藤井聡太二冠が師弟対決で3連勝 上座を譲った師匠が語った「強さの秘密」

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2020年12月04日 11:15  AERA dot.

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写真藤井二冠と師匠の杉本八段(C)朝日新聞社
藤井二冠と師匠の杉本八段(C)朝日新聞社
 師弟ともに1回戦を執念で勝ち抜き、実現した3度目の師弟対決。勝負は藤井2冠の3連勝で終わったが、真剣勝負の師弟戦で垣間見えたのは師弟愛だった。

【写真】少年だった藤井二冠に将棋を教える杉本八段 

 大阪・関西将棋会館で12月3日、行われる第6期叡王戦の段位別予選八段戦に注目が集まった。藤井聡太二冠と杉本昌隆八段の3度目の師弟対決が実現する可能性があったからだ。夢の対決が実現するには条件があった。師匠と弟子がともに1回戦で勝利した場合のみ、両者が2回戦で対戦することになっている。1日2局のハードスケジュールだ。

 先に行われたのは師匠・杉本八段対畠山鎮八段の対局。終盤、AIの形成判断は90対10で畠山八段有利となるほど杉本八段は追い込まれた。攻め手も少ない中、驚異的な粘りを見せ、畠山八段の失着を誘う。たった1手で形成は逆転、AIは90対10で杉本八段有利となり、そのまま勝ち切った。あたかも師弟対決実現への執念が勝たせたかのような形となった。

 1回戦を終えた杉本八段は、こう語った。

「藤井と対戦できればそれは嬉しいですね。ただ、今年6月に竜王戦で指しているので、あまり意識はしてません」

 師匠の大逆転勝利に応えるように、藤井二冠もベテランの長沼洋八段との1回戦に勝利。3度目の師弟対決が実現した。対局後、藤井二冠は「朝の時点ではわからなかったんですけど、結果的に師匠と対戦できるというのは、うれしく思いますし、全力を尽くしたいと思います」と答えた。
 敗れた長沼八段も師弟対決を盛り上げるためか、「次の対局もあるからこの辺で」と言い、対局後に行う感想戦を早々に切り上げた。

 舞台は整った。藤井の勝利からわずか2時間後の7時から3度目の師弟対局が実現することになったのだ。

 2人の公式戦初対局は、師匠が七段、弟子が六段だった2018年3月の王将戦予選。杉本八段はこの対局を「勝っても負けても幸せに満たされる勝負」と言った。

「せっかくの師弟戦、私はできるだけ長い勝負に持ち込んで、一日ゆっくり味わいたいという気持ちがあった」という師匠の思惑通り、初対局は同一局面が4回現れる「千日手」となり、指し直しとなった。

 後日、弟子は「師匠の指し手から千日手にしたいという気持ちを感じた」と語ったという。盤上での無言のコミュニケーションが成立していたのだ。指し直しの対局は弟子が勝利し、師匠への恩返しを果たした一局となった。

 2度目の対局は今年の6月、竜王戦3組ランキング戦の決勝戦。師匠が八段、弟子が七段での対決だった。結果は弟子の2連勝。対局後、師匠は「竜王戦のランキング戦の決勝戦という非常に大きい舞台で対戦相手が藤井七段ということは、自分の中では最高の舞台でしたので、いい将棋を指したいな、というのがありました。負けて悔しいが、その代わり藤井の竜王戦での戦いという楽しみができた」と語った。

 そして師弟対局3局目は弟子が八段となって、八段同士の対局となった。そうなると、気になるのが、どちらが上座に座るのかだ。答えを出したのは師匠だった。多くの将棋記者が注目するなか、先に対局室に現れた杉本八段が下座に自分の荷物を置き、それを見た弟子が初めて師弟戦で上座に座った。2人はそれぞれこう話した。

「席次通り、当たり前のことなんで(笑い)。間違っても(藤井が)下座に座らないように早めに来て、荷物を置いて下座を確保してました」(杉本八段)

「どちらも空いていたら下座に座るつもりだったんですけど。ただ、先に荷物を置かれてしまったので。師匠の優しさを感じました」(藤井二冠)

 3度目の師弟戦は両者1分将棋の大激戦の中、弟子の73手目を見た師匠が「負けました」と一礼して投了。一気に相手を追い詰める好手を指した弟子が、師匠に3連勝した。

 師弟対決を制した弟子は、「序盤は機敏に動かれてうまく対応できなかった。自分にとってそこが課題かと思う。まだ先は長いが挑戦を目指して頑張っていきたい」と語った。

敗れた師匠は「今年はもう(師弟戦は)ないと思っていた。序盤は予定の作戦だった。(藤井二冠は)この半年でタイトルを二つ取っている。(対局して)成長を感じました」と話した。

 対局後のインタビューにそう答えた2人は、その直後から感想戦へ。言葉少なに、駒音を響かせながらいつまでも対局を振り返った。時折、笑顔を見せながら盤上で語り合い、「2人の世界」を堪能しているようだった。
 
 師匠は本誌のインタビューで藤井二冠の強さの秘密についてこう語っていた。

「藤井がやっていたことは非常に地味で非効率的で好まれない研究法です。それを楽しみながらしつこく考えていけるのが藤井の強さの秘密なんですね。藤井がそういう勉強法を採用していることを知って、同業者としてかなり衝撃を受けました」
(本誌 鈴木裕也)

※週刊朝日オンライン限定記事

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  • 【将棋】師匠の言う通りですね。�ŵ�それにしても、師匠の「詰めろ逃れの詰めろ」(70手め△4六角)を3手(▲7二銀成〜▲6四桂)で切り返すのだから凄い�ŵ�
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