「鬼滅」善逸役に恐怖? 植田圭輔「生身の人間がやるとすぐ疲れる」

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2021年07月27日 11:30  AERA dot.

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写真舞台「鬼滅の刃」其ノ弐 絆8月7〜31日、東京の天王洲 銀河劇場やTACHIKAWA STAGE GARDEN、大阪の梅田芸術劇場で上演。(撮影/木村哲夫)
舞台「鬼滅の刃」其ノ弐 絆8月7〜31日、東京の天王洲 銀河劇場やTACHIKAWA STAGE GARDEN、大阪の梅田芸術劇場で上演。(撮影/木村哲夫)
 大ヒット漫画「鬼滅の刃」は昨年舞台化され、今夏、新作が上演される。臆病ですぐに泣き叫ぶ人気キャラ「我妻善逸(あがつまぜんいつ)」を演じるのは、漫画やアニメが原作のいわゆる「2.5次元」の舞台で活躍してきた植田圭輔だ。役者として人々の注目を一身に浴びる植田は、善逸が抱える恐怖を「手に取るようにわかる」と話す──。

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*  *  *
──前作で善逸を演じた感想はいかがですか?

 こんなにのどを気にしなきゃいけない役ってレアですよ(笑)。原作で「゛ア〜〜(汚い高音)」って書かれている台詞なんかも再現しなくちゃいけない。

 僕は、素の笑い方が「ギャハハハ」って悪魔みたいなので、声を無理に作る必要はなかったんですけど、思ったままやると一日も持たない。だから、今日は右寄りの声帯を、今日は上側を……って使い分けて乗り切りました。

 善逸ってギャーギャー騒ぐ簡単な役に見えるけど、実はすごく難しい。早口でまくし立てても聞き取れないし、生身の人間がやるとすぐ疲れる。その中でも台詞を届かせられる技術力が問われるんです。原作を読んだ時からその難しさに気づいて、挑戦したいと思っていた役でした。

 鬼滅って、つらく悲しい状況で主人公の炭治郎が踏ん張るシーンが多いですよね。そんな中、善逸を見ているとクスッと笑ってしまう。「いてよかった」と思える存在になれるよう意識しました。

 善逸は耳がよくて、音で相手の性格や考えてることが聞き分けられます。それゆえの繊細さ、怖さって手に取るようにわかるので、そこは大切にしたい。人間って誰しも、誰かの悪意なんて触れたくないですから。

──国民的漫画の人気キャラを演じたわけですが、街中で「善逸の人だ」と気づかれたことは?

 劇場版を見に行った時、映画館に舞台のチラシが飾ってあったんです。それを見て「舞台の鬼滅だー!」ってお母さんと騒いでる子が目の前にいました。「俺やで」って思いながら聞いてましたけど(笑)。2.5次元って世界観やキャラクターのメイクを作りこむので、気づかれないほうが成功かなと思います。

──今年再び演じるにあたり、どのような思いがありますか?

 原作が完結して映画があれだけヒットした中で挑む舞台って、けっこう異例です。もはや日本中の誰もが知っている作品で、プレッシャーがないと言えば嘘になる。

 でも、前作では、役者も制作スタッフも試行錯誤して、全員、舞台でしかできない鬼滅の刃をやりきった実感があると思うんです。だから自分たちがやってきたことを信じるしかないなと。

──一般的な舞台と2.5次元の舞台は、演じる上でどんな違いがあるのでしょう?

 2.5次元は、とにかく制約とやるべきことが多いですね。お客さんの中には、イラストの美しい見た目やアニメの声のイメージがある。そこに寄り添いつつ、役者としての自分の良さも足していかなきゃいけない。

 演じるキャラクターをより深く理解できるよう研究し尽くします。でも、自分の考察とファンの方一人ひとりの考察が完全に一致することはない。そこは割り切っています。すべてのお客様に納得してもらう演技を目指すより、植田圭輔だからできる演技を追求したい。なので役作りの上で、他の人の意見や感想はあまりチェックしません。

──それでも、周囲の声や評価が気になってしまうことはないですか?

 僕、高望みの野望って昔からまるでないんですよ。有名になることや人気が出ることがそんなに大事?って思っちゃう。それよりも、楽しく本気で芝居に打ち込める場所があって、それを受け取ってくれる人がいることが僕の幸福論なんです。

 でも時々、単なる見た目のことなど芝居以外のことについて意見を言う人がいて、耳に入ります。やせすぎじゃないかとか、役のメイクが良くないとか。

 もしかしたら良かれと思って言っているのかもしれないですが、正直、取るに足らないことかなと。役者としては、やはり演技を見て評価してもらいたいです。

 昔は、伝わらない胸の内を抱えて苦しくなったこともありました。でも今は、自分にできることは妥協せず誠実に役に向き合うことしかないと思っています。純粋に演劇を楽しんでいる方や、僕の演技が好きで応援してくれる方の期待には、舞台の上でしか応えられないですから。

──14年の役者人生で、120を超える舞台に立たれてきたんですね。

 求められなくなったら終わりと思って、走り続けてきました。

 2.5次元のファンって、お芝居を見に行ったりイベントに通ったり、何かとお金がかかるんですよ。その対価に見合うものを提供し続けなきゃという責任感は常にあります。

 あとは、人間力を大切に役者をやってきたつもりです。「植田君がいるなら良い作品になる」って思ってもらえるよう、役者仲間や演出家など制作に携わるすべての皆さんとコミュニケーションをとって信頼関係を築くようにしてきました。

 石原さとみさんのお芝居や人柄がすごく好きなんですけど、石原さんも何かのインタビューで「30歳を超えたら、役者は人間力が大事」っておっしゃっていて。自分の感覚は間違ってなかったのかなって勇気づけられました。

 セルフケアも大事ですね。しんどくなった時は、マネジャーに「この一日だけは放っておいてほしい」と伝えます。休みの日はとにかく何もしない。仕事のことを一切考えない。スマホをいじらない。自分を保つためには、そういう日が必要です。

──見た目からは想像できませんが、現在31歳。今後のビジョンについてお聞かせください。

 自分の役のことだけ考えればいい年齢ではないし、作品全体を見て様々な視点で熟考しなきゃいけない立場になったと自覚しています。

 ファンの方からはいまだに「かわいい」って言われることが多いですね。年はとるのでいつまでもそうはいられないとは思いますけど……。

 役者としての自分にかわいさを求めてくださる人がいるなら、その期待に応えたい。一方で、かっこいい役を演じる自分が好きな人もいるし、素はサバサバしてかわいいとはかけ離れている僕が好きと言ってくれる人もいます。

 どんな植田圭輔を必要としてくださるのかは受け取り手に任せて、結局はありのままの自分でいるしかないんだろうなと思ってます。

(構成/本誌・大谷百合絵)

※週刊朝日  2021年7月30日号

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