『ザ・ノンフィクション』茨城ディープ・ママたちに癒やされる「酒と涙と女たちの歌 〜塙山キャバレー物語〜 前編」

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2021年05月31日 20:41  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。5月30日の放送は「酒と涙と女たちの歌 〜塙 山キャバレー物語〜 前編」。

あらすじ

 茨城県北部、日立製作所の企業城下町でもある日立市。商業施設が並ぶ国道沿いに、昭和で時が止まったかのような、簡素な青いトタン張り平屋建てのスナック、居酒屋が並ぶ渋い一画「塙山(はなやま)キャバレー」がある。60年ほど前に誕生してから、現在は13軒が営業中だ。

 「ふじ」の美代子ママは塙山キャバレーの組合長も務めている。30歳で離婚し、店を切り盛りしながら、夫にとられた息子も取り戻したという。疲れた様子で来店した男性客にはハイボールに金粉をあしらって出していた。酒のつまみは会話だと思うと話し、店の様子も楽し気だ。

 「いづみ」には、蓉子ママを慕い酒が飲めないが来店し、コーヒーを飲む客もいる。蓉子ママは別の街でもスナックを繁盛させたやり手だったが、「ここのほうが好きだったんだね」と、40歳で儲けがあまり出ない塙山に移る。

 「めぐみ」は、唐揚げと刺身がお通しで出てくるリッチな店だ。恵子ママは、母親に17歳で芸者の置屋に売られ、死に物狂いで逃げ出し、27歳で塙山キャバレーに流れ着いたという。

 塙山キャバレー最高齢、「京子」を営む82歳の京子ママは穏やかな物腰で、ほかの塙山の店のママたちも、客として訪ねてくるなど慕われており「ママのママ」的存在だ。京子ママの息子の一人は、50代の若さで亡くなったという。息子の内縁の妻だった人とその友人が店を訪ねた際は、焼酎をグラスに注ぎカウンターに陰膳として添えていた。

 かつて塙山キャバレーに店を出していた人も客として訪れる。のぼるは、かつてラーメン店をキャバレー内に出していたが、店の漏電が原因で、5軒が全焼する火事を出してしまう。それにより、塙山キャバレーはかつてあった敷地中央の「島」部分がいまもぽっかりと空いた状態だ。

 のぼるは現在生活保護を受けており、塙山キャバレーで1杯のビールをゆっくりと飲むのを楽しみにしている。火事の負い目もあるのか引きこもり、自殺も考えたというが1杯のビールを糧に、「何もやってねえよりはやることがあったほうがまだいい やることがなかったら気が狂うべ」と近所の草むしりを続けている。

 かつては「その筋の人」がやってくるなど怖い思いをしながら、協力し合い、苦難を乗り越えてきた塙山のママたち。そんな塙山キャバレーにもコロナの影響が直撃する。2月、茨城県独自の緊急事態宣言により、店は午後8時閉店を余儀なくされる。塙山から感染者を出さない、という思いでママたちも、新規客を断るなど徹底した対策を取り、苦しい経営を強いられる。

 「ラブ」の美佐子ママは、さばけた雰囲気だが、自分のことをあまり語りたがらない。そんな美佐子ママのもとに、2020年の暮れに、ママの娘、夏海が訪ねてくる。美佐子ママはかつて農家に嫁ぎ、3人の子どもに恵まれたが、実家の借金を背負うことで義実家との関係が悪化、当時10歳の夏海ら子どもたちを置いて、家を出ていったという。夏海自身が母親になり、母に会いたい思いで探し当て20年ぶりの再会となった

 夏海の話によると、美佐子の舅姑はかなり厳しい人だったようだが、美佐子にも別の男の影があったようで、また美佐子ママの実家の借金も義理の家が結局返したなど、さまざまな事情があったようだ。親子の対面は、最初は和やかな様子だったものの、出ていった真相を知りたい娘、言いたがらない母との間で、徐々に雲行きは怪しくなっていく。

ママと客に流れる「いい酒」の雰囲気

 春という時期的な事情もあると思うが、最近の『ザ・ノンフィクション』は社会に出たての若者をテーマにした回が続いていた。しかし、やはり『ザ・ノンフィクション』は中高年の人間を見つめるときに本領を発揮する。改めてそう思うほどの「神回」だった。

 ママたちだけでなく、客もよかった。客たちの笑顔がとてもくつろいでいて「いい酒」であることが伝わってきた。仲間内で酒を飲み盛り上がり、ここがホームグラウンドだと上機嫌で話す客もいれば、イヤなことがあったのか、一人沈んだ顔でカウンタ―に座っていたものの、ママからハイボールに金粉をサービスされて、少し笑顔を取り戻した客もいた。

 わいわいやりたいときも、イヤなことがあって、このまま家に帰るのも……というときでも、人生のベテランのママたちが笑って受け入れてくれる。うちの近所に、なぜ塙山キャバレーがないのだろうと思った人は、私も含め多いと思う。

 人生を生き抜いてきた魅力的なママがたくさん出てきた回だったが、そもそもなぜスナックやクラブなどの女性店主は「ママ」と呼ばれるのか。webサイト「雑学トリビア王」によると、ホステスたちが上司である女性店主に対しママ、と呼んだのが客にも移っていった、とある。

 こういった飲食店の店主が男性の場合は「パパ」ではなく「マスター」か、寿司屋なら「大将」だろう。「ママ」という言葉には甘え、敬愛など、大人だからこそ恋しくなる要素がたくさん入っている。日立のホテルに連泊し、塙山キャバレーを思う存分はしごする、という夢ができた。

 次週は今週の続編。美佐子ママと夏海の20年ぶりの再会はどうなっていくのか。

 

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