快勝ムードが一転…守護神離脱のオリックスがまさかのドロー劇「誰かが壁を破らないと」

◆ 明暗分けた3度のリクエスト

　オリックスが楽天相手に9回まで3点をリードしながら逃げ切りに失敗し、試合はまさかの引き分けに終わった。

　快勝のはずだった。オリックスは2回にT－岡田が適時二塁打を放ち、3試合ぶりに先手を取って試合を進めると、同点にされた直後の4回には、頓宮裕真が勝ち越しの適時打を放つ。さらに6回にはモヤが2号ソロを放ち、しり上がりに調子を上げてきた左腕・田嶋大樹を援護した。

　その後、1点差に迫られた8回には、4番に座った杉本裕太郎の豪快な4号2ランが飛び出し、5－2と3点のリード。試合は快勝の流れだったが、抑えに不安を抱えるチームの弱点が最後に露呈する。中継ぎの平野佳寿が首痛で戦列を離れ、漆原太晟も不安定。しかも、決して好調ではなかった守護神のヒギンスも腰痛で登録抹消と、リリーフは苦しい台所事情となっている。

　そんな中、9回を任された3番手のK－鈴木が、ここまで3三振の先頭・辰己涼介を簡単に歩かせたのが、つまずきの始まり。続く代打・岡島の三ゴロをこの回から守備固めに入った山足達也の二塁への送球が逸れてピンチが拡大。ボールを捕球した大城がリクエストを要求するも判定は覆らず、4番手の山田修義がマウンドへ。

　山田は代打の茂木栄五郎に際どいボールを見極められて四球を与えると、続く小深田大翔を三ゴロに打ち取り併殺かと思われたが、山足がサードベースを踏んでいないとの判定で一死を奪ったものの満塁は継続。この回2度目のリクエストも実らず、続く鈴木大地、島内宏明に粘られた末に連続適時打を浴びて試合は振り出しに。四球によって生まれた傷口を守りで広げる結果になってしまった。

　「もっと余裕を持って出来たらいい。そこまで慌てるプレーでもない」と野手のプレーを嘆いた中嶋聡監督だが、次いで口をついたのは中継ぎ陣への苦言。K－鈴木に対し、「3点差があって思い切っていけと送り出しているのだから、勝負をしてほしい。先頭打者を出して自分が苦しむだけ」と、ボール先行となり先頭打者に与えた四球に首をかしげた。

　勝ち試合をものにできず、田嶋の2勝目も吹き飛んでしまったこの試合。中継ぎ、抑えが安定しない状況について、中嶋監督は「そういうのが続いて（マウンドに）上がるのが嫌になっているのか。誰かが壁を破らないといけない。いつまでも（中継ぎ、抑えが）いない、いないでは困る」と奮起を求めた。

　「完全な負けゲーム。負けていないという慰めしかない。ヒギンスがいなくなり、いるメンバーでやっていくしかない」。勝ちゲームを拾えず、指揮官の苦悩は続く。

取材・文＝北野正樹（きたの・まさき）

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