「一発の速さは見せられたが、フランスまでの勢いが落ちた」次戦に向け戦略の見直しが必要に/ホンダ本橋CEインタビュー

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2021年07月08日 17:11  AUTOSPORT web

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2021年F1第9戦オーストリアGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
第9戦オーストリアGPでのアルファタウリ・ホンダは、ピエール・ガスリーが予選6番手、角田裕毅も自己ベストの7番手獲得と、高いレベルのパフォーマンスを発揮した。しかし決勝レースでは予想以上にペースが伸びず、ガスリーは9位、角田は2度のペナルティを科されたこともあって12位完走に終わった。

 予選ではトップ10内の速さを発揮しながら、なぜレースで失速してしまったのか。期待した結果が出せなかったことについてホンダF1の本橋正充チーフエンジニアは、「タイヤを含めた戦略的な部分の見直し」の必要性に言及した。

 次戦イギリスGPでは、史上初の『スプリント予選』が試験導入される。本来の予選が初日に行われ、2日目以降に100kmのスプリント予選と本レースが戦われる未知のフォーマットでは、パワーユニットへの負荷も通常レースより高くなる。「これまで以上にパフォーマンスと信頼性のバランスが重要」と、強調していた。

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──速さを発揮した予選から一転、レースは残念な結果になってしまいました。

本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):そうですね。先週の状況をさらに向上しようといろいろなことをトライしたのですが、クルマもいまひとつまとまらなかった。それでも予選までには何とかまとめて、そこそこのペースを出すことはできました。しかし決勝レースでは、特に(角田)裕毅の方のペースは上がらなかったです。あとは週末を通しての、タイヤを含めての戦略的なところですね。ここは次戦に向けて、見直しが必要かもしれません。

──初日フリー走行から積極的にミディアムタイヤを使って、早い段階からソフトタイヤをスタートタイヤに設定した印象です。

本橋CE:そうかもしれません。先週よりタイヤが1段階柔らかくなった。それもあって、そういう戦略だったのかもしれません。

──ウイリアムズがミディアムでQ3に進みました。結果論かもしれませんが、ミディアムでQ2を戦う選択肢はなかったのでしょうか。

本橋CE:そこも含めてですね。初日にどのタイヤを使うのかもそうですが、予選まで見越して事前の検討はもちろんしていたのですが、実際に走ってみたらそれとは違う結果だったという部分もあります。実際の結果からのフィードバックなど、もう少し柔軟性を持てるやり方が求められた気はします。

──FP2でふたりともソフトでかなり長いスティントを走って、そこである程度ソフトのロングランの感触を得たのだとは思います。しかしレースでは、予想以上に劣化が激しかった?

本橋CE:そうですね。予想よりデグラデーションが大きかった。ソフトもハードもですね。何が影響してるのかはわかりませんが、DRSトレインのなかでのタイヤのダメージもあったとは思います。そこは予想より大きかったかもしれません。

──気温、路面温度は初日と大きく変わらなかっただけに、そこが大きな変数だったのですか? それとも乱流のなかにいた時のタイヤの傷み方ですか。

本橋CE:ですね。それとご存知のように、予選前までペースが思わしくなかったので、少しセットアップを変えました。そのためにFP2である程度見えていたソフトでのロングランペースの優位性が、決勝レースでは見られなくなった、ということでしょうか。

──一方でフェラーリは、あえてQ3に進まない割り切った決断をしていました。あれは意外な決断でしたか?

本橋CE:2ストップ作戦が本当に1ストップより優位なのかとか、その辺は(事前に)天秤にかけていました。でもレース結果を見る限りは、フェラーリの作戦勝ちでしたね。

──モナコからアゼルバイジャン、フランスといい流れで来ていたのが、オーストリア2連戦は期待したほどの結果を出せませんでした。

本橋CE:そう思います。一発の速さは見せられたものの、レースまでを見据えると、フランスまでの勢いが落ちてしまった印象です。気持ちを入れ替えて、次戦シルバーストンまでに準備して、もちろんパワーユニット側もそこは同じです。

──パワーユニットはこの2連戦で、特に問題はなかったのでしょうか?

本橋CE:はい。気温も先週より下がっていましたし、そもそも先週にしても警戒するほど高いわけではなかったですが。そのなかで週末の状況に合わせたセッティングも、しっかり出せていました。気温の低かった今週末はさらに、パワーユニット的にはスムーズでした。

──メルセデスのトト・ウォルフ代表が囲み取材の際に、「今年のホンダのパワーユニットは、エネルギーマネージメントの分野での進化が著しい」と言っていました。そこは実際に、開発や使い方で注力していたところですか。

本橋CE:そうですね。以前もお話ししたように、今季のパワーユニットはエネルギー回生利用の性能も上がっています。それによってレース現場でのセッティング幅も広がっている。ない袖は振れないのはもちろんですが、そこはさくらとミルトンキーンズが(開発を)頑張ってくれたおかげで、現場運営としてもターゲットや状況に応じてパフォーマンスが調整できる、懐が広くなった感はありますね。

──次戦イギリスGPではスプリント予選も導入されますが、パワーユニット側の対応は?

本橋CE:準備はこれからですが、マイレージは(通常レースより)当然伸びる。そこは信頼性とパフォーマンスのバランスをとってやっていかないといけないですね。週末のセッティング出しも、フリー走行が2セッション取れませんから、事前のシミュレーションや過去の経験を活かしたセッティングの方向性をしっかり見直して、現地ではそれほど大きくいじらなくても済むように、最適化できるように準備する必要があると思っています。

──パワーユニットへの負荷は、単純に通常のフォーマットより大きいわけですね。

本橋CE:はい。チームによってプログラムは違うでしょうが、スプリント予選は100kmしっかり走らないといけない。その前に通常の予選もある。明らかにパワーユニットへの負荷は上がる方向です。

──初日午前にフリー走行で、午後に予選ということだと、その間にパワーユニットの載せ替えはない?

本橋CE:基本はないと思ってます。ただそこは、今後準備を進める上で、詳細を詰めていくことになっています。

──最後に角田選手ですが、この2連戦では予選一発は安定して出せていましたか?

本橋CE:そう思います。結果にも、そこはしっかり出ていましたね。過去には予選で痛い目にあってますが、そこはしっかり学習して、Q3までタイムを上げながらミスなく走ってくれるようになった。今後も安定して速さを見せてくれるんじゃないかと期待しています。

──それだけに2回のペナルティは残念でした。

本橋CE:本人も近かったかなと思いつつ、レース中ということもあって越えちゃったようですね。2回目はチームからのコールも直前で、それもあってバタバタしたのかもしれません。

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