法曹の名門・中大に熱いエール 応援団出身・櫻井俊宏、卒業後は学内弁護士に「マジメで愚直に」

1

2021年03月06日 09:51  弁護士ドットコム

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

弁護士ドットコム

記事画像

中央大学応援団出身という異色の経歴を持つのが、櫻井俊宏弁護士だ。学生時代はスポーツ強豪校を陰から支え、現在は地域に根ざして、身近な悩みの解決に奔走している。


【関連記事:お通し代「キャベツ1皿」3000円に驚き・・・お店に「説明義務」はないの?】



「ラーメン弁護士」としても知られ、ブログやInstagramで、裁判所の近くなどで食べ歩いたラーメン店を紹介する。YouTubeでは、法律解説や箱根駅伝に出場した母校を応援する。



愛校心から、中央大学の組織内弁護士もつとめるなど、多彩な活躍ぶりだ。「依頼者の方が心が折れそうになっても、励ますことが多いですね」という櫻井弁護士。



その根底には、応援団で培った「エールの精神」があった。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)



●偶然声をかけられ、応援団へ

名門・中央大学法学部に入学したのは、刑事ドラマや小説好きで、「弁護士に憧れたから」という。入学直後に応援団に入部したことで、人生が大きく変わっていく。



「サークル勧誘をいろいろと見て歩いていたら、たまたま応援団の先輩に声をかけられました。『ここでしかできないことをやってみるのも面白いかな?』と思ったのがきっかけですね」



当時、受験勉強を通じて、「自分には精神力が足りていない」と感じていた。「司法試験の勉強にも耐えうる強さを鍛えよう」と思って、入団を決めたという。



中央大学といえば、学生スポーツが強いことでも知られる。春は硬式野球部やボート部、相撲部、夏から秋にかけても硬式野球部や箱根駅伝予選会、冬はスケート部や箱根駅伝。応援団は1年を通じて、その応援に明け暮れるのだ。



「応援団は、南平寮(東京都日野市)という体育会の部員が住む学生寮に住むのですが、朝6時に起きて掃除をして、昼休みや放課後も練習です。土日も実際に試合の応援にいくことが多かったので、ほとんどプライベートな時間はありませんでした」



途中でやめたいと思ったことはないのだろうか。



「まったくなかったですね。精神力が足りないと言いながらも、やめるという発想はもたない性格でしたので、最初から最後までやるのは当然という感覚がありました」



●「卒業後も中央大学に関わりたい」

厳しいながらも充実した応援団の活動だったが、学業には少しばかり影響があった。



「授業にはほとんど出られなかったです。大学4年間のうち前半の3年間は、司法試験のことも完全に頭から飛んじゃって、応援団活動ばっかりやっていました」と笑う。



「ただ、応援団を3年間やってくると、母校愛が強くなるわけです。毎日、校歌を歌っていますから(笑)。それで、就職を考えたとき、中央大学のOBとして、母校と関わることができる仕事として、やはり弁護士は持ってこいかなと思いました。司法試験はちょっときついけど、なんとかやってみようと」



応援団を引退後に勉強を始めたものの、何から手をつけてよいかわからない状態だった。大学卒業後、2005年に法科大学院に入学して、本格的な受験勉強がスタートした。



「最初の1、2年は、旧司法試験を受けていたのですが、相当酷い成績でした。それでも、弁護士を目指していた友人を探し当てて、いろいろと教えてもらってありがたかったです。



法律っていうのはこういうものだとか、受験テクニックってこういうものだとか。それで、手応えを得られて、旧試験の短答式試験は3回目で受かりました。



短答に受かると、中央大学の司法試験受験団体、法職講座の受験団体に入れるようになります。そこからはだいぶ楽になりました。まわりに勉強仲間ができたり、講座を教わったりできました」



持ち前の粘り強さを発揮して、2007年、司法試験に合格。弁護士としてのスタートを切った。



●青梅に事務所を開設した理由

新宿にあった法律事務所などを経て、2012年に吉祥寺で独立した。その後、組織を一新して2015年、現在の「弁護士法人アズバーズ 」を開設した。そこで、気づいたことがあったという。



「吉祥寺のときは、ネット経由でホームページからの相談を受けることがそこそこあったのですが、新宿に移ったら、ほぼ『ゼロ』になってしまって…。



吉祥寺と新宿は、JRで20分もかからない距離なのですが、それほど差があるのだったら、もっと東京の西部に目を向けたら、仕事が増えるのではと考えて、自分なりにリサーチをしてみました」



そうして浮かんだのは青梅市だった。青梅市は東京都の北西部に位置する大きな自治体だが、南北と西は丘陵に囲まれており、都心に出ることが必然的に多くなる。しかし、都心まではJR青梅線に乗り、途中でJR中央線へ乗り換えが必要となり、やや不便でもあった。



「青梅市の場合、弁護士に相談したくても、地元に事務所がなくて、困っている方も結構多いのかなと思いました。



実際、青梅市の人口は13万人ですが、当時は弁護士が4人程度しかいません。吉祥寺がある武蔵野市が人口14万人なのに対して、弁護士が80人はいましたから、弁護士1人当たりの人口にもずいぶんと差がありました。



青梅市は東京都ですから、所属する弁護士会を変更する必要もありません」



目論見は当たった。2018年、「青梅事務所」を開設すると、吉祥寺に事務所があったときよりも、相談が舞い込んだ。



●その名も「パイロットファームプロジェクト」

青梅事務所では、どのような相談が多かったのだろうか。



「うちが得意とするような交通事故や、男女問題、離婚とかでですね。ホームページからのお問い合わせが殺到しました。初期費用が無料というプランも効果があったようで、とても感謝されました。



競争相手が少ないということは、仕事がやりやすいです。都心では弁護士も飽和状態で、ゼロサムゲームになってしまいますから」



櫻井弁護士はこの試みを、「パイロットファームプロジェクト」と名付け、次のステップへと進めた。2020年、埼玉県三郷市への進出だ。



「うちの事務所に所属している津城耕右弁護士が埼玉県出身で、次は埼玉でやりたいと乗り気でした。そこで、埼玉県内をいろいろとリサーチしたところ、高速道路が通り、つくばエクスプレスの駅もあって、交通の便は良い割には弁護士が少ない三郷市に着目しました」



当時、三郷市では13万人の人口に対して、弁護士は4人だったという。櫻井弁護士は「飛んで埼玉大作戦」と名付け、三郷市内に事務所を開設した。こちらも狙いどおり、ネット経由での相談が数多く寄せられているという。



●中央大学のインハウスロイヤーとして

現在は新宿・青梅・三郷の三カ所で事務所を展開、軌道に乗せた櫻井弁護士だが、もう一つの「顔」がある。2013年から、夢でもあった中央大学のインハウスロイヤー(組織内弁護士)に就任したのだ。



「これには、応援団のつながりがありました。応援団部長だった教授が、その当時副学長で、『新たに中央大学でもインハウスロイヤーを設置するので、面接を受けてみては?』と声をかけてくれました。



独立したばかりだったので、常勤では難しかったのでが、週2〜3日で構わないという条件だったので、チャレンジしてみました。採用していただいて、今年でもう8年目になりましたね」



大学のインハウスロイヤーはどのような仕事なのだろうか。



「企業法務と共通するのは、労働とか外部との契約でしょうか。特に個性的なのは、論文の著作権や大学が出す商品の商標などの知的財産です。あとは、スクールロイヤーのように、学生が問題を起こしたときや、学生の親からのクレームにどう対応するかなどの相談を受けています」



ほかにも、2014年に中央大学応援団の助監督という大任も引き受けることに。現役学生の活動を指導したり、箱根駅伝などのイベントの際には駆けつけて応援をしている。自身が現役のころと、今の学生では変わらないところも多いという。



「真面目で、愚直ですよね。でも、それが信頼につながるのだと思います」



櫻井弁護士の仕事にも、それは脈々と受け継がれている。





●信頼される弁護士に

「みんなの応援団」を自認する櫻井弁護士だが、忘れられない事件がある。弁護士になって2年目、同業者である弁護士に対して「強制執行」をしたことがあった。



「その弁護士は、バブル時代に儲けていた人のようでした。しかし、バブル経済が崩壊してしまって、購入の契約手続きを終えた不動産の手付金800万円を払っていなかったんです。



私の依頼者は、この弁護士に不動産を売った人でした。そこで、その弁護士に対して強制執行していくことになり、財産開示までやりました。これは、強制執行の一つの手続きなのですが、結構レアケースで東京地裁でも1年に300件くらいしかないようなものです。



結局、財産開示をしたところ、たまたまその弁護士の通帳に着手金が入っていたのでしょうね。100万円ほどを差し押さえることができました。そうしたら、今度は弁護士が法人化して差し押さえを免れようとしました。



これはチャンスだと思って、こちらはさらに弁護士の給与を差し押さえました。最後には、その弁護士は破産してしまいましたね」



財産開示の手続において、開き直ったようなその弁護士の態度に、櫻井弁護士は驚いたという。



「弁護士は法に従って真面目に仕事をするのが当たり前と思っていたのですが、こんな弁護士がいるのかと。許せないと思いました。



実際、成年後見人を受けて、他人の財産を横領する弁護士も少なくありません。自分も弁護士として仕事をしながら徐々にわかってきたのですが、そういう不誠実な弁護士も残念ながらいます。



だからこそ、弁護士が責任を持って信頼されるような仕事をしようと思いました。本当に困っている人たちを応援していきたいです」



目指しているのは、今もこれからも、「みんなの応援団」だ。



【櫻井俊宏弁護士略歴】
「弁護士法人アズバーズ」の代表弁護士。1997年、中央大学法学部法律学科に入学。応援団として活動。卒業後は2005年4月に中央大学法科大学院入学。2007年3月、中央大学法科大学院卒業後、2007年9月に司法試験合格。弁護士法人グリーン・ファーム法律事務所を経て独立、2012年3月、東京・吉祥寺で「As birds総合法律事務所」を開設。2015年1月には、東京・新宿で弁護士法人アズバーズを開設、その後、青梅市や埼玉県三郷市にも事務所を開設した。また、2013年5月に中央大学法実務カウンセル(インハウスロイヤー)に就任。2014年4月には中央大学応援団助監督にも就任し、学生の指導なども行なっている。趣味はラーメンの食べ歩きで、ブログやInstagramでは「ラーメン弁護士」としても知られる。


このニュースに関するつぶやき

  • 日本も弁護士余り始めたのかもなw
    • イイネ!2
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

前日のランキングへ

ニュース設定