「成田凌? 知らない」 映画「くれなずめ」松居監督と成田、出会った当初は“悪印象”だった?

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2021年05月13日 12:20  AERA dot.

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写真なりた・りょう(右)/1993年生まれ。俳優。主な出演作に「カツベン!」(2019年)、「窮鼠はチーズの夢を見る」(20年)、「まともじゃないのは君も一緒」(21年)/まつい・だいご/1985年生まれ。映画監督、劇団ゴジゲン主宰。監督作に「アズミ・ハルコは行方不明」(2016年)、「君が君で君だ」(18年)、「バイプレイヤーズ」(21年)
なりた・りょう(右)/1993年生まれ。俳優。主な出演作に「カツベン!」(2019年)、「窮鼠はチーズの夢を見る」(20年)、「まともじゃないのは君も一緒」(21年)/まつい・だいご/1985年生まれ。映画監督、劇団ゴジゲン主宰。監督作に「アズミ・ハルコは行方不明」(2016年)、「君が君で君だ」(18年)、「バイプレイヤーズ」(21年)
 俳優の成田凌と映画監督の松居大悟が初めてタッグを組んだ映画「くれなずめ」(全国順次公開中)。コメディータッチでありながら、若者たちの死生観を織り込んだ作品に、二人はどんな想いを込めたのか。AERA 2021年5月3日−5月10日合併号に掲載された対談記事を紹介する。

【成田凌と松居大悟がタッグを組んだ映画「くれなずめ」の写真はこちら】

*  *  *
―——友人の結婚披露宴で余興をするために集まった高校時代の仲間6人。だが、吉尾(成田凌)だけは違う時間を生きている。ふとした会話から、決して忘れることができない5年前の“あの日”が、それぞれの目線で描かれる。松居大悟監督が大学時代の友人との間に起こったできごとに着想を得てつくりあげた作品だ。

松居大悟(以下、松居):吉尾は、明日にはいなくなってしまう気がするような、はかなくて、でもいなくなると寂しくて会いたいと思わせる、ニュアンスがすごく難しい役だと思うんです。これまでお芝居を見てきて、日本の俳優でその雰囲気を出せる人は成田君しかいないと思い、お願いしました。

成田凌(以下、成田):ほぼ初対面の状態で、二人で飲みに行って。企画が動き出す前にもかかわらず、5、6時間ずっと話していましたね。

■どうしようもない6人

松居:どんな作品にしたいかと夢を語っていたよね。モデルになった人物は確かにいるのだけれど、僕は結局彼のことがよくわからないままだった。でも、成田君に演じてほしいと思ったわけだから。そこはもう、成田君が思ったように演じてもらうことで、「彼ってじつはこういう人物だった」と僕自身が教えてもらうような感覚でした。

成田:初めて脚本を読んだときから、「すごい面白いな」と思いました。男の子6人が集まって話すことって言葉にすると、こんなにどうしようもないんだって(笑)。もちろん、撮影中や作品を2、3回と観ていくなかでは、「これでいいのかな」と思うことはありました。でも、嬉しい気持ちで撮影現場に入って、完成した作品を観た後も嬉しい気持ちでいられた。それは理想的なんじゃないかな。現場では、アドリブのシーンはほとんどなくて、結構決め込んで撮っていましたけど。

松居:とくに最初の方は俳優たちの芝居のなかに、さりげなく長回しで登場人物たちに没入できるように撮っていたから、わりと決め込んで撮っていたけれど、段取りを感じさせず、楽しそうに演じてくれていたから救われました。

成田:男の子たちが楽しそうにしているシーンは実際に楽しく演じていました。でも吉尾にも色々な感情があるし、これは誰かの“記憶”の物語でもある。現場では楽しければ楽しいほど不安になることもありました。「楽しい」って自分たちが見えなくなるので、危険なんです。でも、松居さんは近くにいながらも、僕たちのことを一歩離れたところから見てくれていた。信用していましたし、「大丈夫だ」と思いながら演じていましたね。監督は7人目の仲間として現場にいてくれた。

■感情が一つにならない

―——コメディーやファンタジーの要素を盛り込みながらも、いまでは会うことのできない友人への優しい眼差しが作品を貫く。物語には、「暮れなずむ」を命令形にしたタイトルの「くれなずめ」同様、印象的な言葉がちりばめられている。

成田:「ヘラヘラしていろよ」というセリフがありますが、その言葉は作品を物語っている気がします。落ち込んでいる人に向かって「頑張ろうぜ!」とは言わない、というか。無理せず、そっと近くにいてあげるような感覚ですね。それから、劇中で使用されているウルフルズさんの「それが答えだ!」という言葉。改めていいなと思いました。「それが答えだ」と言っておいて、何が答えなのかは言わない(笑)。一つの言葉に収まってはいけない存在って、たくさんあると思うし、ふわっとしていたっていいじゃないか、という感じが好きだな、と。

松居:僕はこれまでも10代の若者たちを描いてきたけれど、感情が混じり合っている感じはあの年代特有のものだと思います。大人になればなるほど、例えば怒るときは怒りだけの状態になったりするけれど、感情が一つにならないのがいいな、と。

成田:僕は現場であの時間を生きることができて幸せだったな、と思います。ある程度長い時間を役として生きて、僕自身が「吉尾になれた」という感覚を得ることができたし、みんなが吉尾をつくってくれた。吉尾はどこか定まっていないところがあるけれど、僕自身も「僕ってなんだろう」と考えながら生きているところがある。取材などで「役づくりの方法は?」と聞かれると「なんて言ったらいいのかわからないな」と、言葉にできないときもあるんです。

松居:でも、それがいいのだと思うよ。演劇とかだと、計算しないと作品が成立しないこともあるから。

成田:感情のバランスや「このシーンでは何が一番大事なのか」ということは考えますけれどね。でも、撮影現場での僕の仕事は「つくり込まないこと」なのかな、なんて思ったりもします。

■わからないから面白い

——―二人は映画界のなかで着々とキャリアを築きあげてきた。互いの存在を意識し始めたのはいつ頃だったのか。そう尋ねると、“意外な出会い”を明かしてくれた。

成田:(松居が手掛けていた)クリープハイプのPVを観て存在を知ったんです。ボーカルの尾崎世界観さんに「クリープハイプのPVに出たい」と伝えてもらったのですが、松居さんからの返事は「成田凌? 知らない」だったんですよ(笑)。

松居:悪印象だね(笑)。僕は(成田が出演した「愛がなんだ」の監督である)今泉力哉のことをよく知っていることもあって、そこから成田君という存在を知って。「なんだ、この俳優は」と思うようになった。作品を観ても、何を考えているのかつかみづらい時があって、それが僕としてはワクワクするんです。スクリーンから目が離せない。「どういうお芝居のつくり方をしているのだろう」と思っていたのだけれど、今回一緒に作品をつくっても結局わからなかった。でも、わからないから、すごく面白い。

成田:もし、またご一緒させていただける機会があったら、シンプルな恋愛映画も面白そうですよね。

松居:あ、僕もちょっと思った。

成田:それから、松居さんのお得意な“変態男”の役とか!

松居:あはは。今日は久しぶりに会えたから、これからたくさん話をしたいと思います。

(ライター・古谷ゆう子)

※AERA 2021年5月3日−5月10日合併号

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