働きながら休暇をとるってどういうこと? いきなり出てきた流行語「ワーケーション」とは一体何か

37

2021年03月03日 20:48  ねとらぼ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ねとらぼ

写真いきなり出てきたように思える言葉「ワーケーション」とは……?
いきなり出てきたように思える言葉「ワーケーション」とは……?

 密にならない感染予防策として、政府は「在宅勤務を取り入れよう」「時差通勤しよう」「通勤を7割減らそう」と呼びかけています。



【画像】JRや帝国ホテルなど、各企業が提供し始めた「ワーケーション」サービス



 仕事には店舗のように「拠点を構えてお客さまを待つ仕事」や、工場のように「大型設備、高額な設備をみんなで操作する仕事」もあります。これらの仕事を考慮すると「通勤を7割減らそう」は、実質的に「事務仕事は通勤なし」が理想なのかもしれません。



 在宅勤務と大きくひとまとめにして言われますが、通勤しないなら在宅である必要はありません。いっそ環境が良いリゾート地で働いてしまうスタイル「ワーケーション」が2020年の流行語大賞にノミネートされ、注目されてきているようです。



 「ワーケーション」って一体何なのでしょう。よく一緒に出てくる「リモートワーク/テレワーク」との違いは? 事情や歴史を整理しながら解説していきます。



●「ワーケーション」って何? ワーケーションは「遊び方改革」と考えてみると理解が進む



 「ワーケーション」って何なのでしょう。ワーケーションは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語です。2020年の新語・流行語大賞に「テレワーク」とともにノミネートされました。



 「また変なカタカナ言葉がでてきたぞ」と思ったかもしれません。「働くか遊ぶかどっちなんだハッキリしろ」と思ったかもしれません。ざっとスッキリ、ハッキリさせましょう。ワーケーションのキホンは「遊び」と考えてみましょう。悲しいかな、日本のビジネスパーソンは仕事を携えないと安心して遊べないことにも由来します。



 日本のメディアの初出は6年前でした。2015年のニューズウィーク日本語版「リゾート地で仕事する"ワーケーション"の実力」という記事。インターネットやノートPC、タブレットなどが普及したため、家族とともにリゾートに滞在し、仕事も持ち込むというスタイルが生まれたそうです。



 ワーケーションの発祥は米国です。また、EU圏では長期休暇を法的に義務付ける国もあり、違反した企業は罰金が科せられます。働く側にとっても家族や休みは大切だけれど、重責を果たさなくてはいけない。そんなビジネスパーソンにとって、ワーケーションは受け入れやすかったことでしょう。



 日本では2016年に兵庫県の南あわじ市でワーケーション活用を見越した会員制施設が誕生し、2017年には和歌山県が観光地のワーケーションPR予算を計上しました。IT大手の日本マイクロソフトが2016年にワーケーションを導入。航空大手の日本航空も2017年に制度として導入しました。



 リモート会議システムによって、どこにいても、長期休暇中であっても会議に参加できます。会議があるせいで休暇の日程変更をしなくて済みます。休暇期間中に会社が協賛する地域イベントにも参加できます。業務した時間に応じて給与が支払われます。日本航空は2019年5月、出張先で休暇を取れる「ブリージャー(ビジネス+レジャーを組み合わせた造語)」制度も導入しています。



 そんな企業のワーケーション制度化を見越して、2019年11月に「ワーケーション自治体協議会(WA)」が設立されました。発足時は65の自治体、2021年2月現在は1道20県149市町村の170自治体が参加しています。このあたりから日本でも「ワーケーション」という言葉の認知度が高まってきたようです。



 JR東日本はグループ会社が展開する「ガーラ湯沢スキー場」にSTATION WORKを導入しました。千葉県のいすみ鉄道は、列車と駅にWi-Fi通信環境を整備して1日乗り放題の「ワッペン・ワーケーション列車」を走らせています。長野県のしなの鉄道も観光列車「ろくもん」を使った「トレインワーケーション」を提案しています。



 また、ワーケーション実践に向けた料金プランや設備も昨今、リゾートホテルなど全国の宿泊施設で登場しています。月単位の長期滞在を前提とした割引プランもあります。帝国ホテルやホテルニューオータニなどの都市型ホテルもワーケーションの広がりに向けたサービスを始めています。



 そう、どのプランを見てもちょっと楽しそうです。その反面「こんな環境で仕事をできるかな。気が散りそう。遊びたくてソワソワしそう」と思います。「めんどくさそう。何もわざわざ……」と思った人もいることでしょう。



 よほど仕事に集中できる人でないとワーケーションは難しいのでしょうか。仕事も遊びも中途半端になってしまうのでしょうか。いえ、そんなことはありません。「遊んでいい」と思います。企業のワーケーション制度も「勤務制度」というよりは、まだ「福利厚生」の意味合いが強いように見えます。



●テレワークは「働き方」改革、会社以外でもあたり前に働ける場所・選択肢が増えた



 では、流行語大賞で一緒にノミネートされた「テレワーク」とは何でしょう。テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと(日本テレワーク協会より)です。在宅勤務やモバイルワークといった言葉もこれに含みます。



 在宅勤務を取り入れようと呼び掛けられていますが、私のようなフリーランスライターはもともと在宅勤務ですから、通勤しません。だからコロナ禍においても生活スタイルはほとんど変わりませんでした。でもテレワークの普及により、ちょっとだけ恩恵を受けています。



 まず、街に個人で利用できるコワーキングスペースが増えました。専門店のほか、Wi-Fi通信環境などを備えてビジネスユースに対応したカラオケ店、座席に電源コンセントを設置したファミリーレストランや喫茶店などの店舗が増えました。複数の打ち合わせのために外出して、次のアポイントメントまで時間が空いたときに、これらの場所で仕事を進められます。



 もっとも、私は以前から都心でも旅先でもネットカフェを利用していました。料金も時間単位なので、喫茶店で粘るときのように気を使わなくて済みます。フリードリンク制ですし、気分転換にマンガも読めます。もちろんWi-Fi対応で仕事もできます。



 鉄道観点では、JR東日本の駅ナカシェア個室サービス「STATION WORK」を主要駅でよく見かけるようになりました。同じIDで駅周辺ホテル(ホテルメッツやプリンスホテルなど)の部屋を利用できるデイユース型も登場し、2021年3月までに100箇所、2023年度に1000箇所規模まで拡大する計画です。



 同様の駅ナカワークスペースは東京メトロも富士ゼロックスの「CocoDesk」と連携して拡充しています。駅は移動の拠点で、「カラオケボックスやネットカフェじゃ経費精算できない/しにくい」こともありますから、リモートワーカーには利用しやすくうれしいでしょうね。



 また、いざ在宅勤務してみると「家には、仕事に集中できる場所がない」ことに気が付いて困った人も多かったはずです。そこで急拡大しているビジネス形態がシェアオフィス/レンタルオフィス。会社が契約し、社員が利用できるようにします。法人契約が必要な事業者が多いようで、私には利用機会がありません。しかし、リモートワーカーがシェアオフィスを使ってくれると、私が愛用するネットカフェが満室になりにくい。間接的に助かります。サービスの選択肢は多いほど良いですね。



●「L休暇」 残念ながら浸透しなかった平成の死語に学ぶ



 戦後から高度経済成長を経て「日本人は勤勉」と評価されていました。その一方で、健康な生活を送るために適度な休暇が必要という考え方もありました。そこで、1987年に総合保養地域整備法が制定されました。



 バブル景気の元、日本にも南欧のような滞在型リゾートを作ろうという機運が高まっていました。しかし実際には、同法の下、国有林や保有林の規制が緩和され、スキー場やゴルフ場が乱開発されてしまい、バブル景気がはじけたあとは残骸が散らばる結果に終わりました。



 1999年、日本がバブル経済からようやく脱却しつつあったころ、政府は「経済新生対策」を打ち出しました。ベンチャー企業支援、中小企業支援、少子高齢化対策、金融市場活性化、不動産の証券化、情報ネットワーク社会推進などのため、予算総額18兆円規模の事業を実施します。この中で「ゆとりある勤労者生活の実現、家庭と地域の連携強化等により少子・高齢化社会に適切に対応するため、長期休暇制度の早期実現」が盛り込まれました。



 この政策を受けて、2000年に労働省(現・厚生労働省)が提唱した言葉が「L休暇」です。



 L休暇は「働く人が活力をもって生き生きと働くためにも、しっかりと休み、働き方や家族・地域社会との関係を含めて生き方を考える契機にする」という意義でした。L休暇の「L」は「生き方(Life)を考える契機となるような長期(Long)の休暇」の意味がありました。何だか国鉄時代の「L特急」みたいな名付けですね。ちなみにL特急の「L」は「Limited、Liner、Lucky、Little」の意味を込めていました。



 この施策により完全週休二日や有給休暇制度の整備が進みました。しかし、休暇の取得については欧米のような強制力のある法律がなかったため「有給休暇の取得も当然、あたり前になる」までは進みませんでした。2021年現在も「有給休暇は取りづらい」という声や意識があり、男性の育児休暇なども「制度はあっても実行が伴わない」のが現状です。



 「L休暇」は掛け声だけで終わり、言葉は浸透しませんでした。鉄道用語に例えれば「L特急」のように流行らせようと思ったら「E電」のように沈没してしまいました。



●「ワーケーション」は、つまり何なのか? L休暇の失敗に学ぶ長期休暇と「遊び方」



 日本の労働者が長期休暇に消極的な理由は、有給休暇取得について「(企業側に)法的な罰則がなかった」ことです。もう1つは、労働者側が責任感や人手不足など周囲の状況に「遠慮しがち」なことです。



 しかし、2019年4月からは罰則規定が設けられました。企業は年5日の有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金となります。これで法律面は解決。あとは労働者個々の「働き方」の意識変化です。



 「仕事を抱えて休めないのに休まなくてはいけない。会社からは『規定の5日間は休め』と命令される。上は現場の実態を分かっているのか」などとネガティブに考える人、多いです。



 そんなときに便利な、ポジティブに考えられるようになるシステム、それが「ワーケーション」です。



 有給休暇を取ってリゾートへ行こう。遊ぼう。でも、リモート環境でメールチェックはしたい。遊んでいるうちにアイデアがひらめいたら企画書や共有したい。仕事仲間と連絡を取れるようにしたい。定例会議には参加したい。そのための設備や手段があたり前にあればOK、というわけです。



 「ワーケーションだから9時から17時まで働きますけど、ランチや余暇はリゾートを楽しみます」「ワーケーションだから仕事のペースはゆっくりです」「ワーケーションだから自分のペースで作業します」「ワーケーションだから気が向いたら連絡します」など、さまざまな形のワーケーションがあると思います。



 仕事とは本来はそういうものかもしれません。また、「何かあっても大丈夫な状態でリゾートに行く」は、日本のビジネスパーソンにとっては、もっとも長期休暇に馴染みやすいか形かもしれません。



 企業側にも、ワーケーションの捉えかたが定まっていないことは課題です。日本航空のようにワーケーションを就業中と見なす形がベストです。しかし「会社としては有給休暇扱い、労働者側は仕事の責任を果たせる休暇」という形が増えそうな気がします。それでも、自主的な有給休暇取得が進めば良しとして、将来は誰もが「ワーケーション」ではなく「バケーション」を満喫できるようになればいいと思います。



(杉山淳一/乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒、信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。JR路線の完乗率は100%、日本鉄道全路線の完乗率は2020年10月時点で99.69%)


このニュースに関するつぶやき

  • 休暇とは仕事のことを忘れて休むこと。
    • イイネ!1
    • コメント 0件
  • 昼間に仕事をするのなら、たとえリゾートに行こうと、昼間には遊べないって思うんだけどね。
    • イイネ!13
    • コメント 3件

つぶやき一覧へ(29件)

前日のランキングへ

ニュース設定