新春ドラマを盛り上げるフジテレビとTBS 『逃げ恥』SPと『教場ll』への期待

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2021年01月02日 06:01  リアルサウンド

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『教場II』(c)フジテレビ

 2021年のお正月は、話題のスペシャルドラマが目白押し。TBSでは1月2日に、新垣結衣と星野源が主演を努めるスペシャルドラマ『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』が放送。一方、フジテレビでは、1月3、4日の2夜連続で木村拓哉主演のドラマ『教場ll』が放送される。


【写真】『教場II』木村拓哉と生徒役キャストたち


 『逃げるは恥だが役に立つ』(以下、『逃げ恥』)は、2016年に大ヒットした恋愛ドラマの続編。海野つなみの同名漫画を野木亜紀子の脚本でドラマ化した本作は、派遣切りに遭い家事代行サービスで働いていた20代後半の森山みくり(新垣結衣)とプロの独身を自認するIT企業で働く30代後半のサラリーマン・津崎平匡(星野源)が契約結婚をして同居生活を送るという恋愛ドラマだ。


 結婚を会社に、夫婦を雇用主と従業員の関係に見立てた二人の関係は斬新なもので、その都度、二人が契約関係を見直しながら理想の関係を紡いでいく姿は、新しい男女のあり方を描いたドラマとして大きな反響を呼んだ。


 また、当初はドライに見えた、みくりと平匡の距離が次第に縮まっていく姿は“ムズキュン”ラブコメとして反響を呼んだ。星野源が歌う主題歌「恋」が流れるエンドロールで出演者が踊る“恋ダンス”も話題となり、YouTubeやSNSを席巻。今も再放送の度に話題となる本作は、新垣結衣と星野源の新境地となったことはもちろんのこと、脚本家・野木亜紀子の作家性を広く知らしめた2010年代を代表する恋愛ドラマである。その続編がついに放送されるのだから、気にならないはずがない。


 物語は原作漫画の10〜11巻をベースにしたものとなる模様。共働きとなったみくりと平匡は家事の分担もうまくできるようになり幸せな日常を過ごしていたが、みくりが妊娠したことで、二人の関係は大きく変化していく。一方、みくりの伯母の百合ちゃん(石田ゆり子)も大きな転機を迎えようとしていた。果たして、みくりと平匡は出産という大きなプロジェクトを無事乗り越えることができるのか?


 一方、『教場ll』は警察学校を舞台にした長岡弘樹の同名小説の人気シリーズをドラマ化したもの。昨年(2020年)の1月にニ夜連続で放送され、大きな話題となった。白髪の教官・風間公親(木村拓哉)が、警察官を目指す学生たちに厳しい指導を施すことで一人前の警察官へと育て挙げる姿を描いたドラマだ。


 物語は一種の学園モノで、生徒一人一人が抱えている問題がオムニバス形式で描かれる。一癖も二癖もある生徒たちと、生徒以上に謎に満ちた風間教官がぶつかることで生まれる物語は、毎回意外な結末を向かえるため、ミステリードラマとしても楽しめる。


 見どころは木村拓哉の圧倒的な存在感だろう。近年の木村は役者としての試行錯誤を重ねており、年を取らない位(あるいはとれない)永遠のスター俳優から、年相応の老いを感じさせる実力派俳優へと脱却を図ろうとしていた。その一つの達成が『教場』の風間公親で、本作の木村は、クリント・イーストウッドや高倉健がかつて演じたような、古い時代の価値観を体現する、凄みのある寡黙な男を演じている。


 そんな強い大人の男として重厚な存在感を見せる木村と若手俳優が対峙する様子が本作の見どころだろう。前作では工藤阿須加、大島優子、富田望生、川口春奈、葵わかな、林遣都、井之脇海といった俳優が出演したが、今回は濱田岳、杉野遥亮、矢本悠馬、重岡大毅、上白石萌歌、福原遥といった俳優が出演。この豪華キャストは、お正月ならではのもので、新春大型時代劇の現在形とも言えるだろう。


 80年代以降、若者向けのドラマやバラエティを作ってきたフジテレビだが、近年は大人の視聴者をターゲットにした番組づくりへとシフトしている。


 かつて若者のカリスマで現在は大人の俳優に成長した木村拓哉が、これからの時代を生きる若者たちを教え導く姿を描いた『教場』はその象徴と言える作品で、だからこそ、正月の看板ドラマとして(おそらくこれから毎年)放送されるのだろう。


 対してTBSは、一見保守的に見えながらも時代の変化に適応し、その時代々々の最先端の問題を追い続けている。『逃げ恥』も、一見すると「同居モノのラブコメ」という恋愛ドラマの定番にみえるが、結婚、働き方、ジェンダー観にまつわる最新の問題意識が盛り込まれた作品で“古い器の中に新しい価値観を盛り込む”という絶妙なバランス感覚によって、時代を象徴するドラマとなった。


 その中心にいるのが、脚本の野木亜紀子と、主演の新垣結衣と星野源だ。中でも星野源は俳優、ミュージシャンとして常に新しい時代の価値観を引き受け、オピニオンリーダーとしてのメッセージを発し続けており、かつて木村拓哉の所属していたアイドルグループ・SMAPが体現していた時代を象徴する国民的スターとしての役割を、一人で背負っていると言える存在である。


 木村拓哉の『教場ll』と星野源の『逃げ恥』。この2作が何を見せてくれるのか、今から楽しみである。


(成馬零一)


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