市川紗椰が人生で最初にハマったアニメ、ビートルズの『Yellow Submarine』の魅力

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2021年03月05日 06:31  週プレNEWS

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写真『Yellow Submarine』グッズを無理やり持って必死に自撮り
『Yellow Submarine』グッズを無理やり持って必死に自撮り

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は人生で最初にハマったアニメについて語る。

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人生で最初にハマったアニメは、『うる星やつら』でも『機動戦士ガンダム』でもなく、ビートルズの『Yellow Submarine』でした。物心がついたときから何度も見返していて、小学生の頃のお泊まり会では必ずレーザーディスクを友達に強制的に見せていました。たまに怖くて逃げ出す子もいたけど、その場合は次の日、みそぎの気持ちでひとりで2回見ました。

1968年に公開された同作品は、ビートルズ初のアニメ映画。ミュージカルのような、SFのような、風刺のような、PV集のような、ひとつのジャンルに分類することができない作品です。

美術監督のハインツ・エデルマンの画期的なヴィジョンにより、ビートルズの音楽とポップアートやシュールレアリスムを融合させ、知覚を焦らすサイケデリックで実験的な体験を生み出しました。

音楽、アニメ、美術、メカなど、今でも好きなものが詰まっており、私の原点ともいえます。モゴモゴと話したり、クズ人間を面白がってしまうのも、この映画の影響かもしれません。

ストーリーはシンプル。音楽を愛する国ペパーランドが、愛と平和を嫌うブルーミーニーズに攻撃され、ビートルズに助けを求める。メンバーは曲のタイトルのごとく、黄色い潜水艦(見た目は先の大戦の象徴であったUボート)に乗り、さまざまな次元や銀河を巡りながら救いに行きます。

ストーリーの起伏は少ないけど、曲と映像と先の読めないトンデモ展開のおかげで暇な時間はなく、常に「なぬ!?」と目を丸くします。

曲もストーリーと関係があるようなないような構成で、穴ぼこだらけの世界(『Fixing a Hole』が流れます)や、急に年を取ってしまう次元に迷い込んだり(『When I'm  Sixty−Four』のMV的な要素あり)する程度ですが、ペパーランドに到着してからは曲もストーリー的に重要な要素になります。

キャラクターも味があります。メンバーは終始クールで危機感ゼロ。ウイットに富んだドライな会話劇の中身は薄いけど、テンポ感が妙に落ち着きます。クレイジーな場面でも平静に淡々と反応するのが面白く、メンバーの緩さと悪ノリが不思議とチャーミングです。

ただ、途中で出会う象みたいな生き物やノーウェアマンへの対応が最低すぎて、子供ながらに「LOVEのメッセージどこいった?」とツッコミました。ちなみにビートルズ本人たちは最後実写で出てくるだけで、アニメの声は声優が当てています。全員やりすぎなリヴァプールなまりですが、若干クセや個性が反映されています。

一番印象的なキャラは、悪役ブルーミーニーズです。特にリーダーはトラウマもので、聞き取れないほど小さな声でささやいた次の瞬間、ヒステリックに叫びだす不安定さが怖くてしょうがなかったです。

背景を食べたり、画面に向かって怒鳴ったり、アニメの世界から飛び出してきそうなメタ演出には震えました。暴力行為を真顔で実行する軍隊もとても不気味。今見るとヴィジュアルのクリエティブさに目がいきますが、当時はただただ恐怖でした。

大人はもちろん、今の世代の子供にも見てほしいです。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。愛知県名古屋市出身、米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。声優さんも、ジョージ役の人が軍規違反で逮捕されて後半はリンゴと同じ人になったり、事情が複雑で覚えきれない。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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