本山と立川、ベテランふたりが“魅せた”2015年第3戦タイのドッグファイト【スーパーGT名レース集】

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2021年01月25日 18:11  AUTOSPORT web

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S Road MOLA GT-R(本山哲/柳田真孝)
日本でもっとも高い動員数を誇るスーパーGT。2019年にはDTMドイツ・ツーリングカー選手権との特別交流戦が行われ、2020年からはGT500クラスにDTMとの共通車両規則『Class1(クラス1)』が導入され、日本のみならず世界中でその人気は高まっている。そんなスーパーGTの全レースから選んだautosport web的ベストレースを不定期で紹介していく。

 連載5回目は2015年シーズンの第3戦タイ。本山哲、立川祐路が何度も順位を入れ替えるシーソーゲームを繰り広げた1戦だ。

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 スーパーGTのバトルは、もつれやすいことが特徴のひとつだ。走行中は常に他クラスのマシンをかき分ける(またはやり過ごす)必要があり、その瞬間はロスに繋がりやすい。

 そのためライバルに対して多少のリードを作れたとしても、思いもよらぬところで足止めを喰らい、それまでのマージンが消えてしまうことはよくある。一生懸命リードを作ってはそれがゼロになり、また作ってはゼロになると、やがてあせりも生じてミスも起きやすくなる。

 他クラスのマシンに遭遇しても極端にペースを大きく落とさない技術は、今でこそGTドライバーなら当たり前になってきてはいるが、かつてはそこで大きく差が出てきていた。

 たとえばGT500クラスで言えば、現役時代の本山哲、脇阪寿一、そして立川祐路といった面々は、ライバルがGT300のマシンを利用しようとするそのまた裏をかくなど、高度な駆け引きを得意としていた。

 とくに本山と立川は何度もやり合った仲で、古いファンにとっては2006年第5戦SUGOは印象に残っているはずだ。コース幅が狭く抜きにくいスポーツランドSUGOで、ふたりは40周近い攻防をみせた。また2013年の第5戦でも同じSUGOでサイド・バイ・サイドの死闘を演じている。

 ふたりのバトルでとくに圧巻だったのは、その2年後の第3戦タイだ。このときは永遠に続くのではないかと思わせるほど、2台は何度も順位を入れ替えるシーソーゲームを展開した。

 タイのコースレイアウトは、前半セクションはストレート主体だが、後半は低速テクニカルで、この後半区間でどうしてもGT300に詰まってしまう。

 そのため、前半で差がついても後半でリセットされ、前のマシンは逃げられない。同時に後ろのマシンは前車を抜けたとしても、今度は立場が逆になり、やっぱり逃げられない。だからバトルは延々と続く。

 このレースのポールポジションはZENT CERUMO RC Fで、S Road MOLA GT-Rが3番手。立川と本山はそれぞれスタートを担当。序盤は立川がリードを築くが、10周をすぎた頃から本山が背後に迫り、やがてふたりのドッグファイトが勃発する。

 25周目の最終コーナーで本山がインを差してトップに立つが、当然逃げられない。その4周後の同じ場所で、今度は立川が抜き返す。ZENT CERUMO RC Fの後ろ姿を見ながら、本山は「しぶといなあ」と思う。

 2台は相手の動きを読むと同時に、GT300のマシンの動きをも予測し、自分とライバルが交錯するタイミングを計りながら、高度な駆け引きを展開。

 両車のポテンシャルは、トータルでは互角だったが、ブレーキングはGT-Rに分があった。本山は立川のタイヤがきつそうなことはわかっていた。

 だが、本山のほうもエンジンがオーバーヒート気味で、長時間間隔を詰めることはできなかった。

 狙い目はハードブレーキが必要な3コーナー。33周目に仕掛けるが、失敗。その翌周にようやく立川攻略に成功する。その直後、立川はピットに向かったが、そのまま続けていたら、2台はその後も何度もポジションを入れ替えていたはずだ。

「クルマのバランスは、多少オーバーはあったけど良かった。立川はうまかったよ」

 そう語る本山は、この時の優勝で16勝目をマーク。立川とこの時点で最多勝記録トップタイに並んだ。

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