YOASOBI、Ado、優里…動画SNS発信ソングの豊作で変わった「ミュージシャン像」と「ヒット曲の定義」

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2021年03月22日 13:25  AERA dot.

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写真「うっせぇわ」のMV(画像はYouTubeより)
「うっせぇわ」のMV(画像はYouTubeより)
 3月13日放送の「ノブナカなんなん?」(テレビ朝日系)に、まなまるが登場した。ヒット曲「うっせぇわ」(Ado)をクレヨンしんちゃんの物まねで弾き語る動画がバズったアーティストだ。

【写真】AERAの表紙を飾ったYOASOBIの幻想的なショトはこちら

 7日と14日の「林修の初耳学」(TBS系)には2週連続で、YOASOBIが登場。ヒット曲「夜に駆ける」にまつわるエピソードなどが紹介された。

 そんな土日のテレビを見ながら、音楽シーンの変化を改めて感じた。

「うっせぇわ」も「夜に駆ける」も、新たなシステムから生まれたヒット曲だからだ。どちらもボカロPが作詞作曲を手がけ、SNSで注目された歌手がうたって、動画サイトから火がついた。ともに配信限定ながら、音楽チャート首位にまで登りつめている。

 もっとも、こうした流れは数年前から目立ち始めていた。2009年にボカロP・ハチとして、12年に本名で活動を開始した米津玄師は18年に「Lemon」をヒットさせ、翌年にはFoorinに提供した「パプリカ」(リリースは18年)がレコード大賞を受賞する。

 3月3日に放送された「関ジャム J‐POP20年史 2000〜2020プロが選んだ最強の名曲ベスト30」(テレビ朝日系)では「Lemon」が17位、「パプリカ」が7位にランクイン。「Lemon」について、作詞家のいしわたり淳治がこんな評価をしていた。

「YouTubeなどで音楽を聴く世代はイントロを飛ばして聞く人も多いので『再生した瞬間から”歌”が続いていく』というこの曲の構成は、世の中の音楽の聴き方が変わりゆく中でたくさんの人に届いた一つの要因かもしれません」

 ちなみに、このベスト30で29位に入っていたのが「PPAP」(ピコ太郎)。動画が国内外でバズり、世界的なヒット曲となった。

 とはいえ、こうした流れはやや散発的であり、2010年あたりからCD売上を目安とした音楽チャートの主役は長らくアイドルポップス、あるいはアニメソングだった。嵐などのジャニーズ系にAKB・坂道系、RADWIMPSやLiSA。アイドルやアニメの人気と音楽が結びつくことで「恋するフォーチュンクッキー」や「前前前世」のようなヒット曲も生まれたが、固定ファン以外には広がらなかった曲も少なくない。

 また、CDに握手券や総選挙投票権のような特典をつける販促戦略が、AKB商法として批判もされた。

 そんななか、一昨年の「NHK紅白歌合戦」では嵐が「カイト」を初公開。東京五輪に向けたNHK2020ソングとして、米津が書き下ろしたものだ。つまり、新旧勢力のトップ同士がコラボしたわけで、これが昨年の目玉的な作品になるはずだった。

 しかし、五輪はコロナ禍によって延期。それもあって「カイト」はミリオンヒットのわりに今ひとつ浮揚しなかった。さらに、コロナ禍はAKBのようなファンとの直接的コミュニケーションが持ち味の「会いに行けるアイドル」にも打撃を与えることになる。

 その一方で、音楽をスマホの動画などで楽しむ傾向は加速。つまり、新旧コラボがやや不発に終わったり、旧勢力が勢いを失うなか、新勢力が一気に躍進する状況が生まれたわけだ。

 そして、昨年の「紅白」。AKBは落選し、嵐は活動休止前の無観客ライブを行うため、NHKホールには姿を見せなかった。そのかわり、新鮮な印象をもたらしたのが前出のYOASOBIや「香水」の瑛人といった、令和スタイルで売れた面々である。すなわち、CDセールスより、配信セールスや動画のバズり具合のほうがヒットの指標だという現実がより明確になってきたのだ。

 その流れは今年に入ってからも持ち越され、前出の「うっせぇわ」や「ドライフラワー」(優里)のような、令和スタイルのヒットが次々と生まれている。その結果、音楽シーンは活性化した。アイドルやアニメ頼みだった時代は、その華やかさとは裏腹にヒット曲が欠乏しているかのようなさびしさも感じたものだが、最近はミョーににぎやかだ。

 こうした状況は、かつてグループサウンズが席巻した時期やニューミュージックが台頭した時期を思わせる。前者はレコード会社における作詞家や作曲家の専属制度を崩壊させたし、後者はフォークやロックがJポップになるための橋渡し的な役割を果たした。最近の状況は、GSとニューミュージックのブームがふたつまとめて来たくらいの衝撃かもしれない。

 当然、既存システムは混乱するし、アレルギー反応を起こしたりもする。それもまた、興味深いことだ。「香水」における「ドルチェ&ガッバーナはNHKで歌えるか」論議しかり「うっせぇわ」批判しかり、である。

 しかも、こういう状況にはヒット曲を生み出した当事者自身も混乱する。新勢力の強みは、従来のシステムに縛られない、作り手個々の着想やつながり、発信の自由さだったりするわけだが、曲のヒットにともない、従来のシステムにも巻き込まれるというか、つきあわされることにもなるからだ。

 2月19日放送の「ミュージックステーション恋うた3時間SP」(テレビ朝日系)では「春を告げる」のyamaや「ポケットからきゅんです!」のひらめがテレビ初歌唱を披露した。また「浮気されたけどまだ好きって曲。」のりりあ。も「Mステ」初歌唱。3人とも顔出しをせずに活動してきただけに、そのパフォーマンスが注目された。

 このうち、りりあ。は顔出しをしない理由についてこう語っている。

「ただ、単に自信がないというのと…(笑)。あとは、好きなアーティストの皆さんは顔出しをしていない方が多く、弾き語りするのに顔っていらないかな、と思っています」(フジテレビュー!!)

 その言葉通り、顔から下だけを映す方法で歌唱。yamaも顔の上半分を隠すかたちで歌唱したが、ひらめだけは「素顔で音楽番組初歌唱!」との触れ込みだった。しかし、寄りのカメラワークは少なく、しかも画面全体を少しぼかして顔をはっきりとはわかりにくくしていた。高齢の視聴者などは、自分の目が悪くなったのではと不安になったかもしれない。

 おそらく、彼女と番組スタッフとのあいだで相談して決めたのだろう。ニューミュージックブームの頃には、顔出しをしたらイメージと違っていた的な悲劇がちょくちょく起きたものだが、これも現代的な自由さのあらわれといえる。

 かと思えば、その前週の「ミュージックステーション」には「ドライフラワー」の優里が出演。この番組への初登場だったのみならず、いわゆる文春砲によるスキャンダル報道の直後とあって、大いに注目された。

 そのスキャンダルとは、アイドル・高木紗友希(Juice=Juice)との半同棲。これにより、高木は活動休止に追い込まれたが、それが発表された同じ日、優里は「Mステ」で何事もなかったように歌っていた。ネットでは「メンタルがすごい」という声も聞かれたものだ。

 しかも、その後、同じく文春砲で高木以外との「三股」交際疑惑も報じられることに。そのなかのひとりは下積み時代の彼に500万円くらい援助したとか、有名になるにつれだまされるようになり、最後は逃げられたという恨み言を語った。印象的なのは「優里の話はどこまでうそか本当か分からない」という言葉だ。

 もちろん、優里にも言い分はあるだろうが、好青年っぽい容姿とピュアな歌世界に対し、このスキャンダルはなかなかエグい。えてして、芸能界ではこういう人のほうが生き残っていくものだ。

 逆に、ちょっと心配してしまうのが「魔法の絨毯」の川崎鷹也。こちらも好青年っぽさや歌のピュア感が魅力だが、すでに妻子持ちだ。「魔法の絨毯」は交際中だった頃に妻を思って書いたラブソングで、この曲が2年がかりでヒットしたことをきっかけに、昨年、会社を辞めたという。2月27日放送の「MUSIC FAIR」(フジテレビ系)ではこんな思いを明かした。

「サラリーマン、がっつりやってたんですけど。11月11日付けで退社しまして。頑張ろうということで。(手応えを感じた?)そうですね、まだまだですけど」

 その物腰はいかにも真面目そうで、そういうところがアダにならなければよいのだが、とも感じた。なお、前出のひらめも本業はパティシエ。作品の発信が手軽にできるようになったおかげで、令和スタイルのヒット歌手には完全なプロではない人も多い。歌一本で生きていけるか、生きていきたいのかという見極めも大事だろう。

 とはいえ、残る人もいれば消える人もいることでブームは落ち着き、新たなシーンがこなれて成熟していく。今の混沌とした状況から何が生まれるのか、楽しみである。

 ちなみに、ニューミュージックブームがあだ花に終わらなかったことの最大の功労者は、1978年に世に出た桑田佳祐だろう。そして、サザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でデビューした翌月、歌謡界の大作曲家・古賀政男が没した。古賀メロディーから桑田サウンドへというバトンタッチが期せずして行われたわけだ。

 そういえば、昨年の秋には古賀に匹敵する大作曲家・筒美京平が世を去った。そんな年に、大きな変動が起きたのもあるいは何かの必然かもしれない。音楽シーンはまさに、過渡期の真っただ中なのだ。

●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

 

このニュースに関するつぶやき

  • ☆SNS発信ソングの豊作で変わったヒット曲の定義 SNSが発達し文章,画像,動画などを個々が発信出来るようになって、ある種の民主主義的というか、シンプルに多数を惹き付けたら勝手に広まっていくというのを、証明した格好かもな。 プロが発信して意図的に民衆を操作する新しい段階?
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  • うっせえわ、とか率直で良い曲に仕上げてるのが良いな。尾崎豊にしても香水にしても、なぜ男性は語ろうとするかな?
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