【井口&山内のBRZコラム】Vol.2:歯痒さが残った富士戦と、僕だけが知る“相方・山ちゃん”の素顔

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2021年05月12日 17:01  AUTOSPORT web

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2021スーパーGT第2戦富士 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)
今季スーパーGT・GT300クラスにおいて、新型マシンを投入したことで注目されるのがSUBARU BRZ R&D SPORT。戦闘力の増したクルマで、上位争いに絡んでくることが予想されます。そのSUBARU BRZのステアリングを握る井口卓人選手と山内英輝選手が、オートスポーツwebにコラムを寄せてくれることになりました! ドライバーのふたりは毎レース後、交互に登場します。

 2回目となる今回の担当は井口選手。2位表彰台に立った第2戦富士の裏側と、相方“山ちゃん”の素顔を教えてくれました。

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 みなさんこんにちは、井口卓人です。前回の山ちゃんのコラムに続き、第2回は僕が担当します!

 第2戦富士に向けては、開幕戦後にセットアップなどをいろいろ見直したこともあって、予選でポールポジションを獲得することができました。僕としてはQ1を突破して山ちゃんにつなぐことができ、本当にホッとしました。そのあたりの経緯は、予選後に取材してもらった記事を読んでもらえると嬉しいです。

 というわけで、PPスタートだった決勝の話にいきましょう。最初のスティントでは山ちゃんが背後に60号車(SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT)をずーっとコンマ差で従える形となりました。僕は「さすが山ちゃん、強い気持ちで戦ってるなぁ」と思いながら、モチベーションと緊張感が高まりつつ、自分のスティントを待っていました。

 ただ、開幕戦のデータを見ても、GRスープラはBRZよりも給油時間が短かったんですよね。マージンが少ない状態でピットに飛び込むと、逆転される可能性はあるかなと思ってました。あと、決勝前のウォームアップ走行で中古タイヤを履いたときのフィーリングが、いまいちつかみきれていなかった。そこに対する不安も、正直ちょっとありました。

 実際に僕の第2スティントが始まると、60号車の前には出られたのですが、無交換だった52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)が実質トップ、そのうしろにFCY直前のピットインでアドバンテージを得た2台がいて、そこに僕が続く状態でした。僕としては背後のクルマのペースが良さそうだったので、前よりはうしろを気にして……という戦いになりました。

 もちろん自分の引き出しを最大限に使いながら走ったのですが、ウォームアップ走行での不安が的中する形となり、どうしてもリヤのグリップダウンを感じてしまい、セクター3がちょっとつらかった。周回おくれのマシンが前に出てきたのですがなかなか譲ってもらえず、そのタイミングで背後から来たGT500に続く形で55号車(ARTA NSX GT3)に抜かれてしまいました。

 その後もやはりリヤが厳しく、ピットイン直前には60号車にも先行されてしまい……。GRスープラはセクター3を中心に、どのコーナーでも安定感があるように見えました。

 55号車、60号車を抑えることができなかったのはすごく悔しいですし、僕のなかでは大きな課題です。2位だった、優勝できなかった、ということよりも、自分に対する歯痒さを大きく感じるレースになってしまいました。

 今季のBRZは一本の細いロープの上を走っているような印象で、そこでうまく走れていればすごく速くてぶっちぎれるんですけど、そのロープから外れてしまったときの落ち方がちょっと大きい印象です。あと、今季はタイヤもダンロップさんがいいものを用意してくれて、一発のタイムはすごく出るんですが、決勝を考えると難しい部分もあって、そのネガな部分が少しだけ、僕が乗っているときに出てしまった感じかもしれません。

 今回優勝した60号車とはタイヤも同じダンロップなので、周囲から比較されることはよく分かっているつもりです。彼らとは基本は同じようなタイヤだと思うのですが、多少異なっているような話も聞いているので、そのあたりを今後どういう方向に進めていくのかも含め、次のレースに向けてはチーム一丸となって詰めていきたいと思っています。

 新型BRZの戦いはまだまだ始まったばかり。2位ではもちろん満足できませんし、自分の課題も解決して、必ずもっと強くなってみせます! 引き続き、応援してもらえたら嬉しいです。
■最初は「怖い人だと思ってた」山ちゃん。実際は感情的で、よく喋る
 さて、話題はガラリと変わりますが、今回からはレース内容以外にひとつテーマを設けて、お話しするスタイルでいこうと思います。まずは僕と山ちゃんの『出会い』と、山ちゃんの『素顔』について!

 お互いの存在を知ったのは、フォーミュラ・トヨタに出ていた2006年あたりでしょうか。同じ育成プログラムに所属していたこともあり、トレーニングなどを一緒にしていました。

 ただ、お互い若かったですし、ライバルでもあるし、『普通に会話はするけど、手の内は見せない』みたいなところはありました(笑)。あと、最初はいまみたいに柔らかい印象はなかったかも。正直、「ちょっと怖い人だな」くらいに思ってました(笑)。

 ちなみに学年でいうと僕がひとつ上ですが、レースキャリアとしては当時から山ちゃんの方が長かったので、年齢差を意識することはなかったです。

 その後はともに御殿場に住んでいた時期もあり、またそれぞれのキャリアで苦労を重ねていくなかで分かち合えるものも増えていって、次第に仲良くなっていきました。他のドライバー仲間と一緒にBBQに行くようになったりもしましたね。

 僕がGT300でBRZのレギュラードライバーになったのが2014年。ちょうどその頃、SUBARUがニュルブルクリンク24時間のドライバーを探していました。若くて速いドライバーはいないか、と。

 14年、山ちゃんはゲイナーのメルセデスでGT300に出ていたんですが、SUGOの予選で彼がPPを獲って、BRZは2番手だったんです。そのときの印象がSUBARUの中では結構強烈だったようで、彼に声をかけることになったみたいです。

 結果、2015年から山ちゃんとコンビを組むことになりました。年齢も近いし、若い頃から似たようにステップアップして、でもその後は苦労して……という部分は同じだったので、息は合うだろうなと思いました。

 山ちゃんと僕の性格の違いですか? レースも普段もそうですが、山ちゃんの方が真っ直ぐというか、すごいトンがって集中するタイプですかね。あと、山ちゃんの方が感情的だと思います。レース中の無線でも、結構アツくなっていたり……涙もろいのも山ちゃんの方かなぁ。

 血液型(※井口がA型、山内がO型)もあるのかもしれないですけど、僕の方が几帳面なタイプですかね。あ、でも、山ちゃんの方が、身の回りのものを整えたりとかっていう部分では几帳面かも(笑)。

 あと山ちゃんは、マシンに乗るまでのルーティンがめちゃくちゃあったりとか、そのあたり細かいんですよ! マネージャーさんも気を遣って、そこに向けていろいろ準備してくれているみたいです。僕はルーティンとかはなく、感じるままに動いているだけなんですけどね。

 普段、一緒にいるときは山ちゃんがずっと喋ってますよ。クルマで移動するときとか、8〜9割は山ちゃんが喋って、僕が「うん、うん」って聞き役になってる。彼は関西の人ですし(笑)、そのあたりは自然な役割分担なのかもしれませんね。

 いまに至るまで、ケンカも全然したことないんです。もう7年目になりますが、今後もこのコンビを長く続けていけるよう、頑張っていきたいなと思います!

 次のレースのあとは、また山ちゃんが登場しますので、どうぞお楽しみに! 山ちゃんは僕のこと、どう思ってるんだろう……。

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