巣ごもり明けの運動は要注意! 筋力低下がわかる4つのサイン

2

2021年04月12日 10:15  AERA dot.

  • 限定公開( 2 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
 巣ごもり生活のストレス解消にと、いきなりスポーツを始めてはいないだろうか。筋力が落ちた状態での急な運動はケガのもと。まずは自身がどんな状態か、四つのサインで確認してほしい。一つでも当てはまるものがあれば、ストレッチとおだやかな筋トレで慣らしてから動き始めよう。

【チェックリスト】あなたは大丈夫?運動機能低下度サインはこちら

*  *  *
「緊急事態宣言が明けて、会社に行くようになってから、足が痛くなった」

 足を専門に診療する「足のクリニック表参道」(東京都渋谷区)には、この1年、こんな悩みを抱える患者が何人か来院した。同院長の桑原靖医師は言う。

「筋肉や関節を動かさないと、足の機能はどんどん低下し、痛みが出る限界値がどんどん下がっていきます。その結果、今まで普通にできていた通勤レベルの運動でも、足を痛めてしまうのです」

 首都圏の緊急事態宣言が明けてはや2週間。体を動かすには最高の季節だ。だが、長い巣ごもり生活から、いきなり運動をするのは、ちょっと危険かもしれない。

「体を動かすにはバランス(動きをコントロールする機能)や俊敏性、柔軟性も必要で、単に筋力があればいいというわけではありません。1年あまりの巣ごもり生活で、これらすべての要素が落ちている可能性があります」

 こう指摘するのは、運動器の問題に詳しい伊奈病院(埼玉県伊奈町)副院長の石橋英明医師。「運動機能低下度サイン」を用意した。一つでも当てはまれば足腰が弱っている可能性が高い。

「『立ち上がりテスト』は寝たきりのリスクが高まるロコモティブシンドローム(ロコモ)を判定するテストの一つです。定期的に確かめることで、ご自身の運動機能の変化も確認できます」(石橋医師)

 運動機能が低下した人が運動をがんばりすぎると、どんな問題が起こるのだろうか。

「まず心配なのが、痛み、特に膝痛ですね。筋肉は関節を動かすだけでなく、関節を支える働きもあります。そのため筋力が落ちると関節が不安定になり、その状態で運動をすると、余分な痛みが出やすいのです」(同)

 膝関節は、筋力低下で特に痛みが出やすい部分だという。

 また、下肢の筋力が低下すると、歩いたり走ったりした際に転びやすく、骨折の危険性もある。

 柔軟性の低下も痛みに直結する。例えば、股関節周りの筋肉が硬くなると、腰に余計な力がかかって腰痛の原因に。腰が伸びないと前かがみになりやすく、腰だけでなく背中にも痛みが出る。

 バランスや俊敏性が低下すれば、転びそうになったときに姿勢を立て直したり、足を踏み出して体を支えたりといった、とっさの行動ができなくなる。結果的に転倒や骨折の危険が高まる。

「大事なのは、自分は大丈夫だと過信せず、運動機能の低下を“自覚”することです」(同)

 その上で、時間をかけて徐々に運動強度を上げていくことが大切だ。

 理想は、まずウォーキングなど、ラクにできる運動から始め、1週間ごとに強度を上げていく。運動後に痛みが出て翌日まで残る場合は、3日ほど休み、痛みがとれた段階で、それまでやっていた運動の半分ぐらいの強度から再開する。その間、痛みがない部位(足が痛ければ、上半身)なら、トレーニングをしても大丈夫だ。

 感覚で体を動かすのではなく、しっかりスケジュールを立てて、また痛みなどがあったら臨機応変に対応しながら、運動機能を高めていこう。

 ここまではコロナ禍の運動不足を問題視したが、自粛期間中も運動を続けていたから問題ない。そう思っている人も要注意──。そんな結果が日本臨床整形外科学会の調査で明らかになった。

 調査は昨年の最初の緊急事態宣言が明けた後、7〜8月に実施。整形外科(医院)に通う患者とその家族約1万2千人に、自粛前・中の運動の状況や自粛後の体の変化などを聞いた。

 すると、60代以上では5〜6割が「運動を行っていた」と回答。自粛前と自粛中とでその割合はほとんど変わらなかった。運動頻度は、60代、70代では「週2〜3回」、80代以上ではなんと「毎日」が最多だった。運動の種類はウォーキングや散歩、ジョギングが約半数を占めた。

■毎日運動しても筋力が低下する

 コロナ禍においても運動をがんばる高齢者の多さにも驚くが、調査に参加した二階堂医院(長野県千曲市)の院長で整形外科医の二階堂元重医師は、「それにもかかわらず、自粛中に下肢の筋力低下を思わせる変化が出た人が多かった」と話す。

 具体的には、「つまずきやすくなった」「速く歩けなくなった」「階段が上りづらくなった」と答えた人が2〜5割弱もいたのだ。この理由について二階堂医師は次のように考察する。

「おそらく有酸素運動を代表するウォーキングについては、その人の健康状態にもよりますが、ストレス解消などの効果は期待できるものの、運動機能を高めることは難しいといえます」

 その結果、運動しているにもかかわらず体幹や下肢の筋力の低下は進み、先に挙げたような変化が出てきたのではないかという。

 もちろん、正しいウォーキングをしているかどうかでも違うだろう。

 このウォーキングについて桑原医師は、「背筋をピンと伸ばし、足と骨盤が一緒に動くように意識しながら、大またで歩くように」とアドバイスする。手も大きくふったほうがいい。歩く場所は平坦なところにし、準備体操とクールダウンはしっかり行う。

 歩いていて、膝、股関節、腰などに痛みや違和感があると、理想のフォームでウォーキングをするのが難しくなる。がまんできるからと、そのまま続けるのは危険だ。

「歩くときに痛める場所=弱点をそのままにしておくと、将来、その痛みが深刻な問題につながりかねません。まずは靴やインソールなどで足の環境を調整しましょう」(桑原医師)

 それでも痛みが続いたら、専門医に診てもらったほうがいい。

 二階堂医師は、このウォーキングに「おだやかな筋トレをプラスしたほうがいい」と提案する。おだやか、つまり低強度の筋トレは、運動不足によって起こる関節の痛みや、運動をすることで起こるケガ予防にもつながるという。

 おだやかな筋トレの代表がスクワット。やり方を石橋医師に解説してもらった。

「スクワットは、ほぼすべての下肢の筋肉を強化できる運動で、正しく行えば膝などへの負担が少なく、安全です。外来の患者さんにも、このスクワットをゆっくりと10回を1セットにして、1日3セット行うよう、説明しています」

 スクワットと共に石橋医師が勧めるのは、膝、腰、背中のストレッチだ。イラストを参照してほしい。

 最後に、痛みが出た場合の対応について。

「運動で痛みが出るパターンは大きく二つ。一つは過剰な負荷がかかることによる故障で、もう一つは捻挫や打撲といったケガです。いずれも、初めは冷やして安静にします。3日から1週間程度安静にしても痛みが引かないようなら、整形外科を受診してください。もちろん、動けないほどの強い痛みがある場合は、すぐに受診を」(石橋医師)

 健康のためにと体を動かしたことでケガをしてしまえば、それは本末転倒。自身の体と相談しながら適切に運動を行っていこう。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日  2021年4月16日号

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定