部門1位。

 少年の顔の印象的なイラストを書店で見かけた方も多いのでは。作者は映画演出を専攻していたせいか、小説を読んでいるとより映像が思い浮かんできます。青少年向けの小説ですが、感情がわからない少年が愛によって変わる過程は、世代を超えて感動できます。

■ 歴史を通して韓国を知る

『広場』
著:崔仁勲/訳:吉川凪2200円(クオン)
朝鮮戦争停戦後、釈放捕虜となった李明俊は南にとどまることも北への帰還も拒み、第三国行きを希望するが──。分断社会の本質と人間を描く。

 朝鮮戦争休戦8年後の61年に刊行された、韓国で初めて南北分断を描いた小説。韓国の高校の教科書でも出てくる名作。韓国社会では南北分断がどんなものだったのか、歴史に翻弄されて生きる市井の人たちの心の揺れや苦悩が伝わってきます。

『1945, 鉄原』
著:イ・ヒョン/訳:梁玉順/2420円(影書房)
日本からの「解放の日」である1945年8月15日。混乱の中、若者3人が38度線を越えてソウルへ向かう冒険的な行動に出る。彼らの人生は?

 韓国では青少年向けに書かれた小説ですが、世代を超えて読み応えあり。歴史のうねりの中、親の支配なども乗り越え、生き抜く姿が描かれています。辛辣な出来事も降りかかり、そこもまたリアル。3年後を描いた続編『あの夏のソウル』も。

『少年が来る』
著:ハン・ガン/訳:井手俊作/2750円(クオン)
韓国現代史上最大の悲劇といわれる民主化抗争から約35年。丹念な取材を元に死者と生き残った者の声にならない声を丁寧にすくいとった衝撃作。

 マン・ブッカー国際賞受賞作家の渾身作。自身が光州出身だったこともあり、いつかは書かねばならないと思うテーマだったそう。丁寧な取材を重ね、実在していたかのような登場人物のリアルさに、切なく苦しくなりますが、一人でも多くの人に読んでほしいです。

『目の眩んだ者たちの国家』
著:キム・エラン、パク・ミンギュ、ファン・ジョンウン、キム・ヨンスほか/訳:矢島暁子/2090円(新泉社)
セウォル号沈没事件を目の当たりにした韓国の作家、社会学者たちが文芸誌で自分の言葉で思いを語り、真摯に論じ合った。本書はそれをまとめた一冊。

 日本でも連日報道されたセウォル号事件は、韓国社会と国民の心に深い傷をもたらしました。普段は小説など作品で表現する作家たちですが、彼らが自分の言葉であの事件についてどう感じ、何を考えたかを率直に語っており、すごく考えさせられます。

■ 韓国文学の多彩さがわかる

『鯨』
著:チョン・ミョングァン/訳:斎藤真理子/2420円(晶文社)
特異な運命を歩んだ2組の母と娘の物語だが、一言では表しづらい、人間の欲望を壮大なスケールで描き出した一大叙事詩。骨太な小説。

 韓国で累計15万部のベストセラーになった作品で、周囲の韓国文学ファンも絶賛しているのがこちら。壮絶な人間ドラマと復讐劇はリアルで生々しく、映画でいうとキム・ギドク監督作品のよう。硬派な作品を好む人に特におすすめです。

『ピンポン』
著:パク・ミンギュ/訳:斎藤真理子/2420円(白水社)
いじめられっ子の男子中学生2人が、原っぱで卓球台を見つけてハマる。地球の運命を卓球で決めるという荒唐無稽な展開に2人は?

 あらすじを見てもその展開が予想できませんよね。ですが、彼独特の文体と、とにかく奇想天外のストーリー展開に驚かされ、そして楽しめます。面白く読み進める中に、韓国の現代社会が抱える問題も垣間見え、読み応えがあります。

『あやうく一生懸命生きるところだった』
著:ハ・ワン/訳:岡崎暢子 1595円(ダイヤモンド社)
40歳を目前に何の計画もなく会社を辞め、「一生懸命生きない」と決めた著者が、自分らしく生きるコツを紹介するエッセー。日本は10万部突破。

 努力してきたけど、やりきれなくなったイラストレーターが、「頑張らない人生」の実験生活をユニークなイラストと文章で綴っています。みんながもやもやと感じていることを言語化していて、読むとすっきりします。

『春の宵』
著:クォン・ヨソン/訳:橋本智保/1980円(書肆侃侃房)
苦悩や悲しみが癒やされるわけでもないのに酒を飲まずにいられない人々。春の宵のようにはかなく、切ないまでの愛と絶望を綴る七つの短編集。

 つらい時や悲しい時にお酒を飲まずにはいられない心境ってありますよね。短編に出てくる人物は、身近にいる人たちのようで共感できます。人生の悲哀があり、お酒のように、大人になるとわかる、味わい深い小説。

※価格は税込み

【書評家 倉本さおりさんが語るK−BOOKの魅力】

“K−BOOKブーム”の中心にいるのは70〜80年代生まれの女性作家たち。彼女たちの作品(『82年生まれ、キム・ジヨン』『アーモンド』など)には、ポップカルチャーに慣れ親しんできた世代ならではの軽やかさと、社会問題を「自分事」として捉え、弱者に寄り添い連帯を促すパワーがあるのが特徴です。日本と同様にジェンダー格差に苦しんできた背景があり、家父長制の在り方もよく似ている。日本人にも腑に落ちることが多く、勇気づけられる点も人気の理由の一つでしょう。

1979年生まれ。共同通信文芸時評をはじめ、新聞やラジオなどでさまざまな国の文学を紹介。

(文・構成/本誌・吉川明子)

※週刊朝日  2020年12月4日号

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