M1とGIGAが大きく反応したMacとiPad - Apple決算を読む(2)

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2021年02月17日 08:11  マイナビニュース

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2021年第1四半期決算で、四半期決算としては初めて売上高は1000億ドルを突破し、1114億3900万ドル(約11兆7330億円)を記録したApple。すべてのカテゴリーが2桁成長を遂げるなか、驚くべき成長を見せているのがMacとiPadだ。

Macの売り上げは86億7500万ドル(約9134億円)で前年同期比21.2%増、iPadは84億3500万ドル(約8881億円)で41.1%増となった。いずれも、世界中のすべての地域で販売が増加しており、しかも半数が新規ユーザーであるといい、新しい顧客の開拓が進んでいるなかでの成長であることが分かる。

残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないなか、オンライン授業やリモートワークなどのトレンドが世界中で継続している。MacやiPadは、PC市場の成長速度を大きく上回るペースで成長を続けているが、その理由について特徴的なパターンを見ていこう。

M1でMac回帰へと振り向かせた

2010年代のAppleは、iPhoneとiPad、すなわちApple Siliconを搭載するデバイスを核に成長してきた。特にiPadは、10〜13インチの大きなタッチディスプレイを持ち、Apple Pencilによるペン入力をサポート。さらに、上位モデルのAシリーズチップを搭載したProモデルは、4K動画をすいすい編集できるほどパワフルで、ファン非搭載のため音も静か。Macで作業するよりも快適になっていた。

裏を返すと、より汎用的でパワフルなはずのMacが、iPadに「パワフルさ」でお株を奪われている状態が続いていたことを表すエピソードでもある。もちろん、iMacやMac Proといったデスクトップを選べば、iPadよりも大きな画面と速い処理速度が手に入るが、どこへでも持ち運べるデバイスで比べると、iPadのコスト対パフォーマンス比はきわめて高かったのだ。

しかし、M1搭載のMacBook Air、MacBook Pro、Mac miniが登場した2020年11月、その前提が崩れた。いずれもエントリーモデルという位置づけながら、モバイルの最上位モデルである16インチMacBook Proや、場合によってはMac Proのベースモデルのベンチマークスコアに届くほどの処理性能を誇る。それでいて、MacBook Airは999ドル(日本では税別104,800円から)に設定されるなど、価格は据え置かれ、ただただパフォーマンスだけが大幅に向上した。

2020年6月、AppleはApple Siliconへの2年間での移行を発表し、11月にその第1弾を発表した。今後、ミドルレンジ、ハイエンドのMacもApple Siliconへと置き換えられていくため、それらのモデルを使いたいユーザーは待つかに思われたが、圧倒的な処理性能の高さゆえ、M1 Macに食指が動いたプロユーザーも多かったのではないだろうか。
iPadは日本で過去最高に

M1 Macは処理性能でiPadを上回っただけでなく、バッテリー持続時間でもiPadを大きく凌駕する存在となった点は、意外な事実となった。しかし、そんなMacよりも力強く成長しているのがiPadだ。実際、iPadは前年同期比41.1%増を記録しており、Mac以上の成長を遂げている。

Appleは、M1 Macの登場よりも2カ月前にA12 Bionicに切り替え、エントリーモデルとして初めて機械学習処理コアを搭載した第8世代iPad、そしてA14 Bionicを搭載する新デザインのiPad Airを発表した。特に、iPad Airの需要は非常に強いものになっているという。

決算発表の電話会議のなかで、iPadは日本市場で過去最高の販売を記録したことが採り上げられた。その理由は、現在日本で前倒しで進行している「GIGAスクール構想」だ。日本の公立小中学校では、1人1台のデバイスとネット・クラウド環境を整備するGIGAスクール構想が進行中だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、端末の調達を前倒しして進められており、iPadを1人1台のデバイスとして選ぶ自治体が増えていることが背景にある。

競合はChromebookやWindows PCなどがあるが、いくつかの自治体や学校を取材するなかで、先行してデバイス導入の試験を行ってきた自治体ほど、iPadを選んでいる傾向があるのも印象的だ。デバイスの管理の手間と、教員や生徒が使いこなせるようになるまでの学習コストがきわめて低く、カメラやペン、アプリの充実などで、「教員がやりたいことを実現しやすい」点が評価を集めている。

震災に見舞われた熊本市がセルラーモデルのiPadを採用した点も注目を集めている。学校へのネットワーク設備のコストをセルラーモデルの通信費に充てた方が、災害時などでも“学びを止めない”効果が高いと評価されたのだ。大阪府枚方市や神奈川県鎌倉市も、セルラーモデルのiPadの導入を進めている。

今後の棲み分けに注目

過去に、iPadがコンピューティングの未来であるというコマーシャルも制作したこともあるApple。MacがIntelチップを採用していたころは、確かにWindows PCと差別化できず、割高感のみがフォーカスされがちで、競合が次々に撤退していったタブレット市場の旗振り役としてのiPadの優位性をアピールしていたことも理解できる。

しかし、M1チップを搭載するMacが登場し、処理性能、バッテリー持続時間、結果としてコストパフォーマンスが高い、というメリットが大きくなってきた。またiPhone・iPadアプリがそのまま動作し、iPadとMacのアプリを同時開発できる環境も整えてきたことで、今後より多くのアプリがMac向けに配信されることになるだろう。

Appleは、以前から「iPadとMacの融合はない」と語ってきた。この言葉がまだ有効であるならば、iPadの良さを取り入れて更に上回る存在となったMacとiPadを、どのように棲み分けしていくのか。すでに、教育市場とそれ以外という棲み分けはできつつあるが、今後のAppleの2カテゴリーの展開に注目している。(続く)

著者 : 松村太郎 まつむらたろう 1980年生まれのジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。Twitterアカウントは「@taromatsumura」。 この著者の記事一覧はこちら(松村太郎)
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