ロード/ストリート戦に見る2021年のインディカータイヤ戦略のトレンド。最後は“黒”で勝負

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2021年07月27日 17:01  AUTOSPORT web

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インディカーで主にメインで使用される『ブラックタイヤ』
今季のインディカーの常設ロードコースとストリートコースでは、各車のタイヤストラテジーの違いがリザルト面で大きな違いを生んでいるケースがよく見られている。タイヤは2種類で、おおまかにハードとソフト。ソフトはグリップが高いぶん、耐久性は低い。ソフトはサイドウォールが赤くされ、『レッドタイヤ』と呼ばれる。メインで使われる硬めのほうは『ブラックタイヤ』。1回のレースウイークで1台あたりレッドは4セットが供給される。

 最近は実力の拮抗ぶりが凄まじく、予選では第1セグメント(Q1に相当)からレッド投入がマストになっている。ブラックだけで第1セグメントをクリアし、予選ファイナル(Q3に相当)用に新品レッドを1セット温存という作戦はほぼ使えなくなった。レッドの経験が浅いルーキーなどは第1セグメントの走り出しからレッドを装着、2セット目も投入し、第2セグメント(Q2に相当)進出を狙うこともある。

 もちろん、ハードとソフトの差は一定ではない。予選ではレッドが優位のケースがほぼ100%。だが、第1、第2セグメントで一度使ったレッドで争われる予選ファイナルでは、新品ブラックのほうが、グリップが高くなる場合もまれにある。今年の第9戦ロードアメリカでは、新品ブラックを履いたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)がレッドのグリップ不足に悩むライバル勢を尻目にポールポジションを獲った。

 決勝レースでも、レッドとブラックの差が大きくなるときと、そうでないときがある。開幕戦バーバーでは、決勝スタートタイヤにレッドを選び、第2、第3スティントはブラックというのがマジョリティだった。しかし、同じ常設ロードコースでも、第3戦インディアナポリス(IMS)ではレッドのパフォーマンスが高かった。

 勝者のリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)はブラックでスタートし、早めのピットインでフレッシュレッドに交換すると、ゴールまでの3スティントをレッドで走行。レッドを全部、レースで使って勝つケースは珍しい。彼の所属するエド・カーペンター・レーシングは、そのときにパフォーマンスが良くないと思われるほうのタイヤをスタートで履き、そのスティントを思い切って短くする作戦を採ることもよくあり、それが機能した。

 常設ロード3戦目のロードアメリカでは、トップ3全員が赤〜黒〜黒〜黒。優勝目前で失速したニューガーデンも同様だ。ロード4戦目のミド・オハイオでは赤〜黒〜黒が勝ちパターンとなっていた。チャンスを作り出すために、あえてライバル勢とは異なる作戦を採るチームも出てくる。

 ミド・オハイオでは、予選4番手のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が上位で唯一、ブラックでスタート。第2スティント以降の優位性アップを狙いにいった(が、接触から自分だけスピン)。レース終盤のベストタイヤはブラック。だが、後方スタート組がレッド2セット使用で浮上してきてもいた。

 パト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)は予選20番手から8位。佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)も同19番手から10位。路面にラバーが乗ってくることで、レース終盤にレッドの摩耗スピードが鈍る場合も出てくる。予選を第1セグメントで終えた面々はフレッシュレッドを2セット携えて決勝に臨める。これが有利に働くこともあるわけだ。

 次戦はストリートのナッシュビル。第2戦セントピーターズバーグ上位3人のタイヤ投入の順番を見ていくと、優勝のコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)は赤〜黒〜黒、2位のニューガーデンは黒〜黒〜赤、3位のシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は赤〜黒〜赤と三者三様。

 一方、ダブルヘッダーだったデトロイトでは、レッドでスタートし、そのスティントをなるべく短くしてブラックをメインに戦うというのがセオリーと化していた。しかし、レース2ではニューガーデンがブラック〜ブラックとして、最後にレッドを投入。ラバーの乗った路面でブラックに匹敵する耐久性の発揮を見込んだが、裏目に。ブラック装着のハータ、オワードに、ゴールを前に攻略された。

 今季3戦あったストリートでの内容を見ると、ナッシュビルで速そうなのはハータ、ニューガーデン、オワード、ヴィーケイ、パワー、ディクソンあたりか。琢磨は我慢のレースが続いているが、ストリートでの実績は充分。巻き返しに期待したい。

※この記事は本誌『auto sport』No.1557(2021年7月30日発売号)からの転載です。

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