BMWの契約解除その後、活動終了を発表した名門シュニッツァー・モータースポーツのいま

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2021年03月22日 11:41  AUTOSPORT web

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BMWは2020年12月、シュニッツァー・モータースポーツと、ベルギーのRBMとの契約を終了したと発表した。
世界中に新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年の年末、名門シュニッツァー・モータースポーツは半世紀以上にわたるモータースポーツ活動に終止符を打つことを突如発表し、世界中のモータースポーツファンがショックに陥った。

 ドイツとオーストリアの国境近くのフライラッシングにあるシュニッツァーのファクトリーを訪ねると、すでにてきぱきと閉鎖に向けた片付けの最中だった。

 チームオーナーのヘルベルト・シュニッツァーJr.は「世界中のファンや関係者から、さまざまなメッセージを受け取り、その温かい内容にはとても胸を締め付けられる思いだ」と語るように、どうにか活動終了を思い留まって欲しいとの声が多く寄せられたそうだ。

 しかし、新型コロナウイルスの蔓延で引き起こされた経済危機により経営状況は悪化。投資家と公証人の前でサインをする直前に話が流れたことが活動中止を決断させる最大の要因となったようだ。

 また、2019年にBMWの役員が一新され、新代表取締役のオリバー・ツィプセ氏やBMW M GmbH新代表取締役のマルクス・フラッシュ氏らの経営方針下でのモータースポーツ活動が大幅に縮小され、シュニッツァーはBMWとの契約終了を告げられた。BMWにチーム買収を相談するも断られたという。

 コロナ禍において投資家や大型スポンサー、ペイドライバーを即座に探すことは、例え超名門チームでも至難の業だ。規模を縮小しての事業継続を訴える従業員もいたが、そのために誰がチームに残り、誰に解雇を通知しなければいけないということになるよりも、全員でチームを去る選択をしたという。

 シュニッツァーJr.は「赤ん坊の頃から父に連れられ、毎日のようにファクトリーへ顔を出しメカニックやエンジニアが遊び相手であり、学校が休みになるとチームに帯同して数々のレースをこの目で実際見ていた」と懐かしむ。

 だが、そんな思い出の詰まったファクトリーを、自身が代表取締役に就任した途端に締めなければならない状況に苦しむ。「負債が出てみんなに迷惑を掛ける前に」と決断に至ったようだ。

■シュニッツァーJr.「内燃機関のレースが生き残れるのか、という不安もあった」

「ドイツ政府のEV化推進により、内燃機関の自動車はこの先10年で作られなくなってしまう。その上、もうすでに欧州内のいくつかのサーキットでは騒音規制により走行時間が厳しくなったり、特にエンジン音が煩く、CO2規制も厳しくない時代に作られたヒストリックカーのレースを受け入れないサーキットさえ出始めているなかで、この先『一体どれだけ内燃機関のレースが生き残れるのか』というのも不安要素でもあった」とシュニッツァーJr.は述べる。

 一方で、2019年に第48回サマーエンデュランス『BHオークションSMBC鈴鹿10時間耐久レース』で念願の久々の来日を果たし、ポールポジションを獲得、総合5位入賞を遂げて日本でのファンのサポートに感動を覚えた。

 投資家らとの手続きが整っていれば、父や叔父たち、シュニッツァーの先輩らが成し遂げたJTCC時代をオマージュしてスーパーGTへの参戦さえも考えていたというシュニッツァーJr.だが、すべては悪いタイミングが重なり、その夢も砕け散る結果となった。

 つい昨年までは、数多くの従業員がてきぱきとレーシングカーのメンテナンスに勤しみ、笑い声のない活気あふれるファクトリーだったのがウソのようにひっそりと静まり返っている。この広大なファクトリーの建物自体も売却するか、賃貸に出すとのことで、シュニッツァーモータースポーツの看板は最長でも今年いっぱいで降ろされることになる。

 従業員が手分けをして、データケーブルの1本単位まで詳細に仕分けをして販売リストを作成中だが、すでにトランスポーターや作業機械・工具、家具類の一部等は売却済とあり、運び出されている。

 また、ピットウォールスタンドやピット内装用品等のBMWモータースポーツの備品類は、ミュンヘンのワークスのファクトリーへ返却するように全ワークスチームに宛に通達があったこともあり、すでにそれらは返却済とのことで広いファクトリー内はがらりとしていた。

 数々の勝利を収めた数々の歴史的なレーシングカーも早々に新オーナーが決まったそうだ。現在はまだショールームに数台が展示されているが、『M1プロカー』以外は全車売却済とのことだった。

 数々のトロフィーの行く先は、現時点ではまだ決め兼ねているが、ル・マン24時間レースの主要数点は先代のシュニッツァーSr.が引き取り、その他は恐らくプライベートミュージアムのオーナー等に譲渡することを考えているという。オークションサイトで転売されないように、細心の注意を払いたいとするが、現在はファクトリー内の片付け等に追われており、トロフィーの行先に関しては一番最後となりそうだ。

 若手メカニックやエンジニアらは転職や、ふたたび大学へ入り直し学業に勤しむ者等、新たな道を歩むために去った者もいる。

 ドイツ国内のトップチームからシュニッツァーの社員なら是非正社員として迎えたい、とのオファーの電話も多々あったというが、モータースポーツの仕事に留まることを希望する者が多いものの、すでに住宅を購入している者も多く、遠方への引っ越しができかねるとあり転職活動は容易ではないようだ。

 残る従業員に関しても、契約期間内であっても自由に転職活動を行えるとあり、次の就労先が決まり次第、順次退職していくとのことだ。

このニュースに関するつぶやき

  • BMW好きにとってはショックなニュースですね。名門シュニッツァーといえどもコロナ禍には勝てなかったか・・・
    • イイネ!1
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