鬼神の走りでチームのミスを救ったピエール・グイディ「大雨ですべてを失ったと思った」/スパ24時間

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2021年08月02日 13:01  AUTOSPORT web

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雨中のスパで鬼神の走りをみせ、一度は失ったスパ24時間優勝のチャンスを一撃で取り戻したアレッサンドロ・ピエール・グイディ(アイアン・リンクス)
アイアン・リンクスによる2021年トタルエナジーズ・スパ24時間レースの優勝、この勝利の立役者のひとりとなったアレッサンドロ・ピエール・グイディは、決勝レース残り30分の段階でライバルに遅れをとったとき「すべてが失われた」と感じたと語った。

 レース中盤から10時間以上にわたってレースをリードしてきたアイアン・リンクスの51号車フェラーリ488 GT3 Evoは、レース時間残り1時間を切ったタイミングで最後のピット作業を行ったあと、約5秒後方を走っていたライバルの32号車アウディR8 LMS(アウディスポーツ・チームWRT)が、雨が降り始める直前にレインタイヤ装着してコースに復帰したため、そのリードを失った。

 ベルギー人のドリス・ファントール駆るアウディが完璧なタイミングでタイヤをスイッチしたのに対し、アウディよりも先にピットに入りドライ路面用のスリックタイヤでコースに出たフェラーリは32号車のアウトラップ中に大雨が降り始めたにもかかわらず、さらに1周トラックに留まった。

 この判断によって両者のポジションは入れ替わり、フェラーリは2番手に後退する。この間、豪雨に見舞われたコース上では複数箇所でアクシデントが発生したためフルコースイエローが出され、レースは残り27分から再開されることとなった。

「僕たちは(レース中盤から)ほとんどの時間レースをリードしていたが、最後の30分ですべてが失われたように思えた」と語るのは、当時51号車フェラーリのステアリングを握っていたピエール・グイディ。

「リスタート後、僕はすべてを捧げた。選択の余地はなかったよ。懸命に追い上げ可能性が見えた、たった一瞬のタイミングでふたたびリードを奪ったんだ。フェラーリとアイアン・リンクスにとって素晴らしい結果を達成することができた。このようなリザルトを得ることができたのは努力を重ねてきた彼らのおかげだ」

「本当に信じられないような気持ちだよ! 僕たちが達成したことを理解するにはもう少し時間がかかると思う」

 喜びを語ったイタリア人ドライバーはリスタート後、32号車アウディとの間に挟まった3台のバックマーカーを次々に交わしていくとさらにその差を詰め、残り10分を切ったところで高速左コーナーのブランシモンでアウト側からファントール駆るアウディを攻略。そのままトップでチェッカーをくぐりフェラーリに2004年以来、17年ぶりとなるスパ24時間での勝利と、GT3時代の同イベントで初めて非ドイツメーカーによる総合優勝をもたらした。

■ドライバーの本能が一瞬のチャンスを後押し

「正直なところ、もっとも難しいターンだったかもしれないが、ドリス(・ファントール)がターン14“スタベロ”で小さなミスを犯したため、出口でのスピードが彼よりも速くなった」と説明したピエール・グイディ。

「僕はそこでサイド・バイ・サイドに持ち込んだ。高速コーナーで後ろにつくと前が見えなくなり近くにいるのが難しくなる。雨の中ではほとんど何も見えない状況だ」

「理由は分からない。だがあの時、自分の気持ちが『行かなければならない』と言っていたんだ」

 この劇的な展開の末、51号車フェラーリをシェアしたコム・レドガーとフェラーリ・ワークスドライバーであるニクラス・ニールセン、そしてピエール・グイディの3人はスパ24時間で初勝利を飾っている。

「この素晴らしいレースに勝つために何度も挑戦してきた。総合2位を2回経験し、プロ・アマカップでは2回優勝した。しかし今回の総合優勝はそのときと同じ気持ちではない」と語ったピエール・グイディ。

「僕は24時間の終わりに、全員の前にいたかったんだ」

■フェラーリ陣営の予想よりも早く降り始めたスパの雨

 フェラーリ・コンペティツィオーニGTのテクニカルディレクターを務めるフェルディナンド・カニーゾは、予想よりも早く雨が降ってきたため、ピエール・グイディがスリックタイヤでフルウエットのトラックを1周することになったと述べた。

「雨が降り始めた直後はコースがどれほど濡れているのか正確には分からなかった」とカニーゾはSportscar365に語った。

「もし、すぐにピットインさせていれば……(順位を守れたかもしれない)。ファントールのアウディはとても良いアウトラップをとっていたので、我々はミスを犯したと思っている」

「フルコースイエローを見たとき、その後のセーフティカーランを期待していたが、幸いなことにリーダーとの間に数台のクルマしかなく悪いポジションではなかった」

 カニーゾは「突然の雨で10台ものクルマがスピンしていたので、もっと早くフルコースイエローが出ることを期待していた」と付け加えた。
 
「もしもそうなっていれば、私たちはクルマをピットに戻してレインタイヤを与えてコースに送り出し、彼らの前に出る時間があったはずだ」

「(2番手となって迎えたレース再開後は)アレッサンドロの能力を知っていたので、再逆転が可能であると信じていた。そして、その期待どおり彼はとても素晴らしい仕事をしてくれた」

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