3時のヒロインが容姿ネタを封印しても、差別はなくならない……「オジサンはなぜ外見をイジられないのか」問題にメスを入れるべき理由

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2021年04月23日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

写真3時のヒロイン・福田麻貴インスタグラムより
3時のヒロイン・福田麻貴インスタグラムより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「容姿いじりのネタ捨てる」3時のヒロイン・福田麻貴
『ワイドナショー』(フジテレビ系、4月18日)

 今、芸能人で一番使い勝手がいいのは、オンナ芸人ではないだろうか。ひと昔前、女優や歌手、芸人は仕事の範囲がはっきり決まっていたように思う。芸人が、本職の俳優に交じってドラマに出たり、本格的に音楽活動をするということは滅多になかったが、友近はNHKの朝ドラに出演したこともあるし、大物演歌歌手・水谷千重子というキャラになりきってディナーショーも行っている。

 また、フォーリンラブのバービーは、TBSラジオで『週末ノオト』のメインパーソナリティーを務めるほか、PEACH JOHNで下着の開発に取り組んでいるし、オアシズ・光浦靖子は、「文藝春秋」2020年11月号(文藝春秋社)の巻頭随筆「光浦靖子『49歳になりまして』芸歴28年・もう一つの人生も回収したい」が大きな反響を呼び、目下、各出版社からの依頼が殺到しているという。

 このように、オンナ芸人がマルチに活躍できるようになると、大事になってくるのが本人の“好感度”ではないだろうか。一般人がスターを見上げ、憧れる時代は去り、現在では「自分に似た人」」を探して共感し、応援するようになっているなどと言われるが、そう考えると、オンナ芸人の“日頃の行い”は非常に重要になってくると思う。

 そういう意味で、3時のヒロイン・福田麻貴が「容姿いじりのネタを捨てる」と決断したことはプラスに働くのではないだろうか。3時のヒロインといえば、福田麻紀、かなで、ゆめっちのトリオ芸人で、『女芸人No.1決定戦 THE W 2019』で優勝し、注目を浴びた。普通体形の福田に対し、ゆめっちもかなでも太目である(ゆめっちはウケるためにわざわざ太ったそうだ)。

 3時のヒロインの3人は、容姿をいじられることを「おいしい」と思うタイプだというが、この度、容姿ネタ封印を決めたそうだ。その理由として福田は、「劇場で容姿をいじるネタをやっても、ウケないと感じるようになったこと」また「ドキュメント的な内容のYouTubeを見慣れ、テレビの内容も本当だと信じてしまう傾向がある若者に、容姿イジりネタを『本気で攻撃している』と思われる可能性があること」を挙げていた。確かにウケないネタをみすみす続けるのは不毛だし、何よりも3時のヒロインのためにならないと言う意味で、この判断は賢明ではないだろうか。

◎容姿いじりで一番損をするのは、3時のヒロイン・福田麻貴

 『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)に、3時のヒロインがゲスト出演した際、3人の中で、福田はプロデューサー的な立場であり、かなで、ゆめっちの2人に対する「ダメ出しがきつい」と明かされていた。

 福田はトリオのネタ作り担当。CMに出たいという夢もあるそうで、おそらく彼女には「トリオとしてこうありたい、こういうことをやってみたい」というふうに、目指すものが明確にあるのだろう。それをかなえるための2人への“指導”なのだろうが、いくら仕事上のこととはいえ、こういうエピソードが明かされると、福田は「性格がよろしくない」としてイメージが低下すると思われる。

 その上で、たとえネタであったとしても、また福田が自分の容姿を自虐したとしても、彼女が2人に対して容姿いじりを展開すると、「メンバーを下に見ている」という批判が出てきかねない。それどころか「メンバーを下に見ているお前だって、たいした容姿ではないくせに」と、福田の容姿までバッシングされる可能性がある。こうなるとネタはウケない、福田は世間から自らの容姿も批判されるかもしれず、さらに性格も悪いというレッテルを貼られるリスクまで抱えてしまう。容姿いじりで一番損をするのは、福田ではないだろうか。

 しかし、『ワイドナショー』コメンテーターの松本人志は、「福田さんが今、そういう考えであるなら、それでいいと思う」としたが、「でも、ずっとそれでやる必要もないし、変わっていったら変えたらいいと思うねん」と福田の意見を尊重しつつ、その一方で「(芸人と)世間との(価値観の)ネジれは、このネタをやめたらもっとネジれるんじゃないか。ネジれを直すためには絶対に引かずに頑張るという方法もあるんちゃうかな」と「あえてやめない」選択肢も提案した。

 容姿に関する話というのは本当に複雑といえる。例えば、テレビで女性タレントが容姿をイジられたとしよう。そうすると、SNSに多数の抗議の声が上がるだろう。それでは、世の中全体が「容姿差別は許さない!」という方向に行っているのかというと、そこまで足並みはそろっていないようだ。

 ネットの匿名掲示板では、いまだに有名人の容姿についてのキツい言及が見られるし、ゴシップ誌でも、女性芸能人の整形疑惑についての記事が人気だ。ということは、人には「自分の容姿について言われるのは嫌だから、そうならないためにも、他人が容姿いじりをすることには抗議する。でも、自分自身が他人の容姿を悪く言うのは楽しい」という部分があるのではないだろうか。

◎友近を「足が短い」といじった石橋貴明は、なぜ容姿をいじられない?

 そんな容姿いじり問題について、同番組に出演したEXIT・兼近大樹は「オジサンと呼ばれる世代が笑ってくれるから、人をいじったり攻撃したり怒ったりしてみせる」と、いじりがオジサンへの“サービス”であると主張した。ゲストのキャスター・安藤優子が「なんでいじるとオジさんは笑うんですかね?」と質問すると、兼近は「それが笑いと思っていた」と返していたが、私はここをもうちょっと掘り下げてほしかったと思う。

 統計を取ったわけではないので主観だが、オトコの芸人よりオンナの芸人が、無意味に容姿をいじられる率ははるかに高いのではないだろうか。例えば、フットボールアワー・岩尾望は「ハゲとるやないか」などと薄毛をいじられることもあるが、ヘアケア製品のPRに起用されるなど、仕事につながったという意味では、不利益を被っていないだろう。

 しかし、オンナ芸人の場合、そんな単純ではないように感じる。例えば、『うたばん』(TBS系)に友近が初めて出演し、中森明菜のモノマネを披露した時、司会のとんねるず・石橋貴明は、ネタを見る前も見終わった後も、ずーっと「足みじけー」と笑っていた。この場合、いじられることで友近に特に得られるメリットがあるとは思えず、これはいじりではなく、ディスりではないだろうか。

 また、友近も石橋もルックスが必須とは限らないお笑いの世界に身を置いているのに、友近は容姿について言われるが、石橋の容姿を本人の前でとやかく言う人を私は見たことがない。つまり、容姿が必要でない世界でも、女性はけなされる一方、男性が同じことをされるのは稀で、ましてや石橋のような権力者であるオジサンが面と向かっていじられることは、ほぼ皆無ではないか。

 自分の容姿は棚に上げて、女を(男も)下に見てバカにしてもよい。自分はジャッジする側の人間であると信じて疑わない。オジサンというのは、かなりの特権階級といえるだろうし、その権力の味は、ひとたび覚えたら忘れられないのではないか。また容姿によって、オジサンに愛され、権力のおこぼれを味わった女性は、美しくない女性は価値が低いと見下すようになり、容姿の悪い女性を嘲笑するようになるだろう。

 「オジサンは、なぜ外見をいじられないのか」……この問題にメスを入れなければ、芸人が容姿ネタを封印しようとしまいと、容姿差別がなくなることも、容姿のことで傷つく人も減らないのではないか。

 話を3時のヒロインに戻そう。容姿差別はなくならないにしても、いまこのタイミングで容姿いじりをやめたのは、賢明だと思う。新しい笑いを作っていくのは難しいだろうが、これは大きなチャンスでもある。「あの人たち、楽しそう」「ああなりたい」と思わせた芸人が、今売れるのではないか。3人仲良く、頑張っていただきたい。

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