◆ キャンプ初日に悔しい離脱
「順調というわけにはいかないんですけど、今は本当に野球ができる喜びを感じてやっています」。
ここまでをこのように振り返ったのは、ロッテの茶谷健太だ。支配下選手登録となった昨季、31試合に出場した茶谷は、今年2月の春季キャンプで移籍後初めて一軍スタートを切ったが、キャンプ初日の練習中に右足痛め、『右足ハムストリングスの肉離れ』により離脱となった。
「悔しい気持ちはあったんですけど、初日で怪我してしまったというのは、周りからみたら準備不足と判断されても仕方がないと思います。そのぶん取り返すというわけではないですけど、これから少しでも取り返せるように頑張っていきたいと思います」。
昨季一軍で経験し、今季に向けて「少ないチャンスでどう活かすかということだけを考えて、守備、走塁、打撃全て、1月もそうですし、シーズン終わってからすぐ取り組んできました」と、2月1日からアピールできるように準備を進めてきた。
そのなかでキャンプ初日に離脱。「(自主トレから)張りとかはあったんですけど、本当にいつも通り準備をしてきたので、仕方ないといったら仕方ないのかなと思います」。
◆ リハビリ期間中
2月1日に離脱となった茶谷は「下半身の怪我なので動けないことがあると思うので、体重をまず増やしすぎないように。いつも以上にキレを出すことを意識していました」とリハビリに励んだ。
シーズンが始まってからは、ホーム・ロッテ浦和球場で行われる二軍戦で「自分が試合に出ているつもりで見ていました」と、ボールボーイなどを行い、今できることをしっかりと取り組んだ。
試合に出場しているつもりでボールボーイをしていたと話すが、同年代の選手の活躍する姿が目に入ってくる。一軍でもポジションは違うが、同じ育成から支配下選手登録となった和田康士朗、内野手の安田尚憲が活躍。「気持ちの面では焦りはありましたけど、体の面では焦らないようにと思っていました」。
◆ 打撃フォームを変更
長いリハビリを経て、7月10日のDeNAとの二軍戦で実戦復帰。翌11日の試合では左の池谷蒼大からレフトへ二塁打を放った。
試合の映像を見ると、昨季に比べて打撃フォームが変わったように見える。茶谷は「バットを立てていたんですけど、外回りしてしまうことが多かった。内から出して叩けるようにじゃないですけど、そういう意識でやっています」と説明。
打撃フォームを変更した理由について「もともと変えたいなと思っていたんですけど、なかなかシーズン中にガラッと変えるのは、勇気がなかった。怪我している時期もあったので、そのなかで少しずつ変えてみました」と明かす。
打席の中での手応えについては、「実戦からずっと離れていて、まだ5打席しか立っていないので、まだなんとも言えないというのが正直なところですね」とのことだ。
◆ 熾烈な競争に勝つために
ロッテの内野陣は一軍だけでなく、ファームも平沢大河、福田光輝、西巻賢二、松田進など試合に出場するための競争が熾烈。茶谷は復帰後、スタメン出場がなく、出場した6試合は全て途中出場だ。
「試合に出たときには、しっかり少ないチャンスでも、モノにできるように頑張っていきたいと思います」。
振り返れば、育成選手として入団した2019年も、春季教育リーグや二軍の練習試合では途中出場だったが、そこでアピールし、同年の二軍の開幕戦からスタメンで起用され、結果を残してシーズン終了後の12月に支配下選手登録を掴み取った。
当時二軍監督を務め、現在は一軍のヘッドコーチを務める今岡コーチに対し、茶谷は取材で感謝の言葉を述べることが多い。「一軍の舞台で結果を出して、恩返しになるかはわからないですけど、そういうふうには思っています」と、今もその想いは変わらない。今岡ヘッドコーチに恩返しするためにも、1日も早く一軍の舞台に上がりたい。そのためには、二軍で結果を残していくしかない。遅れたぶんを取り戻すのは簡単なことではないが、今できること、与えられた出場機会で、ひとつひとつアピールしていけば、一軍のチャンスは訪れるはずだ。
取材・文=岩下雄太