「女流棋界のレジェンド」蛸島彰子が多くの人から慕われる理由

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2021年06月14日 18:00  AERA dot.

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写真たこじま・あきこ/1946年3月19日生まれ。75歳。女性初の奨励会員。女流棋士第1号。初代女流名人。2018年、現役引退。現在は日本女子プロ将棋協会(LPSA)特別相談役。愛称は「タコちゃん」(撮影/写真部・東川哲也)
たこじま・あきこ/1946年3月19日生まれ。75歳。女性初の奨励会員。女流棋士第1号。初代女流名人。2018年、現役引退。現在は日本女子プロ将棋協会(LPSA)特別相談役。愛称は「タコちゃん」(撮影/写真部・東川哲也)
 AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。渡辺明三冠(名人、棋王、王将)、森内俊之九段(十八世名人資格者)に続く3人目は、「初代女流名人」の蛸島彰子女流六段です。6月14日号に掲載したインタビューのテーマは「影響を受けた人」。

【1963年、蛸島彰子さんが所属した日出女子学園の将棋部はこちら】

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 2018年。「女流棋界のレジェンド」とたたえられ、数々の偉大な記録を残してきた蛸島が、静かに競技生活を終えた。現在は75歳。悠々自適な生活を送っている。

「友達から『まだ若く見えるわよ』って言われて、いい気分で帰り道、電車に乗ったら若い方から席を譲られて……。やっぱりいい年に見られるんですね(苦笑)」

 将棋界のプロ制度には主に二つの枠組みがある。一つは羽生善治九段(50)、渡辺明名人(37)、藤井聡太二冠(18)らが活躍する「棋士」の世界。もう一つは現在、里見香奈女流四冠(29)、西山朋佳女流三冠(25)らがトップを占める「女流棋士」の世界だ。蛸島は「棋士」を目指した女性のパイオニアであり、また「女流棋士」の第1号だ。オールドファンは若き日の蛸島が毎週日曜日、NHK杯で棋譜読み上げをしていた姿も思い出すだろう。

「年上の(男性棋士の)先生方から『タコちゃん、タコちゃん』って呼ばれていたのは、つい昨日のことのような気がします。気がついたらいつの間にか、将棋界では自分が最年長になっていました」

 蛸島は初代女流名人。後進からは仰ぎ見られるような「大先生」だ。しかし、本人は気さくで、威張るようなところは一つもない。そうした人柄もまた、多くの人から慕われた。現役生活を引退した現在も普及活動に携わり、アマチュアの指導を続けている。

「いまはコロナでちょっとお休み中ですけれど、将棋教室は45年ぐらい続けています。もう亡くなった方もおられますが、まだ3人ぐらいの方が続けておられます。お互いに『誰かがダメになるまでやろうね』って言って(笑)。教室に初めて来られる女性はほとんどが初心者です。駒の動かし方を知らない方も大歓迎です。お友達同士で指すようになったり、それから大会に出るようになったり。自然に輪が広がっていく感じです。将棋と長く付き合うことができる仲間ができます」

 蛸島は将棋を指す女性として、誰よりも長い道のりを歩んできた。しかし、自ら過去を振り返ることはあまりない。

「新しく気になることがあると、すぐ眠れなくなるようなタイプですけど、『あそこでひどい目に遭った』とか『素晴らしいことがあった』とか過去を回想することは少ないです。女子校のお友達同士で高校時代の話をして『ああ、そうだったね』というのはありますけどね。40代で子供が大きくなり、育児が一段落してから、九州や東北に1泊のバス旅行をしたりしています」

 東京・日出女子学園(現・目黒日大)高在学中に将棋部を作り、自らは指導者になった。おそらくは日本初の女子校将棋部だ。学校は楽しかった。しかし、棋士の養成機関である奨励会ではつらいことも多かった。

※AERA2021年6月14号より一部抜粋。蛸島彰子女流六段の2回目のテーマは「忘れられない失敗」。本日発行のAERA6月21日号に掲載しています。

(構成/ライター・松本博文)

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