往来する勝負の流れ。ランキング同点首位で帯を締め直す山本尚貴、無の境地の平川亮【第6戦鈴鹿】

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2020年12月07日 01:11  AUTOSPORT web

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スーパーフォーミュラ第6戦鈴鹿のスタートでひとつ順位を下げて4番手となった山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
スーパーフォーミュラ土曜日の第5戦を終えてランキングトップに立った山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が日曜日の第6戦でまさかのトラブルリタイヤに終わり、予選14番手の平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が7位に入賞して両者55ポイントの同点首位で最終戦を迎えることになったチャンピオン争い。山本と平川、それぞれに第6戦鈴鹿、そして最終戦について聞いた。

 前日の第5戦では圧倒的な速さでポール・トゥ・ウインを飾った山本だったが、日曜の第6戦では予選から前日のような速さを見せられず、4番手に終わってしまった。

「予選から流れが悪かったというわけではなくて、今日のコンディションに僕が合わせ切れなかった。逆にニック(キャシディ)選手とか大湯(都史樹)選手(TCS NAKAJIMA RACING)が今日のコンディションに合わせてきていたので、そこは素直に負けを認めざるを得ないですね。僕の力不足でした」と山本。

 前日とはコンディションが異なり、土曜に吹いていた風が日曜はぼぼ無風状態で、特にダウンフォース面で変化があったと考えられる。

 決勝ではエンジン交換のペナルティで予選3番手の笹原右京(TEAM MUGEN)がグリッドを下げたことで3番手グリッドとなった山本だったが、スタートで順位を下げてしまった。

「(シグナルを待つ間)ブレーキの熱が上がり過ぎて火が出ている状態で、それで気を取られてしまった部分がありますが、僕がうまくいかなかったというよりも、大湯選手と福住(仁嶺)選手がすごくいいスタートを決めていました。そこでひとつポジションを下げてしまいました」

 それでも前の3台に続いてチャンスをうかがっていた山本。しかし、セーフティカーラン中の5周目に突然スローダウン。そのままマシンをガレージ入れ、リタイアとなってしまった。

「クルマの調子はすごくよかった。あまり前に付きすぎるとタイヤの内圧が上がりすぎたりするので、余裕を保って距離を空けてチャンスだと思っていたんですけど、まさかトラブルが出るとは思っていませんでした」

「トラブルの原因はまだ分かっていませんが、1速からギヤが変わらなくなってしまいました。コクピットでできることはすべて試したんですけど、何をしてもギヤは変わりませんでした」

 大事なシーズン終盤の戦いのなかでのトラブルとあって、さすがに気落ちしているかとも思われたが、山本はポジティブシンキングですでに最終戦に向けて気持ちを切り替えていた。

「今回、大湯選手が勝って、福住選手もこれまで流れがよくないなかで2位に入ってくれて、彼らが上位に入ってくれたおかげでチャンピオンを争うライバルに大きな差を付けられることなく、平川(亮)選手と同ポイントで最終戦に行くことができた」

「レース中のトラブルは残念ですけど、これがレース。トラブル自体も久々ですが、ここ最近、僕はいい思いをしてきたので(苦笑)、ここで現実に引き戻されたというか『こういうこともあるよ』ということを教えてもらったので、最終戦に向けてもう一度気を引き締め直して、勝ってチャンピオンを決めたいです」

 一方の平川は前日、第5戦の予選ではギヤのトラブルで走れず、決勝ではマルチクラッシュで終えた最悪とも言える土曜を経て、日曜の第6戦では流れを引き戻しつつあるようだ。

 第6戦の予選ではクラッシュの影響でマシンのセットアップがまとまらないまま走行して14番手ながら、決勝で平川は7つポジションを上げて7位でチェッカー。貴重な4ポイントを稼いで山本尚貴と同ポイントのランキングトップに並んだ。

「右の鎖骨は思ったよりは痛くはないです(シーズン前に怪我した鎖骨を土曜のクラッシュで強打していた)。ちょっと腫れてはいますけど、走る分には全然問題ないです。予選に関しては昨日クラッシュして、チームは徹夜でマシンを修復してくれて感謝しているのですが、フロアなどいろいろパーツを変えたこともあって車高やダウンフォース面でセットアップが少しズレた感じでした。そこからアジャストしたんですけど全然、(上位勢の)1分34秒とかは見えない状態でした。Q2ではシケインの進入でブレーキングのフィーリングが違って手前で効き過ぎて、合わせ込めなかった自分が悪いのですが、右側の縁石に乗りすぎて『終わった』と思いました」

「午後のレースに向けても時間がなくて、クルマを修正しきれずにそのまま行ったのでキツかったです。スタートは前にストップしていた車両の位置がわかっていなかったこともあって大失敗しましたけど、1台しか抜かれなかった。OTS(オーバーテイクシステム)も早めに(レース前半)使ってしまったので、中盤以降、山下(健太)選手(KONDO RACING)を抜きたかったけど抜けませんでした。先週は燃料切れで、今週はOTSの弾切れでしたね(苦笑)」

 前後のドライバーはOTSが十分に残っている状態で、レース中盤以降はいつ抜かれてもおかしくなかったが、それでも平川は一度はシケインで山下健太をオーバーテイク。すぐに山下がOTSを使ってストレートで抜き返されはしたが、平川は7位の順位をキープして意地を見せた。

「やっぱりチームが徹夜してクルマをしっかり直してくれて感謝の気持ちがありましたからね。結果的にランキングも同点で最終戦に臨めるのでよかったです」

 そして最終戦、最大のライバルは今年何かと因縁深い山本尚貴。しかし、その最終戦に向けての抱負を訊ねても、平川からは景気のよいコメントを聞くことができなかった。

「先週のスーパーGTの出来事があってから、欲がなくなったというか。無欲になりました」

 言葉だけを見ると、まるでやる気が失せたかのようにも思えるが、決してそうではない。もともとクールなキャラで心のアツさを表に出さないことで知られる平川だが、今年のスーパーGT最終戦でガス欠したときのインパクトがあまりに大きかったようで、スーパーGTと同じ相手となる山本、そして場所も同じ富士となるスーパーフォーミュラ最終決戦に向けては、新たな境地に辿り着いてしまったようだ。

「何かそういう『無の境地』になったので、それで今日は流れも変わったのかもしれませんね。ホント、タラレバを言ったら全部のレースで優勝しているので、あまり欲張らず、スーパーGTの最終戦と同じ富士で戦えるので、しっかりと決着をつけたいなと思います。もちろん、今回の鈴鹿より富士の方が戦いやすいという手応えはあります」

 勝負ごとの何かに開眼したかのようにスーパーフォーミュラで初めてタイトル争いを迎える平川と、2013年、2018年のチャンピオン経験者として3度目のタイトルを狙って王道を行く山本。スーパーGTを含めたふたりの今季の流れは、スーパーフォーミュラという今季最後の終着点でどちらに傾くことになるのか。2020年を代表する国内最強のドライバーの座を懸けて、最終戦の富士が待ち遠しい。

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