『ザ・ノンフィクション』プロ野球に固執する野球少年の両親「母さん、もう一度 闘うよ 〜高校中退…息子たちの再起〜

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2021年01月25日 23:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。1月24日は「母さん、もう一度 闘うよ 〜高校中退…息子たちの再起〜」というテーマで放送された。

あらすじ 

 2014年に創設された神奈川県大和市にある社会人硬式野球クラブチーム、BBCスカイホークス。甲子園常連の強豪校に入学したものの、いじめやトラブルなどで中退した人や、一度別の道に就職したものの野球への夢を諦めきれない人たちの受け皿となっている。

 BBCスカイホークスでは野球の練習だけでなく、大学進学を目指す人のため、勉強も教えるなど多様な支援を続けている。創設から7年でBBCスカイホークスは独立リーグや社会人クラブ、大学野球の強豪校に人材を輩出しているが、セ・パ12球団のいわゆる「プロ野球選手」となった人はまだいない。番組では、甲子園強豪校を中退し、BBCスカイホークスで未来を模索する2人の青年を取り上げる。

 1人目は恭平、18歳。真面目な性格で実直に野球にも取り組む。両親の決めた他県の野球強豪校に進学するも、高校で待っていたのは部内の陰湿ないじめだった。野球の練習すらさせてもらえない日々が続き、恭平は高校を退学する。

 恭平の父親は「いじめられても野球ができる環境なら(恭平は)野球を辞めなかったと思うんです」と、当時の悔しい思いを話す。恭平はプロ野球選手を目指し2019年に巨人の入団試験を受けたが不合格。スカイホークスで野球を続けながらプロへの道を模索し続ける。恭平と中学生の頃から交際を続けており、すでに働いている彼女の瑠奈も、「(恭平が)野球でお金を稼げなくても自分が支える覚悟はできている」と口にする。

 2人目は、群馬からスカイホークスに入団した成覇(じょうは)、17歳。甲子園常連の強豪校に進学し、2年生でレギュラーになりながらも、校内でトラブルを起こし、高校中退を余儀なくされた。成覇の両親は「こうなった原因は親の責任」「育て方間違えたのかな」と悔やむも「突き放すのは簡単。好きなことを失えばもっともっとドロップアウトしてしまう」と息子を支える。成覇の目標は、通信制で高卒資格を取り大学で野球を続けながらスポーツトレーナーを目指すこと。しかし勉強は大の苦手で、国語の長文問題を前に頭を抱える状況だ。

 それぞれの目標に向かって練習を続ける二人だったが、2020年の新型コロナウイルスにより激変した社会は二人の進路にも影響を及ぼす。緊急事態宣言によりチーム練習ができなくなるだけでなく、プロ野球においてはスカウト活動やプロテストも例年より規模が縮小されてしまう。大学への門も、例年各大学の硬式野球部が行うセレクション(野球推薦の実技試験)は軒並み中止となってしまった。

 恭平は自主練習を続けるものの調子が上がらず、結局、オリックス・バッファローズは書類落ち、巨人については監督からも望みは薄いといわれ、テストを受けず断念する。その後恭平は独立リーグ「神奈川フューチャードリームズ」へ入団。一方の成覇も無事大学進学を決める。

 番組では、二人のほかにも甲子園強豪校に進学し、その後自衛隊に入隊するものの、野球への夢を諦めきれずに、BBCスカイホークスに入った先輩が出てくる。入団後に修練を続けたが、プロには行けず22歳で就職を選び「卒業」していく姿が放送された。

 成覇は大学で野球を続けるのだろうが、将来の夢はスポーツトレーナーとのことで、「プロ野球選手」になるのは無理だという見通しがあるのだろう。この二人の進路を、プロ野球を目指す恭平はどう見ていたのだろう。

 プロ野球において、1チームに所属できる選手は各球団70名まで(1、2軍の合計)。そのほかが「育成選手」枠になり、育成選手の人数は各球団でまちまちだが、10人にも満たない球団もある。30代で活躍を続けるスター選手も多く、簡単には空かない。すさまじく狭い門だ。

 プロ野球選手の「進路」を追った毎年恒例の番組がある。年末に放送される『プロ野球戦力外通告』(TBS系)だ。プロ野球選手の夢を叶えたものの、ケガや、芽が出なかったなどの事情で球団をクビになった選手たちが、再起の試験=トライアウトにかける様子を追ったものだ。そこには、20代前半の若い選手も出てくる。

 トライアウトによって「再びプロから声がかかった」ケースは稀で、「声がかからなかった」「独立リーグに入ることになった」「海外の球団に行くことになった」というケースが多い。「独立リーグ」「海外」へ進路がつながった人も、いずれは「プロへ」と、決まったように同じ抱負を語る。

 『ザ・ノンフィクション』では、独立リーグの年収は100万と伝えられ、確かにこれでは食べていけない。だからとプロを目指しても、なれるかなどわからないし、プロになったところで、その後どうなるかわからないのだ。

 恭平自身が「プロ野球しかない!」というモードになってしまうのは、若いせいもありしょうがないかもしれない。しかし、恭平の両親も「プロ野球だ!」と一心になっていることが気がかりだ。進路は何も一つではない、と示すのも大人の役割ではないだろうか。

 野球に限らずスポーツをしてきた人を、“脳筋”といった言葉で小バカにする人もいる。しかし、スポーツでもなんでも一定の成果を上げた人というのは、「成果の出る努力の仕方」を知っている人であり、そのやり方は、ほかにも応用が利くのではないだろうか。

 恭平親子が「野球をもっと続けたい(続けてほしい)」ならいいが、「野球しかない」と思っているのなら、それは違うように思う。恭平はまだ18歳。その年なら、なれるものはまだいくらでもある。恭平がプロ野球にこだわり続けるのはもったいないことに思えた。

「やんちゃ」で言い換えて見落としてるもの

 また、番組を見ていて気になったのは、成覇がスカイホークスでチームメイトの携帯電話をレンジにかけ壊した、というエピソードだ。成覇にしてみたら、おそらく「絶対ウケる」と思っての行為だろうが、全く笑えないどころか不愉快だった。番組はこのエピソードを「やんちゃ」という言葉を使って伝えていたが、こういった被害者のいるまったく笑えない行動を「やんちゃ」という言葉で片づける風潮もよくない。

 こういった男子の行動を笑う人というのは、その行動が面白いからではなく、その男子の権力に忖度していたり、「わかってないやつ」扱いされることを恐れていたり、もしくは「そういう悪いことを笑える自分は世間のルールにとらわれてなくてカッコイイ」と自分に酔った振る舞いとして笑っているだけのように思う。

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