「人生は一度の失敗で決まらない」更生中の高知東生が若い世代から注目される理由

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2021年05月10日 11:30  AERA dot.

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写真インタビューに応じた高知東生(撮影・小黒冴夏)
インタビューに応じた高知東生(撮影・小黒冴夏)
「一度の失敗で人生は決まらない。俺は今そう信じて生き直してる。どんな道が開けるのか自分でも良く分からないが、カッコ悪く、ダサく、もがいているありのままの姿をさらしながら生き抜くことが、俺の役割の様な気もする。上を目指す生き方より、変化し続けたい。そういう意味で変わり者でいたい」(4月22日のツイッターより)

 俳優の高知東生のオープンでストレートなツイッターでのつぶやきが若い世代を中心に注目を集めている。フォロワー数は3万7000人を超えている。高知は個性派人気俳優として活躍中だった2016年、覚せい剤取締法違反の罪で逮捕・起訴され猶予判決を受けた。あれから5年。 高知は薬物依存からの回復プログラムを受講しながら、懸命に自分と向き合う日々を送っている。高知をインタビューした。

*  *  *
 5月某日。黒のシックなニットセーター姿で会場に現れた高知。

「よろしくお願いします。今日は喋りますよ」と満面の笑顔に白い歯がこぼれる。

―笑顔が素敵ですね。

 照れるじゃないですか。いまは本当に仲間といる時間が楽しいんです。ツイッターを通して、縁のないだろう人たちから共感、応援してもらっていることがすごくありがたい。生き直すというところからつながってくる人たちは宝物です。僕のつぶやきは本音だから、リプを読んで逆に共感して、ああそうなんだと僕の方が励まされる。狭かった自分から拡がっているのはフォロワーの皆さんのおかげ。心の処方箋ですよね。

―コロナ禍で自分と向き合う時間が増えました。

 自分とここまで向き合うことになったきっかけは、やはり逮捕された時の衝撃が大きかったから。誰にも会わず、弱っている自分につけ込んで利用しようとする人もいた。やさしいことばで近づいてくるから、何が間違いで何が正しいのか。自分で選別しなくてはいけない。妄想が妄想を呼んでいって余計に苦しくて。死んで償うべきか。自分を責めてきた中で答えが見えなかった。自分は道を外し、家族を悲しませ、大切な人たちを裏切った。どうしたらいいかわからない。世の中から排除されて、もう終わりだと考えていた。そんな時に仲間と出会った。自分はひとりじゃない。反省と共にバッシングから身を守ること、自分との向き合い方を知って、素直になれる自分にぐっすり眠れる日が増えていき、これまでの妄想が溶けていったんです。
 
 高知は自助グループのサポートを受けながら薬物依存の回復のための「12ステッププログラム」を実践している。このプログラムは12の段階を仲間と確認しながら実践していくというもの。米国が発祥でいわゆる依存症の回復プログラムとして世界中で活用されている。以下はアルコール依存症の回復のための12のプログラムだ。アルコールを薬物に置き換えて読んでいただきたい。

1、私たちはアルコールに対して無力であることを自覚した。自分自身の生活がコントロール不能である。

2、偉大なパワーが私たちを正気に戻してくれると考えるようになった。

3、私たちの意思と生活(について自分で理解している神の行いにゆだねると決めた。

4、恐れずに自分自身のモラルを深掘りし、その一覧を作った。

5、神に対し、自分自身に対し、他の人々に対し、自分自身の欠点の正確な気質を受け入れた。

6、これらの気質的な欠点をすべて神に取り除いてもらうことを受け入れた。

7、自分の欠点を取り除いてくださいと、謙虚に神に求めつづけた。

8、私が迷惑をかけた人々のリストを作り、彼ら全員に償いをすることをいとわなくなった。

9、その人々に対し、彼らを傷つけない限り、機会があった際に可能な限り、直接的な償いを行なった。

10、自分自身の気質について、その一覧を継続的に把握し続け、過ちがあればすぐにそれを認めた。

11、祈りと瞑想を通して神との意識的接触を深め、私たちへの神の意志と、それを実現しようとする神の力を知ろうとし、これらだけを祈りにより求めた。

12、これらのステップの結果、私たちはスピリチュアルに目覚め、このメッセージをアルコホーリックに伝え、さらにこの原理を私たちのあらゆる場面で実践しようとした。(『アルコール・アノニマス』12ステップより)

―プログラムはどうですか?

 本当に苦しいですよ。自分の全てをさらけださないといけない。僕はこれまで強がって生きてたし、人を信じるな、自分をみせたら負けだと思っていた。きっとこうだろうと決め込んで突っ走って生きてきた。12ステッププログラムをやっていて、自分にどれだけ歪んだ認知があるか知った。自分を認めることは本当に苦しかった。
12ステップがなかったら、ここまで自分と向き合えなかったと思う。

―俳優として再始動していますが、演じてみたい役は?

 かつて出演したドラマで薬物の演技指導を監督から受けたときに「本当はそうじゃないんだよな」と背中に嫌な汗をかきながら、いつも喉まで出かかっていた。許されるのか分からないが、未だ誤解の多い薬物依存の本当の姿を演じてみたいと思っている。

―同じ悩みを抱える人たちにメッセージを。

 壁に突き当たっているときは成長が止まっている感じがする。竹には節がある。どんな時も節が大事。その節がないと僕はやはり成長できない。節を自分と向き合うことと例えるようにしています。良いことも悪いことも意味がある節。自分が成長しているから節に突き当たっているだけだと信じたい。次の節にいこうぜと。節がないと、土台がグラグラで成長していけない。節に当たったじゃん。「ようこそ節」と考えておけばいい。目の前の節を信頼できる人と一緒に乗り越えていこう。

 いまは啓発ドラマなどに出演させてもらっている。再起とともにリカバリーカルチャー、あらたな文化を作っていきたい。声を出せない人に、ひとりじゃないぞと。つらく思い出したくない記憶を笑顔に変える。元気で頑張って生き直すことが原動力になる。仲間に助けてもらったから今の自分があるんです。だから早く恩送りをしたい。

 高知に寄り添い、回復プログラムをサポートするのは、田中紀子さんだ。依存症回復支援活動グループを率いる田中さんは「高知さんならきっと生き直せる」と自らアプローチしたという。

「依存症の人にとってありのままの自分を認めることは本当につらいことだと思います。12ステップをやり遂げられる人は実はそれほど多くありません。高知さんとはじめて向き合って話した時、自身の生い立ちから振り返ってプログラムを実践すればきっとよくなると思いました。今は亡き高知さんの父親が大物組長であること、元の奥様とのことも黙っているとデタラメを言われるから全部オープンにしたらと助言したんです。高知さんが自著(「生き直す」)に勇気をだして全て書き連ねたらやっぱり何も言われなくなったんです」(田中さん)

 自身と向き合い、一日一日を懸命に生き直している高知。仲間に恩送りできる日はもう間もなくだ。(野田太郎)

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