衝突しても曲がって復活する柔らかドローン用ローター 北陸先端大など「トンボプロペラ」開発

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2021年05月12日 10:02  ITmedia NEWS

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写真トンボの羽構造を模倣した柔らかいドローン用プロペラ
トンボの羽構造を模倣した柔らかいドローン用プロペラ

 北陸先端科学技術大学院大学と米ニューヨーク大学の研究チームが開発した「Towards Design of a Deformable Propeller for Drone Safety」は、折れ曲がっても壊れない柔らかい素材で作られたドローン用プロペラだ。トンボの羽構造を模倣していることから、「トンボプロペラ」と呼ばれている。



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 このプロペラは、人や障害物に衝突した際に折れ曲がり変形することで衝撃を吸収する。衝突相手の破損・けがを極力抑えられる他、折れ曲がったプロペラは即座に元に戻るため、駆動を再開できる。



 一般的なドローンはプロペラを毎分数千回転させ、甲高い音とともに飛行する。人や物に接触すると、けがや損傷を引き起こすため、安全性の高いドローンの開発が求められている。



 これまではカメラやセンサーを用い周囲を検出し障害物を回避する手法や、プロペラを物理的に保護ゲージに収納する手法で対応してきたが、従来の手法は本体の重量増加や操作性の低下などの課題がある上、人のドローンに対する不信感や恐怖感は完全になくせない。



 今回はプロペラに柔らかい素材を活用し、障害物に接触しても折れ曲り部分的に衝撃を吸収する手法でこの課題に挑む。プロペラはトンボの羽構造から着想を得ている。トンボの羽は軽量で適度な柔軟性と頑強性を備えており、ホバリングや急旋回など高度な飛行が可能だ。その一方で、羽の端部分の途中で少し折れ曲がる構造の関節に似た箇所(Nodus)が存在する。弾性を持つレシリンというタンパク質で構築され、羽のねじれや曲げの許容や衝撃吸収材として機能している。



 今回はこの構造を模倣するため、プラスチックとシリコンを組み合わせたプロペラを設計した。プロペラ全体ではなく計算された一部分のみをシリコン仕様にしているのが特徴だ。腱のような形状のナイロンファイバー6本を接続部に使用し補強している。



 推力実験では、従来の硬いプロペラと比較して飛行に十分なパワーを発揮するかを検証した。回転速度は異なるが、従来のプロペラとほぼ同じ推力を示したという。



 衝突実験では実際に障害物に当て続けた場合に、自己回復し正常に駆動し続けられるかを行った。回転数3200rpmで実施した結果、衝突後プロペラが変形しても自己回復し、0.4秒以内に正常作動した。この結果は、プロペラが障害物に衝突しても故障せず回転を再開できる頑強性の高さを示すものだ。



 障害物に衝突した後にドローンが落下や故障をせずに、空中で通常飛行に戻れるかの実験でも成功し、プロペラとしての実用性も実証した。



※この記事は、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。


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